前十字靭帯術後復帰アプローチ|jog復帰まで
前十字靭帯(ACL)損傷は基本的に手術が必要となる怪我であり、復帰までに術後6-9ヶ月程度必要となることから、スポーツ選手にとって大きな不利益となる怪我の1つとなります。
医療従事者及びトレーナーは長期に渡り選手をサポートすることになりますが、その期間の中でも外してはいけないリハビリのポイントの逃すと、十分な状態で復帰できないケースに遭遇してしまいます。
実際に元の競技レベルに戻れないだけでなく、再受傷(同側・対側)の確率も10-20%との報告も見られます。
今回はACL損傷術後リハビリについて、基礎知識及びリハビリのポイントを紹介していきます。
元の競技レベルに確実に復帰し、再受傷の確率を限りなく最小限にできるようにすることを目標とします。
1.前十字靭帯の基礎知識
前十字靭帯の解剖
関節包内靭帯であり血流に乏しい組織であることから、自然治癒は望めなく、再建手術が必要となります。
またACLは2つの線維束に分けられます。
両線維束ともに伸展で張力が増大することから、関節包内運動を誘導しているとされています。
受傷起点と損傷メカニズム
受傷起点は、ジャンプの着地動作や切り返しなどのカッティング動作である非接触型が多く、その際に膝関節が軽度屈曲位・膝外反(いわゆるknee-in・toe-out)に、体幹側屈・対側への回旋が加わり、外反ストレスが増大することで発生するとされています。
損傷メカニズムは、膝関節は外反することで大腿骨・脛骨共に凸である膝関節外側に荷重され、さらに脛骨は後方傾斜していることから、後方重心かつ側屈・回旋が加わることで、膝関節に外反及び下腿に対する前方剪断力、回旋ストレスが増大することで損傷するとされています。
ACL損傷は、
接地後30msまでに急激な外反+下腿内旋が生じ、接地後40ms付近でACL損傷が起こるとされています。
着地後に筋による制御を行うには150ms-200ms必要とされていることから、意識的に膝関節を中間位に保つトレーニングでは膝関節制御の改善が見込めず、着地動作に入る前の身体制御によって着地時の膝関節に加わる外反モーメントを軽減させる必要があります。
つまりACL損傷を予防するには、片脚での着地動作や急激な方向転換の際に膝関節に対する外反ストレスを軽減させる動的な制御能力が必要になると考えます。
再建術とリスク管理
それぞれの手術の特徴により後療法を考慮する必要があります。
BTBでは、膝伸展機構の機能低下を起こし、可動域制限や膝伸展筋力の低下が起こすことが多く見られます。
STGでは、半腱様筋を採取することから膝関節深屈曲位での筋出力が低下することが多く見られます。
両手術方法共に、骨孔が塞がる8-12週は再建靭帯にストレスが生じる膝関節屈曲120°以上になることは制限し、再建靭帯に過度なストレスが加わらないように注意が必要となります。
骨孔が塞がり、靭帯との癒合が得られ安定するタイミング(3ヶ月程度)でjog開始となります。
また再建靭帯の強度が増す7-8ヶ月がスポーツ復帰のタイミングとなり、早期復帰はリスクを伴うことになります。
2.術後早期の筋機能改善エクササイズ
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