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日刊スポーツ報道によるJFAの浦和レッズへの処分検討に関して思うこと。

8月2日名古屋市港サッカー場にて行われた、JFA第103回天皇杯4回戦浦和レッズ対名古屋グランパス戦の試合終了後、一部の浦和レッズサポーターが暴徒化したことに対して、大会主催者であるJFAによる処分検討とその内容に関する記事が日刊スポーツ新聞社の報道によってなされた。

処分内容として検討されているものとして、報道では大きく2つの項目が上げられていた、ひとつは「今回の暴動に参加した浦和サポーターの永久追放」もうひとつは「天皇杯大会への参加権のはく奪」である。

それに関して「まだまだ処分が甘い」「リーグ戦での勝ち点はく奪、降格、除名処分にすればいい」などという声もネット上では上がり、逆に「JFAやJリーグによる私怨的制裁」「浦和だから標的にされる」という声も上がり、中には「試合主催者である愛知県協会の責任はないのか」「全ての責任は協会にあるべきだ」という過激な声も上がっていた。

さて、処分として検討されている内容は適切なのであろうか?
このことについて私自身の意見を述べたいと思う。

当該サポーターへの永久追放、これは為されるべき当然の処分であると考える。

Jリーグは暴力や差別を排除した安心安全なスタジアムづくりを提唱し続けている。しかしながら今回の試合はJリーグが管理運営する試合ではない。
とはいえ、試合に参加しているチームはJリーグに所属しているチームであり、試合も有料試合として興行となっている。この点を考えると、Jリーグにも持ち込んではいけないし、レッズレディースや近隣のアヴェントゥーラ川口などにも招かれざる客なのは火を見るよりも明らかなので、永久追放であっても妥当であると思うし、それで浦和レッズの応援の魅力が失われるというのならば、クラブやサポーター団体の怠慢だと考える。

天皇杯大会への参加権はく奪について、今回の件の社会的影響を考えると、致し方ないと考える。

今年の国内サッカーにおいてスポーツニュースではなく社会ニュースとして大きく取り上げられた事件、事故は「アスルクラロ沼津ホーム戦での手摺崩落事故」「港サッカー場における試合終了後のサポーターの暴徒化」の二つくらいであろうかと思う。天皇杯3回戦味の素スタジアムでの花火使用や周辺看板への蛮行は、それほど大きくニュースとして扱われていない。
普段からサッカーのニュースを集めているサッカーファンにとって、サポーターの問題行動はある種慣れてしまっている部分もあり、また、それに至る要因などを鑑みた際に、より中立的で平等な処分を考えるべきと思う方も多いと思う。しかしながら、ある程度の強い処分を下さないと、サッカーに理解の少ない層に対して、サッカーは暴徒に甘いなどと印象を持たれないためにも、何か示しを付けるべきとなった場合に、JFAとして一番印象が強く且つ自分たちの管轄ゆえに手を下しやすいのが天皇杯への参加権はく奪なのではないかと考える。要は見せしめではあるのだが、それくらい行わなければ信用回復へのスタートラインに立てないと考えるのであれば、致し方ないとしか言いようが無いと思う。私自身は過剰であるとも言いたい部分はもちろんあるが。

浦和だけ様々な事案で不当な処分を受けているのだろうか

これに関しては、私はJリーグでの裁定含めて、そのような部分は否めないと考える。
例えばサポーターによる問題行動ひとつとっても、他のチームであれば厳重注意などの書面上の処分で済むものが、制裁金などの重い処分が下されることは、一度ではなく見ている。この部分だけ考えた場合に、浦和レッズが不当な処分を受けていると言える部分は大きいと思う。
しかしながら、これは浦和レッズに責任があることではないものの、クラブの弱みとして、浦和レッズに関する社会的にネガティブな事案は、よりメディアによって報道されやすい、という点があるのではないかと思う。この点に関しては、先ほど述べた内容と似ている部分である。
社会的にネガティブなニュースを見かけた際、加害側となる個人や団体に対して、相応の処罰感情が生まれるのは多くの人が味わったことがあるのではないだろうか。例えば池袋でのあの凄惨な事故で、警察や検察の対応に憤ったことはないだろうか。それと同様に、大きくネガティブな印象を持つサッカーファンではない人に対して、悪い奴が甘い処分で有耶無耶になったと聞いたら、日本のサッカー自体への印象はより悪くなるであろう。そのような印象を持たれないための、いわば見せしめがあってもおかしくないのではと私は思っている。
故に、本質的に各メディアに対して、浦和レッズという存在、浦和サポーターという存在が、今までの悪印象を払拭するようなことがない限り、同じことは今後も繰り返されると考える。たとえ不当であっても。

相手方の名古屋グランパスやそのサポーター、主催者である愛知県サッカー協会に責任はないのか

まず、名古屋グランパスとそのサポーターに関してであるが、発端となったことが名古屋サポーターの言動であることが明らかであるならば、当然であるが判明している当事者に関して、入場禁止などの処分を下すべきであるし、名古屋グランパスに対しても、私はそれなりに書面での厳重注意や常識的な額での制裁金は必要なのではないかと思う。しかしながら、世間的な印象として浦和レッズが一方的な加害者であることを考えると、過剰な制裁はあまりできないのではないかとも見ている。

次に、大きく浦和サポーターが問題視している主催者である愛知県サッカー協会の責任についてである。
まず、このような事案が容易に起こる港サッカー場を開催地として選定したこと、これに関しては、殆ど責任は無いと考えたい。
愛知県、特に都市部である名古屋近郊にて、それなりの収容人数があり、且つ協会として運営委託できるイベント運営企業を新規で選定することは非常に困難である。更には、都市部の大きな興行を行える施設は、直前に日程を抑えることが困難だったりする。その点を考えた際に、協会として開催実績がある上で、日程が確保できた会場が港サッカー場であったということだと考えた場合、会場選定での責を問うのはあまりに酷ではなかろうか。
では、当日の運営に責任は無いのだろうか。
確かに、暴動となる要因を防ぐための施設的対策や、警備などの見込みは浅かったとは言わざるを得ないし、そこに関して厳重に協会、グランパスを主とした両クラブ、そして設営運営委託先で検討すべきであった事項ではある。
しかしながら、当日の両サポーターの中で、加害する意図を持ち行動するものがいなければ問題なかった話である。
このことを考えると、暴徒対策の不備を過剰に追求するのは筋違いな話だろう。
それでは、起きてしまった事案に関して、愛知県サッカー協会に全く責務はなく、制裁が下されないべきなのだろうか。
これに関しては、興行としての主催者は愛知県協会である。その点について考えた場合、外部委託の形でもいいが、今回の件に関する当日入場した観客向けの、物的や身体的な被害、また当日起こったことや現地で見かけたことに関する精神的な被害に関しての弁済は一定範囲で為されるべきと考える。
故に、問い合わせの窓口を設置して、物的や身体的な被害に関して警察や弁護士の紹介、また身体的や精神的な被害に関しては、可能な範囲で医療機関やカウンセラーなどの紹介、そしてその費用に関する弁済は必要なのでは無いかと考える。
また、その要因が両サポーターにある点を考えると、その費用の一定割合を両クラブが負担することは必要と考える上、JFA、愛知県サッカー協会、Jリーグ、そして両クラブとして、その窓口の広報はしなければならないだろう。それがある種の両クラブへの制裁金ともなりうる部分でもあるだろう。しかしながら、それによって法的訴訟を免除されることはなく、法的賠償が生じた場合、結審した結果はグランパス、レッズ、協会などが責任を持つべきであることは当たり前のことであるが。
そして最終的には、安心安全なスタジアムを作るために、そのデータをJFAとして管理して、Jリーグとも共有すべきであると考える。

最後に、私の願いとして、JFAやJリーグの方々に訴えたいことがある。安心安全なスタジアムを謳うのであれば、何か事件があった際のケアに対しても、しっかりと責任を負うべきであるし、スタジアムでサッカーやそのベースにある文化とは関係ない部分で、傷つく人をできるだけ減らすことや、そのようなことがあり得ることを考えて、常にいて欲しい。
日本代表戦の熱狂を考えると、スポーツカルチャーとしてマジョリティのように見える
しかし、恐らくJリーグなどの国内サッカーを楽しむ方は、どちらかといえばマイノリティになると思う。
しっかりと多くの人にサッカーを楽しむことを理解してもらって、スタジアムに足を運んで貰うことを考えた際に、障壁が生まれることは避けておいて欲しい。


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