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全て砂塵になって仕舞えば良いと思う、そういう夜

疲れた、と、つぶやく声さえ宙に消えて地に落ちてしまう。手で落とさないように捉えようとしてもその力も消えて抜けて徒労感でいっぱいになる。

どれだけ美しい花を、絵を、写真を部屋に飾って日々に彩りを加えたとして、結局それすら意味がないように思えてくる時がある。

自分という存在が何に還元できているのか、そう考えている間にも時間は過ぎて行くし、夜が来るまでどうやって生きる気力を保っていったらいいのかわからず、そうやって考えること自体に対する力も、部屋の蛍光灯の光に吸い取られてゆくよう。

積み上げた本を見て愕然とし、

美しい歌と思っているはずの音さえ雑踏を歩く人の足音に聞こえて耳を塞ぎ、

七階から下を見下ろした時の恐怖で、飛ぶ勇気すら無くし、

何をしているんだろう、と、冷たい床にへたりこみながら暖房のスイッチを入れる。暖房の音にさえ嫌気が差してまたスイッチを切り、だんだんと冷たくなる部屋で足だけ冷えた体を布団に滑り込ませて、しばらく眠る。体がだんだんと寒さで静けさを纏うと、しまった、と憂いてまたスイッチを入れる。という動作を数時間で繰り返す。

全部消えてしまったら良いのに、足をとらえて沈めていく砂になってしまったらいいのに、と思うその感情さえなかったことにしたい。

おそらくどちらに進んでいるかもよくわからない足取りで何かを探り探り歩いている、そんな自分を向こう岸から見ている。

それでも赦してもらえるのだろうか、

何に赦されたいのかわからないけれど、赦しを乞う自分の姿がとても滑稽だと、虚しさにも似た笑いが込み上げてくる。

このまま夜が終わらないでほしいなんて、絶対に無理な話なんだけれど、今夜くらい良いじゃないか。何もできなかったと自分を嫌になったとして、その事実しか今日はもう残らないのだから。どれだけ甘やかしてもグダグダになってしまってもダメな時はダメだ。机に置いたペットボトルのお茶だけ飲んで、もう諦めよう。

疲れたと呟く声も、もう何もかも憂鬱だというその気持ちも、ご飯を食べようとして箸を持とうとしたけれど結局力が湧かずに置いた手も、冷えた足も、全部、宙に浮かせて落としてしまえば、諦めもつくだろう。

今日は終わる、今日が終わるという時まで呼吸した、時間が過ぎた、その時間の中で自分は確かに一定の空間にいた。それでもう、諦めて砂にさせてしまおう。

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眠れない夜に

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