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「さとゆみさんの言葉を読みたい」名指しで求められるライター佐藤友美さんに、仕事への向き合い方を聞く! #羅針盤のつくりかた

ずっと、気になっていることがありました。会社員であろうとフリーランスであろうと、「できる人の元には仕事がどんどん集まってしまう」この現象は、なぜ起こるのか、と。

「仕事が絶えない人は、どのように仕事や人と向き合っているのだろう」この疑問をぶつけるならこの方しかいない! と、ご依頼させていただきました。

ラブソルの代表2人のご友人であり、あらゆるメディア・イベント・テレビなどでご活躍されているライター&コラムニスト 佐藤友美さん(以下:さとゆみさん)です。

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<Profile>
佐藤友美(さとう・ゆみ)
1976年、北海道知床半島生まれ。テレビ制作会社勤務を経て、ライターに転向。日本初、かつ唯一のヘアライターに。著書『女の運命は髪で変わる』(サンマーク出版)は8万部を超えるベストセラーとなる。歯切れの良い解説が好評でテレビ、ラジオ番組でも活躍。講演回数も年間60回を超える。近年では書籍のライターとしても活動。年間6~8冊ほどの構成・ライティングを手がけ、ビジネス書から実用書、自己啓発、ノンフィクションまで、幅広いジャンルの著者から信頼を得て指名をうけている。

ラブソルのライター柴田(私)とデザイナーの小野寺は、2年前に参加したさとゆみさんの講義に大きく影響されまして、その後、仕事への向き合い方がガラリと変わりました。(その変化は代表2人も驚くほど)

私が一番気になるところは、さとゆみさんの仕事の多くが「誰かから求められて、誰かと一緒に作っている」こと。今まで出会った大人の中で、ここまで「引っ張りだこ」という言葉がぴたっとくる方はいません。

私も1人の社会人として、こんな風に求められる人材になりたい! 応えられる人間になりたい! この記事を読んでくださる方の中にも、同じように願う方はいらっしゃるでしょうか。

ラブソルと所縁のある方へのインタビューマガジン #羅針盤のつくりかた

今回はライター・コラムニストという枠組みに囚われず、あらゆる媒体から言葉を届け続けている佐藤友美さんをご紹介します。


仕事を始める前に、さとゆみさんが取り掛かることとは?

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ーさとゆみさんの活動は本当に多岐にわたりますが、お仕事に取り組むときに最初に行うことを教えていただけますか?

ライターの仕事で話していくと、チームで動くことが多いので、まず“ゴールを共有”します。その次に、“誰がどの分野のプロフェッショナルなのか”を確認しますね。

ーゴールを共有、ですか?

仕事におけるチームとは、「同じ目的のもと違う役割の人が集まった組織」ですよね。

発注してくれた編集さんは、「誰のためにどんなものを作りたいのか?」。そのゴールをチーム内ですり合わせておくことで、あとはそこに向かってそれぞれのプロが全力を尽くす状態にしたいんです。

一緒に仕事をするからまず仲良くなるのも素敵なことだけれど、お仕事をいただいている以上はプロとして良いものを作りたいな、と。

だから、最初にしっかりと把握すべきは、発注者の意図。その後に、自分の戦略(動き方)を考えるようにしています。

ー自分の方から、仕事の意図を解いていくんですね。それは、ライターになったばかりの頃からやってきたことですか?

そうですね、ずっと変わらない気がします。その仕事はどういう仕組みで成り立っていて、自分が何を求められていて、求められていることを成立させるために必要な素材は何か? 物事を分解して考えるのが好きな性格も、影響しているかもしれません。

ー相手の意図を汲み取って仕事に反映していくには、具体的にどんなことに気をつければいいのでしょうか?

事前にその媒体や取材相手のことをできる限り知るようにしています。例えば連載ものの仕事を受けたら、これまで掲載されているものをなるべく多く読みます。

前例を読むことで、一通りルールが理解できる。店舗取材のページだとしたら、「外観と内装がわかる写真が必要なんだな」、「キャプションに書いてある内容はこうだな」って最低限必要な素材がわかるんです。

どんな仕事であっても、前例は必ずどこかにあります。それを探して全部見て、先方が求める仕事の平均点を取ることを、まずは意識していました。

ー全部に目を通すんですか!?

そうですね。駆け出しの頃は手に入るものは全部読んでいました。 担当するファッション誌が、これまでどんな誌面を作ってきたのか。10年続いている雑誌なら自分の担当するジャンルは10年分全部見るし、ライバル誌はどういう特集をしているのかも、欠かさずチェックして。

ーそれは、すごいです…!

すごくないんですよ! 平均点を狙うなら、前例を見ることが一番近道だと思っているからやっているんですよね。一見熱血に見えるかもしれませんが、これは熱血でやっているわけじゃないんです。発注くださった方の意図を知り、ルールを知り、それを元に作れば、大きく外れないと思うから、やるだけなんですよね。

私は書籍の企画を出版社に持ち込むことも多いのですが、採用になった場合でも、担当してくれる編集者さんに「どこを面白いと思ってくださったのか」を聞きます。その上で、今後のお仕事で自分が果たすべき役割を考えながら、進めていくようにしていますね。

「ライターの仕事は、書くことがすべてではない」

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ー意図をしっかりと汲み取った上で、仕事を始める。まずは平均点を取る。どうしてそこが大切だと、気がついたんですか?

自分がこの業界でどう生き残っていくかを考えたとき、全体の相場感を見るってすごく大事だと思ったんですよね。

例えば書籍ライターで考えてみると、今は1日約200冊の新刊がリリースされていると言われているので、365日で6万冊以上出版されるわけですよね。その半分の3万冊に書籍ライターが入ったとしても、年10冊書ける人が3000人は必要。

書籍ライターって、そんなにたくさんいないですよね? そう考えると、書籍ライターという職業が、需要に対して人数が少ないのは明らかです。ということは、「1位を目指さなくても平均点以上を取ることができれば、仕事として成り立つな」って、まず“考える”んです。じゃあ平均点以上を取るためには何が必要だろうって、考えを進めました。

私の場合はファッション誌のライターからキャリアを始めたので、発注してくれる編集さんはどういう点でライターを評価するかを考えましたね。

「自分が編集者だったら」と考えると、原稿のうまさと同じくらい必要な要素がたくさんあるなって見えてきて。雑誌は絶対に発売日を遅らせられないから、納期を守ることは優先順位が高いだろうなとか、取材先との打ち合わせから任せられる人はありがたいだろうなとか、性格が明るくて撮影現場の雰囲気を良くする人は重宝されそうだなとか。

どの要素を持っていれば、編集者さんから「安心して任せられるライター」だと思ってもらえるんだろう、と考えたんです。

ーなるほど…。原稿の実力だけが次の仕事につながるものだと、すっかり思い込んでいました。

正直、原稿は後からでも直せる。でも、準備不足やコミュニケーション不足で取材相手を怒らせてしまうようなことがあったら、それこそ編集者さんにとって大変な損失じゃないですか。それなら撮影現場の雰囲気を良くするとか、撮影を時間通りに終わらせるとか、そういうところも大事だよなって思いました。

編集者さんの大切なものを一緒に守る、ということですね。

そうですね。ライターの仕事って、物理的に考えても書いている時間は全体の2割くらいなんです。それ以外は下調べをしたり、打ち合わせをしたり、取材をしたり、書く以外の時間がすごく多い。その時間でやっていることも、大きな「差」になると感じます。

事前準備もそうですが、実は私は原稿を書いている時間に対して、推敲にかける時間が比較的長いと思います。この文章を見て嫌な気分になる人はいないかなって、いろんな人を思い浮かべてチェックをしたものを、提出するようにしています。


「仕事は舞い込むものではない。とってくるもの」

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ー段々と、さとゆみさんに仕事が絶えない理由がわかってきた気がします。

あ、でもね、私もともと仕事はもらうだけのものじゃないと思っているんです。取ってくるもの。これはテレビ業界にいた頃の名残かもしれないけど、テレビ業界って、番組の企画を何百本と提出して1本通るか通らないかの世界なんです。だから、基本企画は通らないものだと思って、提案し続ける。ライターになってからも、いつでもお土産を置いてくることを意識していました。

ーお土産ですか?

そう。撮影現場で話すのは次号の企画。せっかく編集さんと話せるチャンスだから、「今こういうのが流行っているみたいで、〇〇とか、〇〇とか、企画になりそうじゃないですか?」ってお話してくるんです。

編集者さんも毎月企画会議に向けて何十本と案を出さねばならないので、そのヒントにもなる。そうすると、その企画が通った時に「あの企画が通ったからライティングお願い」って、次の仕事につながるんですよね。

ー会っている時に、どんどん次のアイディアを膨らませていくんですね。

もちろん、アポイントを取って企画書から提案することもありますよ。だけど、せっかく会っている時間があるのなら、次につながるアウトプットをしていかないとお互いの時間がもったいないじゃない?

ー下準備をしっかりしているから、当日は未来の話ができるんですね。そして、納期通りに上がってくる原稿。仕事が集まらないわけがないと、思えてきました…!

企画をこちらから提案することに関しては、それが当たり前だと思っていました。でも、私はせっかく仕事をするなら自分が「面白い」と思ったものに一生懸命になりたいタイプなので、待っているよりも提案する方が合っているのだなと、今は感じます。そのほうが、面白い仕事を、自分で増やせるんですよね。

ー「仕事は声をかけてもらうのを待つもの」「ライターは文章を書く人」。無意識に思いこんでいたことに気がつきました。自分から提案することや、関わる仕事の全体像を見て、自分が役立てるところを見つけていく大切さを感じます。

全体像を見ることに関しては、ファッション誌のライターを経験してよかったなと思う部分で、ライティングと同時に撮影ディレクションの経験が積めたんですよね。取材して写真をセレクトして、レイアウトを考えて、1ページをどう見せるかの全体像で捉える癖がついたんだと思います。

まず写真で伝わること、色やフォント、イラストや漫画で伝わること。その中の一つの要素が文章だったから、私はライターですが文章至上主義ではない。「この誌面を見てこういう気分になって欲しい」っていうゴールに向かって、「そのためにはどういう絵面だといいんだろう?」「そこに載るべきテキストは?」という順番で考えるんです。

だから、出来上がった原稿に赤ペンを入れられることも全く苦ではないんです。

ーそうなんですか?

私にとってライターという仕事は「状況説明の職人」であって、決してアーティストではない。だから、良いページをつくるために手を加えられるのは、むしろ嬉しいと思うくらいです。

ここから先は、「面白い」を目指して

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ーテレビでの経験やファッション誌のライターの経験を経て、今のさとゆみさんのお仕事のスタイルがつくられてきたんですね。それにしても、ここ数年は著者やコラムニストの「佐藤友美」としての言葉をたくさん発信されていますよね。

コラムニストとして、自分の想いを書くお仕事ですね。ライターの仕事は誰かの想いを書くことなので、どちらかというと裏方に徹するイメージ。いかに平均点以上を取り続けるかということを大切にして働いてきました。ライターとしては、「わかりやすい・読みやすい」と言ってもらえることがすごく嬉しかった。

でも、自分の名前で文章を書くようになったこの数年で、目標は変わったと思います。

ここから先は、「さとゆみの文章が面白い」って言ってもらいたい。

ー平均点以上をとることから、さとゆみさんにしか書けない文章へと、目標が変わっていくんですね。すごく素敵です!

最近、ようやく書きたいものと求められているものがマッチしてきたように思います。コラムニストとして書いたことが、「これが知りたかった」「読みたかった」と言ってもらえるようになって。文章を書くようになって、20年かかりましたね。

とある編集さんに「さとゆみさんの文章って、明るくてくったくのない文章だよね」と評してもらったことが妙にしっくりきて、それが私の芸風なんだなって理解できたのも大きいと思います。

社会の課題や悩みを取り上げていきたいとは思うのですが、誰かを責めたり糾弾するのではなく、読んだあとに、やわらかい気持ちになるような文章を目指していきたい。

ーさとゆみさんのことを「もともと、自分らしさを上手に生かして働いている人」だと思っていました。これだけの経験を経てようやく、自分らしい文章や、それを書ける環境に辿り着いたんですね。私ももっと頑張ろうと力が湧いてきました!

もっと早く辿り着く人も、もちろんいると思いますよ! あくまで私の場合はこういう流れだった、という話。今の働き方が「自分らしさを生かして働く」ことであるならば、だいぶ時間はかかってしまいましたね。でも振り返ってみると、ここに辿り着くまでの過程もすごく楽しかったです。

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ー 過程も楽しめたら最高だと思うのですが、そのためには、どうしたらいいですか?

私が一番大切にしてきたことは、自分で考えて選択していくことです。

どんなお仕事であっても、「お仕事をご一緒する相手が自分に何を求めているのか」を知る努力をして、「自分がパフォーマンスを発揮できる環境」を考えて選択して、良い仕事を目指していく。

とは言っても、私の場合、目標を決めてストイックに山を登るような生き方ではなかったと思います。

テレビの制作会社を退社して、次の日にはフリーランスのライターになって。「書く仕事がしたいんです!」とアピールすることから始まった私のライター人生は、ずっと川下り型でした。ぐわーーーっと勢いのある流れに乗りながら、道が分かれたら「 今回はこっち!」と都度選択して、ここまで来たんですよね。

選択に迷う時は、景色が綺麗そうな方へ。

「今日の自分がいいと思える選択肢」を、選んでいくことが、自分らしさにつながっていくのではないでしょうか。

ー自分で考えて行動したことの、積み重ねなんですね。

人は結局、自分で考えたことしかできないですからね。私もまだまだゴールではなくて、これからも長く書く仕事を続けていたいと思っています。そのためにこれから気をつけていくべきは、健やかな自分であることだと思っているんです。

ー健やかな自分、ですか?

そうです。まず私が、健やかであること。長くライターとして書き続けていくためにも、必要なことだと思っています。

そう思うから、私が受け持っているライター講座でも、文章術よりもメンタルの保ち方であったり、まず健やかな生き方みたいなことから、お伝えしているんです。「心身ともに健康で、健やかに長く書き続ける技術」。ワーク形式ですっごい考える授業がいっぱいあるから、考える癖をつけたい人にはおすすめです。

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「佐藤友美としての言葉」に触れられるnoteはこちら

最新のnoteは、CHANELの香水にまつわるお話です。過去の記憶のお話から、現在へ。情景が浮かんでくるこんな文章を、いつか書いてみたいです…!

◆宣伝会議にて、さとゆみさんが講師を務める講座が不定期開催されています!

次回登壇される講座は、こちら。さとゆみさんは、講座全7回のうち、後半3回に登壇されるそうです! 

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取材・執筆:柴田 佐世子
編集:柴山 由香
撮影:池田 実加
バナー制作:阿部愛 / 小野寺 美穂

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