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<LAC×実証実験>地域社会の持続可能性を実現する、新産業の出発点

場所やライフライン、仕事など、あらゆる制約にしばられることなく、好きな場所でやりたいことをしながら暮らす生き方をともに実践することを目的としたコミュニティ「LivingAnywhere Commons(以下LAC)」は、個人利用はもちろん、法人・団体での利用もできます。

今回は、LACを実証実験の場として活用し、社会インフラ領域のイノベーション推進と新産業創出を目指す、U3イノベーションズ合同会社の川島壮史さんにお話を伺いました。

川島 壮史(かわしま たけし)
東京大学大学院理学系研究科修了後、アクセンチュア株式会社に入社し、エネルギー業界を中心に新規事業戦略の策定や業務改革支援などのコンサルティングに従事。2014年より国内総合電機メーカーに移籍し、太陽光や蓄電池などを軸としたエネルギー関連の新規事業開発に従事。事業の立ち上げを見届けた後に、テック系スタートアップに移籍し、COOとして事業戦略の策定から経営管理までの幅広い業務を担う。
2020年2月より現職。LAC八ヶ岳北杜内の実証実験施設「オフグリッド・リビングラボ八ヶ岳」の企画・運営を担うプロジェクトリーダー。

エネルギー産業を基軸に新たな社会システムを構築する、U3イノベーションズの挑戦

U3イノベーションズ合同会社は、エネルギー産業のゲームチェンジャーのような存在です。エネルギー産業と他の産業の掛け算により、新たな社会システムの構築に取り組んでいます。

川島さん
「私たちは主にエネルギー産業が直面する社会課題解決のための事業開発に取り組んでいますが、今回のプロジェクトでは特に「人口減少」という課題に目を向けています。例えば、いわゆる”ポツンと一軒家”のような場所に対して、水道を伸ばし電線をつなぐのは大変ですし、そもそも赤字で投資が回収できません。過疎地では、採算性の観点からガソリンスタンドも撤退しています。このように、人口が減少していく社会においては、大規模投資・大規模生産・大規模消費を前提とした今まで通りのやり方だと、インフラを維持できなくなってしまいます。」

状況を打開するカギを握るのは「自律分散型の社会インフラ」、つまり、必要な場所で必要なだけライフラインを作り出す仕組みです。U3イノベーションズとLACは、それを実現するための生活実験施設として「オフグリッド・リビングラボ八ヶ岳」をLAC八ヶ岳北杜の敷地内に開所し、実証実験を行っています。

川島さん
「オフグリッド・リビングラボ八ヶ岳は、5棟のインスタントハウスで構成され、電気・水道など既存のインフラからは切り離された完全オフグリッド環境を実現しています。建物内にはベッドやデスクなどの居住空間はもちろん、キッチンやシャワー、洗濯機、洗面台、トイレといった水回り設備もあります。5棟のうち1棟はインフラ棟として利用しており、蓄電池などの電源設備と水処理設備および給湯設備を設置しています。」

キッチンなどの水回り設備も装備。電力は建物に隣接するソーラーカーポートで発電し利用。
建物内で利用された生活排水は、インフラ棟の水処理設備で浄化され、建物内で循環利用する。

実践のフィールドとしてのLAC

川島さん
「自律分散型インフラにより実現される社会を考えるためにいろいろ調べている中で、はじめてLivingAnywhere、そしてLACの存在を知りました。LivingAnywhereの構想は「住まい」起点で始まったものですが、自分らしい生き方を実現するための手段に「オフグリッド」を挙げていて、目指す社会の姿が似ているなと感じました。」

その後、縁あってU3イノベーションズ代表の竹内氏と株式会社LIFULLの代表である井上が出会い、3月にはLAC事業責任者の小池も含めた意見交換の場を設けることになりました。

川島さん
「そこからはトントンと物事が進みましたね。私たちはインフラ屋として地方の課題を解決したい。想いを伝えたところ、井上さんが「良い場所がある!」と提案してくれたのが、LAC八ヶ岳北杜でした。もちろんその後何度も打合せをすることにはなるのですが、LAC八ヶ岳北杜のフィールドで完全オフグリッドの住環境の実現に向けた生活実証を行うことは、ほぼその場で決まりました。」

そこから約半年のプランニング期間と約3か月間の建設期間を経て、「オフグリッド・リビングラボ八ヶ岳」をスピード開所。現在は、川島さん自らがオフグリッド環境で寝泊まりしながら、日常的なトラブルへの対応や、実践を通じて見えてきた課題への対処など、試行錯誤を繰り返しています。

川島さん
「私たちの会社には「実践者であること ーBe a Practitioner」という行動原理があるのですが、実物を作り、実践してみることは非常に重要だと考えています。新しい社会システムを構想、提唱するだけではなく、自らが実践し事業に落とし込んでいく主体者でありたいと考えています。実践してみてわかることも多いので、毎日が実験です。」

インフラ業界だけでなく社会全体を変える

他の実証実験候補地をほとんど検討することなく、LAC八ヶ岳北杜を実験フィールドに選択した川島さん。実際にLACと協業してみて感じたことを伺いました。

川島さん
LACとコラボしてよかったことは、常に他産業の視点を取り入れられていることです。インフラ屋の自分たちだけで進めていたら技術実証がメインになっていたと思いますが、LACとコラボすることで、生活実証へと目的が広がりました。技術的に実現可能な状態にするだけではなく、ライフスタイルとして社会に受け入れられる必要性に気づかせてくれたのは、元々「暮らし」や「住まい」の文脈に強いLACの皆さんです。LACと一緒じゃなかったら、実験施設ももっと無機質なモノで、今みたいなオシャレで楽しい空間にはなっていなかったと思います。」

約20平米のインスタントハウス1棟を利用したコミュニケーション空間

一方、協業の難しさについて伺うと、約半年間にわたるプランニング期間の苦労話を伺うことができました。

川島さん
「もともと私たちは「過疎地でも住み続ける(定住する)ことができるようにするために、新しいインフラを構築すること」をゴールに置いていましたが、LivingAnywhereの場合は、「自分らしい生き方を実践するために、場所やインフラの制約から人々を解放すること」を目指しているので、「そもそも人は定住しなくてもいいんじゃない?」という発想に至ります。こういった、近いけど少し異なる「実現したい世界観」を1つ1つ言語化して擦り合わせていくのは大変でした。」

川島さん
「一方でその議論はとてもエキサイティングで、また気づきも多かったですよ。例えばLAC八ヶ岳北杜の拠点運営を担っている渡鳥ジョニーさんは、以前はバンライフ中心の生活をしていました。車という自分の生活環境をどこにでも持ち運べる暮らしです。オフグリッド・リビングラボ八ヶ岳の建物に利用しているインスタントハウスも「持ち運び可能」という特徴を持っています。将来的に自律分散型インフラをバンに乗せて、今の家と同じような居住環境を備えることができれば、ある時は八ヶ岳にいながら普段通り生活をしていると、次にドアを開けると東京の中心に移動している、みたいなこともできるようになるかもしれません。このように、人のライフスタイルは自由で、柔軟で多様なものに変化していくということに気づくことができました。今は、インフラだけがまず変革するのではなく、社会全体が変わっていった結果インフラが変わるという方が必然だと考えるようになりました。」

”生活空間ごと持ち運ぶ” バンライフの様子

LACがハブとなり、個人・法人・行政との共創を生む

LACは「コモンズ」を名乗っている通り、コミュニティとしての特徴があります。ただの実験場を借りることとは大きく異なる魅力があると、川島さんは語ります。

川島さん
「先日はモバイルハウスをつくるスタートアップを経営している方がLAC八ヶ岳北杜に宿泊していました。意図せず盛り上がり、今後一緒にビジネスができる可能性を感じました。たとえビジネスに繋がらなくても、LACを通じて出会った方々に、自分たちの描く未来に興味を持ってもらえるとモチベートされます。LACには、普段の生活では出会えない一風変わった方々が世代問わず集まってきます。いろんな価値観や気づきを貰えて、それらが実現できる新しいライフスタイルを提案していきたいなと思いますね。」

LACには多様なバックグラウンドの人々が集まり、
日々偶発的な出会いとコミュニケーションが生みだされている

またLACでは、LACの個人メンバーや法人メンバーだけでなく、日本各地の行政関係者とも連携を図っています。行政主体の場に参加したり、行政を巻き込むことで、新たなチャンスに繋がることもあります。

「これもたまたまなのですが、LACの方から山梨県でスタートアップ支援をされているご担当を紹介いただけたんです。その方との会話の中で、県として力を入れているサポート事業があるのでぜひ応募してはどうか、とご提案いただきまして。せっかく山梨県内で実証実験をするのであれば、と応募した結果、2022年3月に「第2期TRY! YAMANASHI! 実証実験サポート事業」に採択いただくことができました。山梨県からは、実証実験のサポートはもちろん、今後山梨発の事業創出を目指すにあっても全面的に支援する、と言っていただいており、非常に心強く感じています。LACからの紹介がなければ山梨県とのつながりも持てなかったと思いますので、コミュニティとしてのLACには本当に助けられていますね。」

ライフスタイルのショールームを目指して

最後に、LAC八ヶ岳北杜での実証実験における今後の展望を伺いました。

川島さん
「まず目指したいのは、ライフスタイルの「ショールーム」のような場です。インフラより上位概念の「住まい」や「暮らし」、さらには人生観そのものを見せられる場にしていけると良いですね。特に大事にしたいのは、見るだけではなく、生活を体験できる場にするということ。体験を通じて、新しいライフスタイルの実践者を増やしていきたいです。」

川島さん
「LACは、ただの実証実験場にするのはもったいないと思います。コモンズとうたっているように、もっとユーザー主導型で、みんなで一緒に集客し拠点を創り上げていけるといいと感じています。ですので、私たちも単に土地を利用させてもらうだけではなく、LAC拠点にもっとギブ出来ることは無いだろうかと考えています。」

事業などの実証実験の場を探している法人・個人の方、特にインタラクティブな関係性で場を創り上げることに興味のある方には、LACの活用はとてもオススメです。是非LACと共創しましょう!

お問合せ先

オフグリッド・リビングラボ八ヶ岳について

U3イノベーションズ合同会社(担当:川島)
Web:https://u3i.jp/contact/ メール:takeshi.kawashima@u3i.jp

LACについて

LAC公式サイト
法人のみなさまへ
お問い合わせフォーム(法人様/団体様向け)

《取材ライター:中村美咲》

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