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新卒入社する会社を間違えた私が、デザイナーを名乗るまで #羅針盤のつくりかた

「絵を描くのは好きだけど、自分がデザイナーとしてお金をもらうなんて想像できない」
そう思い込み一般企業でOLとなった彼女は、その夢を捨てきれず26歳でデザイナーになりました。

ラブソルのデザイン事業部長を務める小野寺美穂。営業からデザイナーとなった現在まで、彼女の経験談とともに抱えてきた想いについて聞きました。

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小野寺美穂(おのでら・みほ)
デザイナー
会社員時代にオンラインサロンを舞台にデザインを学び始め、そこでラブソル代表である柴山、池田と出会う。チャンスがあれば逃さず手を動かし続け、個人的にデザイナーとしての仕事を受けられるようになったことをきっかけに、フリーランスのデザイナーへ。現在は正社員として、デザイン事業部長を務める。仕事を分断することなく、クライアントそのものを理解し、本質を浮き出すデザインを得意としている。愛称はでらみ。

「自分を変える」覚悟が、デザイナーへの道を開いた

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ー前職がデザインとは全く関係のない、人材系の営業だったとお伺いしたのですが、どうやってデザイナーになられたんですか?

子供の頃から絵を描くことが好きで、元々デザイナーという仕事には興味がありました。大学時代は、ダブルスクールでデザインを学ぼうと思っていたくらい。でも、いざ就職となった時に、まさか自分がデザイナーになれるわけがないと思ってしまって。同級生と同じように就職活動をして、いつの間にかOLになっていました。

それでも何か作りたくて、プライベートの時間でLINEのスタンプを作ったりもしていたのですが、本当に趣味程度。「やりたい」「できるわけない」の狭間で今一歩進めない中、転機になったのはオンラインサロンという場所でした。 

ー今はたくさんのオンラインサロンがありますが、そこでどうやって「仕事」になるまでのスキルを身につけたんですか?

デザインが上手くなりたい一心だったので、プロのデザイナーさんが多く在籍するサロンを選び、中の様子をじっと観察していました。サロンの中にデザインに特化したデザインチームという組織があったので、そこでの過去の活動を遡って、どんな人が在籍しているのか、主にどんな活動をしてきたのかを知る作業ですね。

デザインをする機会があれば、「やってみます!」と挑戦していました。ただ、自分一人で作っているだけではなかなか上達の道が見えない。ならば、ここにいるプロの方々にフィードバックがもらえるような機会を作ればいいのでは!? と思いついて、緊張しながら、当時そのチームを率いていた方に連絡したことを覚えています。それがきっかけで、今でも師匠と慕うデザイナーさんと出会い、育てていただいたので、本当に幸運でしたね。

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ー出会いに恵まれたにせよ、そんなに積極的に動かれていたとは、驚きました。

実はこのサロンに入るのは2回目で、1回目は入っただけで「何も起きないな…」とすぐにやめてしまっていたんです。オンラインサロンに入ったからって誰かが私の人生を変えてくれるわけじゃないって、今ならわかるんですけど、当時はそれに気が付けなかった。

勇気を出してみたのに、結局日常は変わらない。それなら今の状況を好きになるしかないなと、自分なりの努力もしてみました。目の前の仕事は、どうしたら楽しめるのか。プライベートを楽しむ方法はないか。LINEスタンプを作ったのも、その一環。ただ、作っている間は楽しくても、届け先のないものを作り続ける違和感は、ずっと拭えなかったですね。

どんどん会社に行きたくなくなって、日曜の夜には哲学書を読むようになって(笑)。少し心は楽になるんですけど、水曜日あたりでしんどくなってくる。このままでは壊れてしまう気すらしました。

ーそんな経験があったとは、知りませんでした。

何が辛かったかって、若いうちからいろいろな経験を積んでいきたいのに、「そんなにやらなくていいよ」と言われてしまうこと。働き方改革が進んでいる最中、残業もダメ、無理させちゃだめという風潮が、「何かやりたい」自分には合わなかったんだと思います。

このままじゃだめだと、やめてもやっぱり気になっていたサロンに、もう一度入ることを決めました。「今度こそデザインをやるんだ!」と覚悟をして、「自分から動く」ことを心がけて。それが、積極的に動けた理由ですね。

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ー企画を立ち上げた後は、プロからのフィードバックをもらい、技術を磨かれていったと。

手を動かす機会はたくさんある場所だったので、とにかくどんどん数を作って、フィードバックをもらって。クリエイティブに対して熱い想いを持っているデザイナーさんばかりだったので、仕事でもないのに毎回本気で向き合ってくださいました。

今、私がデザインをする上での基礎はすべて、この時に学んだこと。そして、ラブソルの代表2人に出会ったのも、ラブソル独自のクリエイティブとして制作しているビジュアルレポートの元となったグラフィックレポート(イベントなどの内容をリアルタイムで一枚のビジュアルにまとめる手法)との出会いも、この場所でした。

「ともに創る」デザインが、一番心地よい

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ー始めるきっかけや場所は人それぞれですが、覚悟のもと努力を続けることでデザイナーになるって、すごく夢がありますね。

それが、自分のことをデザイナーと名乗れるようになったのは、本当に最近なんです。

ーそうなんですか?

オンラインサロンでデザインをしていた時は、無償でやる分「作ったことへの評価」はいただけても、これが本当に良いものなのだろうかと、自分の中でジレンマがあったんですよね。特に力を入れて取り組んでいたグラフィックレポートも、出した時はわーっと盛り上がっても、すぐに見られなくなってしまう、賞味期限の短かさのようなものが気になって。長く愛されるもの、クリエイティブとしての価値を感じてもらえるものを作りたいと、段々思うようになりました。

ーなるほど...その葛藤とは、どのように向き合ったのですか?

きっかけはいくつかありますが、ラブソルで仕事をする中で、自分が作るクリエイティブの意義みたいなものが明確になって、迷いがなくなってきました。

賞味期限の話で言えば、去年LINEさんとビジネスカンファレンスのお仕事をご一緒した時に、その葛藤がかなり薄まった気がします。

事前にカンファレンスの情報を共有していただき、制作途中でのファクトチェックやクリエイティブチェックをやりとりしながら、担当者さんと一緒に作り上げたものが、当日配信されました。

企業さんの想いがしっかり反映されたクリエイティブだったからこそ、イベント後にもイベントの特集記事や採用ページにご活用いただけたんです。Yahooニュースにも取り上げていただいて、「こんな風に使ってもらえるんだ」と驚きましたし、その時に「息の長いクリエイティブ」をもっと作っていきたいと感じました。自分たちが作り出すものへの意識が、より強まったきっかけでした。

ー自分たちが作り出すものへの意識ですか。

そうですね、その対象物に没頭する力というか。私たちの仕事はクライアントさんありきですが、「ここだけ形にしてください」と言われるのは、ちょっと苦手だということに気がつきました。イベントであれば事前準備から携わって、担当者がイベントにかける想いまでクリエイティブに反映したい。Web制作一つとっても、直接クライアントさんからお話を聞いて、言葉には出てこない未来まで感じ取ってデザインしたい。デザイナーはデザインだけと切り分けることなく、まるっと全体をみられることで、本質を理解したクリエイティブがしたい。

そう意識をし始めてから、作ったものを喜んでもらえることが増えたんですよね。結果、息の長いクリエイティブになったのかなと。自分が作ったものを喜んでくれる人がいて、作って欲しいと声をかけてくれる人が増えて、ようやく、自分のことをデザイナーと呼べるようになりました。

ー相手を包み込むようなデザインは、そうやって生まれたんですね。ちなみに、相手をまるっと知る、その方法を教えてもらうことはできますか?

デザインする時はデザインだけの話をするのではなく、クライアントさんの好き嫌いから、今までに辿ってきた過去、未来に見据えているものまで、できる限りお話を伺うようにしています。私は全貌が見えないとデザイン出来ないので、SNSを活用している方であれば、そこにあるものも全部拾って、全部全部一旦自分の中に飲み込んで...。その人になりきるくらいまで咀嚼して、デザインに取り込んでいきます。

すごく手間がかかりそうと思われるかもしれないのですが、一度取り込むと応用ができるので、その後のクリエイティブには迷わないんですよね。ご一緒すると長いおつきあいになる、ラブソルならではのやり方にはなってしまいますが、今のところこの形が一番、パフォーマンスを発揮できると考えています。

楽しくて豊かな空間を、これからは私も創造していこう

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ーここまでビジュアルを大切にする理由って、なんですか?

ビジュアルは自分にとっては、言葉にも代わるものなんです。小さい頃から言葉で想いを伝えることがそんなに得意じゃなくて...。言葉で伝えることで摩擦が起きるのが、好きじゃなかったんですね。

家族内で謎のキャラクターを生み出してはそれに喋らせてみたりとか、家族新聞を作って、普段みんながモヤっとしてることをビジュアルで笑いに変えたりとか。コミュニケーションを取る1つの手段だったんです。


ー「伝える」以上に、人との関わりを円滑にするための手段でもあったんですね..。

確かに、そうかもしれないですね。ビジュアルを通じてちゃんと自分のことが伝わったり、正しい人間同士の関わりが生まれる。それが自分にとってすごく大事なんだなって今は思います。小さな頃は自然にやっていたことだけど、いつの間にかできなくなってしまっていたこと。本当に自分がやりたかったことに、やっと戻ってこられたのかもしれないです。

ー最後に、今後の目標を教えてください。

デザイナーになりたいと思った時、心に決めたことがありました。「デザインしかできないデザイナーにはならない」。今はラブソルでコミュニティの運営を任せてもらったり、文章を書かせてもらったり、写真撮らせてもらったり...、たくさんのことを経験させてもらっています。

2020年は何もかもが初めてだったけど、でも、目の前の仕事に夢中になれたことがすごく嬉しくて。一人じゃできないことも、仲間やクライアントさんに助けてもらって、一つひとつ積み上げていくことができた。「もっと自分に合うものがあるんじゃないか」って、外ばかり探していた自分はどこに行ってしまったんだと思うくらい、「幸せ」を知りました。

今年も新しいことに躊躇しない姿勢を維持しながら、デザイン事業部としてラブソルの売上を作れる仕事を取ったり、クライアントさんにもっともっと満足していただけるものを、作っていきたいです。

今はインターンの子たちもいるので、私がラブソルで与えてもらったような「楽しくて豊かな空間」を、今度は私も作る側になっていきたい。

これからはじめる人、もうすでに始めている人、私よりずっと階段の上にいる人…。これから出会う方々の背中を、クリエイティブの力で押せるような、そんなデザインをしていきたいです。

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Portfolio>>

【ビジュアルレポート】
 LINE株式会社様のビジネスカンファレンス #LINEDAY にて、ビジュアルレポートを制作。

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【Web記事のバナー制作】
ラブソルが記事制作を行う代々木上原のレストラン sio様のオウンドメディアで、バナーを制作。

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【Webサイトデザイン】
表参道の美容院 IJK様が運営するパーソナルジム『IJK GYM』のWebサイトを、クライアントのデザイナーと共に制作。

取材・執筆:伊庭 詩音
編集:柴山 由香柴田 佐世子
撮影:池田 実加
バナー制作:小野寺 美穂

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