視線を交わすこと
効率化、コスパということばが人口に膾炙して久しい。さまざまな娯楽が有限の時間を掠めとり、多方面への配慮が多忙さに拍車をかける時代に生きて、効率化はひとつの防衛である。プライベートの防衛。
コミュニケーションの効率化もずいぶん進められたが、結局リモートで視線は合わない。カメラを見れば相手の顔を見れず、相手の顔を見れば相手に視線は届かない。
視線を交わすことがどんなに貴重か、直接会えることがどんなに愛おしいできごとだったか、禁じても禁じても人びとが従わないことを見ても明らかで、視線を交わし、相手の声を直接聞き、仕草に心を動かされる、そのことが人間そのものだった。
直接会わないと話せないこともあるということ、相対していなければ切り替わらないモードを、僕たちはもうずっと溜め込んでいる。その愛おしいことを1日でも早く手繰り寄せるために、今改めて耐える。
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