見出し画像

運動のススメ!?

~運動家ヤスタの運動簿vol.9~


人間は運動するように進化してきたのではなく、必要に応じて体を動かすように進化してきた

「運動の神話〔下〕」ダニエル・E・リーバーマン p12



成人の約半数、十代の約四分の三までが、基準となっている週一五〇分の身体活動を満たしていないと答え、余暇に運動していると回答した人も三分の一以下だった
(二〇一八年に数百万人のアメリカ人を対象に行った調査)

「運動の神話〔上〕」ダニエル・E・リーバーマン p18


 常日頃から「exercise is medicine(運動は薬)」などと標榜して運動を推奨しておりましたが、わざわざ時間を作って走ったり、筋力トレーニング(休日のジム通い)をすることは、人間の進化の過程からいって至極不自然なことなんだそうです。

 というのも…怠けること、運動を忌避することは不必要な身体活動を避けようとする人間の本能なのだそうです。


体を動かさない状態にいるのは、乏しいエネルギーを賢明に配分するための古代からの基本的な戦略である

「運動の神話〔上〕」ダニエル・E・リーバーマン p70

 

 
 ヒトはなにもしない(座っていても、寝ていても)でいても総エネルギー消費量/日の2/3(63%)を費やしております。

なにもしない=安静時代謝量

※脳で20%、肝臓で21%、骨格筋で22%も占めている

詳しくは
加齢とエネルギー代謝 | e-ヘルスネット(厚生労働省)


推定エネルギー必要量(kcal/日)
=基礎代謝量(kcal/日)×身体活動レベル(PAL)

私(48歳・男)に当てはめると…

基礎代謝量…1,530kcal
身体活動レベル…2.0

1,530(kcal)×2.0(PAL)=3,060(kcal)

3,060(kcal)×0.63=1,927(kcal)

推定エネルギー必要量…3,060(kcal)
安静時代謝量…1,927(kcal)

詳しくは↓
Ⅱ 各論 1. エネルギー・栄養素

 
 下記の「維持する」ことに1,927(kcal)を使ってしまうため、残りの1,133(kcal)を残りの4つに充てなければならない。


〔カロリーを消費する方法5つ〕

体を…成長させる
体を…維持する(安静時の代謝)
エネルギーを…蓄積する
体を…動かす
繁殖する
(※年齢やエネルギーによって状況は異なる)

トレードオフの関係から残りのカロリーを運動に費やした場合、繁殖(子孫を残す)に費やすカロリーは減る、逆もまた然りであります。


一言で言うと、活動的な人でも、おそらくは体を動かすことよりも、体を維持することに、より多くのエネルギーを使っているわけだ。

「運動の神話〔上〕」ダニエル・E・リーバーマン p60


 
 ゆえに、一度しか使えないカロリー節約しようとするのは納得のいくところであります。


運動をしない人は怠け者のカウチポテトであるというステレオタイプの考え方に反し、不必要なエネルギーの浪費を避けることは、まったくもって正常なことなのだ。エスカレーターに乗ったことを避難したり恥じたりするより、体を動かすことを避けようとする傾向は、進化の観点から見て完全に理にかなっている古代の本能であると認識した方がずっといい。

「運動の神話〔上〕」ダニエル・E・リーバーマン p79



生きていくために、食べるために…

そう(運動)せざるを得なかった!?

・移動手段がない
・文明の利器がない

 といった狩猟採集民は、食糧を獲得するために歩く、走るという日常の行動が身体活動になっていただけであります。


二〇人を超えるタラウマラ族の男性に加速度計を装着してもらったところ、彼らは一日平均一六キロも歩いていることがわかった(ア-ロン・バギッシュ博士)

「運動の神話〔上〕」ダニエル・E・リーバーマン p36


 昨年12月に、ほぼ外出せず自宅で過ごした日の歩数を貼り付けます。主にとった行動は、家事(掃除・洗濯・洗い物)です。


ある1日の歩数


 自宅内でも十分な身体活動量となることの一例です。

 
 ふと思いついたのが、「寿命の性差」でした。男性より女性のほうが寿命が長いのは周知の事実ですが、男性は一般的に定年(60~70代)を迎えたその日から圧倒的に活動量が低下します。片や女性には定年はなく(例外もある)家事に追われる毎日で、男性に比べ活動量低下は緩やかではないか?と思われます。つまりは活動量の低下が著しいために、病気のリスク↑、死亡率↑、短命につながっているのでは?と想像しております。
(※喫煙、飲酒、食習慣といった生活環境要因を無視することはできませんが…。)



日常に運動を取り入れよう!

〔自宅〕
・椅子の不使用(胡坐)
・積極的な家事(炊事・洗濯・掃除)
※床に座る=下肢関節の屈曲角度増大=筋活動量↑=血液循環量↑

〔外出先〕
車→自転車→徒歩

〔商業施設or駅〕
エレベーター→階段(無理のない範囲で)
エスカレーター→階段



【まとめ】

・ヒトが怠惰に過ごすのは人間の本能
・ヒトの體(からだ)は維持するだけのために、1日に必要なエネルギーの2/3を使っている
・現代では日常で身体活動量を確保することが難しくなっている(便利になりすぎているため)


【ヤスタの見解】

 人間の適応の進化には衝撃を受けました。これを知ってからというもの、これまでの「運動はするものだ」から「したくなければ無理にするものではない」程度に留め、むやみに運動を奨励することはしなくなりました。「その場合(身体活動量の低下による)こういった弊害(癌はじめ慢性疾患)が起こる可能性があります…。」とは伝えるようにはしてます。

 競輪選手時代は「トレーニングで自転車に乗っているから」と健康でいるつもりでした。公共交通機関の発達していない地方在住(青森)ということも相まって、車移動が主体で「ちょっと近所まで」も車を使い「歩く」というせっかくの移動手段を放棄した30数年間でした。上京後は徒歩の頻度が圧倒的に増え、日常生活に運動が取り入れられていると自負しております。

 おわりにお気に入りの文章を引用します。


私たちは現在の報酬(いまここでクッキーをもう一枚)をつねに遠い未来の報酬(年をとったときに健康でいられる)と比較して、報酬の価値を遅延の長さに応じて割り引いている

「人体600万年史〔下〕」ダニエル・E・リーバーマン p294


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?