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日記時々嘘(終電)

久々に終電で帰る。
いつも終電は乗らない。終電の時間を過ぎても良いやと思うくらい盛り上がると無理やり歩いて帰る。もしくは、全然盛り上がらなくて早々に切り上げるかのどちらかなことが多いからだと思う。

気づけば終電に乗ることがない。

高校の友達がたまたま来ているらしく、前日に会う予定ができた。
中高一貫で中学生の時からだからなんだかんだで10年来の友人になる。
にも関わらず、実はお互いに腹の底で思うところがあるので、間にいる別な友人から「あんたらは仲が良いようで別に仲良くはないのが不思議」と言われている。会話の心地よさだけで友達をしている珍しいタイプだと思う。
 
会話の心地よさと言ったけど、ここ数年はその友達との会話は少し心地よくなかった。
相変わらず彼女自身の話は心地が良いが、ここ数年主語が私の彼氏が…。になってしまったのだ。
彼女自身の感性は好きだけど、知らない男の「ここがすごい話」は興味がない。彼女の彼氏自慢は度が過ぎていて、実は共通の友人とも話題になるくらいだ。会話の8割が知らない男の話だから、残り2割の彼女自身の話を掬い取る会話に疲れていた。
 
今回は、美しいものを見に行くことで彼氏の話の濃度が薄まった。
いつもより、濃度の高い話で楽しかった。もっと早く見るべきものが明確な遊びをすべきだったのだなと反省した。
その後、ご飯を食べに行くことになった。たまたま入った店はオシャレだけどあまり満足のできないお店で、彼女が頼んだナスパスタの嫌いらしい大量のナス全部と、私が頼んだじゃがいもを交換してあげながらビールを飲んだ。
頼んだ料理の主たる部分を食べられなかった彼女を見かねて、私の好きな居酒屋に連れて行くことを提案した。
私は700mlの酎ハイが並々と注がれた巨大なジョッキを片手に、好物らしい豆をたべて笑顔の彼女が話す男の話や、近況を聞いた。
なんだか、今までより心地よかった。全然酔わなかった。
だんだん、彼女自身と彼女の男が同一の存在に思えてきてなんとも思わなくなってきた。変な感覚だけど、もはや男がお前なのだと思えてきた。
どちらが彼女自身でどちらが彼女の男なのかわからない。
今までは、彼女の話を聞かせてくれよと思っていたからザワザワしていたけど、彼女の男を含め彼女なのだと認識がすり替わるとなんとも思わない。笑顔で、そうなんだ〜!と言えるようになった。抵抗感ももはやない。
 
最後は一通り付近を散策し、ホテルの前で20分ほど立ち話をして解散した。なんだか今回は楽しかったなぁ。満足〜と思って駅に向かった。

そこでふと、終電に普段は乗らないことを思い出した。
現に今私は終電に乗れているじゃないか…。と気づくと何が何だか分からない。なんだか何かを諦めたんだと思う。

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