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『私鉄3.0 - 沿線人気NO.1・東急電鉄の戦略的ブランディング』(東浦亮典)を読んで

日本が誇る偉大なイノベーター、小林一三。鹿島茂氏の評伝『小林一三 日本が生んだ偉大なる経営イノベーター』にはざっくりこうあった。

渋沢栄一が欧州の視察を経て田園都市構想を打ち立てた。だけどノウハウがない。そこで阪急で実績のある小林一三に白羽の矢を立てた。が、地理的な要因等々の問題があるなか小林一三は断り、代わりに五島慶太を推した。

まさにそのことが本書で語られていました。ちなみに五島親子の手腕によって東急の屋台骨が完成されたと。創業者とはちがうのだけど重要な位置づけ。

カリスマ的な存在だった五島昇が亡き後、東急は停滞の時期を迎えたと著者は語ります。ちなみに著者は、東急の現役役員です。

小林一三モデルは、やっぱりつよい。

あらためて小林一三がつくりあげた沿線密着ビジネスはテッパンそのもの。阪急以外の私鉄は小林一三モデルを踏襲することで大きくなっていった。東急もその一つ。なにより、当時は「人口ボーナス」という前提がありました。

着実に成長を続ける東急ですが、沿線を開発しきったらどうするか?という問いも生まれます。たとえば宅地を売り切ったら撤退するような方法もなくはない。

東急は長いスパンでその土地とともに成長し、ブランドをつくりあげてきました。その意識があるので長期的視座で経営資源を再投資していく戦略をとっています。

小林一三モデルがやはりベースになりますが、沿線密着ビジネスを私鉄1.0とするならば、再生産・再投資・再開発のベクトルが2.0。さらにICT技術(よしあしは置いておいて、メトポとかありますね)を組み合わせることで私鉄3.0を目指すのだと。

人口ボーナスは終わった。

とはいえ前述した「人口ボーナス」はなくなります。これから人口は減っていく日本。超高齢化社会&人口減少社会の到来。そのなかで東急はどのようにまちづくりをしていくか。

著者によれば、これからの郊外は4つの軸で評価して「自立する郊外」と「衰退する郊外」とに分かれるといいます。著者の提唱する軸が興味深いので、こちらを紹介をして終えます。

「多世代ー高齢化」軸
「多機能ー単機能」軸
「再投資ー放置」軸
「生産ー消費」軸

かんたんにいうと、そのまちが「多世代」「多機能」「再投資」「生産」側に振れているならば、おそらくその地域は自立してやっていける街。電鉄と関わらずとも、たしかにヒントはありそう。

いずれにしても電鉄が日本のまちづくりにおいて欠かせない存在になっていることはまちがいなし。それにしても渋谷、つよいなあ。

というわけで以上です!


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