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【PMP×野球】#1:統合マネジメント

「プロジェクトマネジメント」×「野球」

世の中には様々な”やるべき事”が溢れている。そのやるべき事を然るべき準備や手順(プロセス)で進めていく手法に”プロジェクトマネジメント”という概念がある。

あらゆる仕事に転用できるベースとなる概念・考え方だが、なんせとっつきにくくて分かりにくい。参考書を読んでもイメージもつきにくいし、頭に入ってこない。

そこでこのプロジェクトマネジメントを自分の大好きな”野球”というフィルターを通し、野球とのアナロジーを見い出しながら”プロジェクトマネジメント”を分解していく。野球というスポーツも、各自がそれぞれの準備や役割を正しく行う事で”試合に勝つ”というプロジェクトを遂行していると捉え置き換えれば少しは頭に入りやすいし、知識として定着するはずである。

苦手な食べ物を好きな食べ物と一緒に食べるように…
難解な用語を身近なものに置き換えることで覚えるように…

#1.統合マネジメント

<立ち上げプロセス群>
1.1:プロジェクト憲章の作成

<計画プロセス群>

1.2:プロジェクトマネジメント計画書の作成

<実行プロセス群>

1.3:プロジェクト作業の指揮・マネジメント
1.4:プロジェクト知識のマネジメント

<監視・コントロールプロセス群>
1.5:プロジェクト作業の監視・コントロール
1.6:統合変更管理

<終結プロセス群>
1.7:プロジェクトやフェーズの終結

統合プロジェクトマネジメントは「プロジェクトマネジメント・プロセス群の各種プロセスとプロジェクトマネジメント活動の特定、定義、結合、統一、調整などを行うために必要なプロセス及び活動」と定義されている。

資源の配分、競合する要求のバランスをとる、代替手法の検討、プロジェクト目標を達成するためのプロセスのテーラリング、そして、知識エリアにまたがる相互依存関係をマネジメントすることが重要である。

唯一全てのプロセス群において個別プロセスを抱える知識エリアである。

いわばプロジェクトマネジメント知識体系の中においては”統合マネジメント”は最も重要なポジションであり、野球でいえば投手である。

野球の試合は投手が投げなければ始まらないし、投手の出来次第で大きく勝利の行方は左右する。先発ピッチャーのリズムは試合全体のリズムを司ることになるし、試合中における相手バッターへのアプローチや攻め方の変更、そして試合を締め括り、終結させる。”勝利を掴む”というプロジェクトにおいて全ての起点となるあたりは統合マネジメント領域と類似するところが多い。


1.1:プロジェクト憲章の作成

プロジェクトの存在を正式に認可し、プロジェクト活動に組織の資源を適用する権限をプロジェクト・マネージャーに与えるための文書を作成するプロセス。

”ベネフィットマネジメント計画書”と”ビジネスケース”

プロジェクト憲章作成の前にも、プロジェクト目標と事業目的への貢献方法を示す重要な文書が2つ存在する。

それが【ベネフィットマネジメント計画書とビジネスケース】であり、これらは”プロジェクト外(=プロジェクトスタート前)”に作成される。

<1.1:プロジェクト憲章の作成(主なアウトプット)>

◎プロジェクト憲章
プロジェクトの存在を”正式に”認可するために必要な文書。プロジェクトのイニシエーター(開始者)もしくはスポンサーが発行する。これを発行することでプロジェクトマネージャーが母体組織の資源を活用できる権限を付与されプロジェクト活動がスタートする。いわば、”プロジェクトの出生届”的存在。

◎前提条件ログ
ビジネスケースの中に記載される戦略的及び業務上の前提条件と制約条件をプロジェクト憲章に反映する。これらの前提条件はプロジェクトを通じて変化することがあるので、リスクとしてマネジメントされることがある点は注意。

1.2:プロジェクトマネジメント計画書の作成

全ての補助計画書を定義し、作成し、統合し、調整するために必要な行動を文書化するプロセス。各知識エリアで作成される「◎◎マネジメント計画書」は全てこのプロジェクトマネジメント計画書を構成する補助計画書となる。

プロジェクトマネジメント計画書は承認を受けると”プロジェクト・ベースライン”となり、この計画書の更新には公式な統合変更管理プロセス(CCB)を通じてコントロールされることになる。

野球でいえば投手のリズムが攻撃へのリズムを生み出すとも言われる。投手中心に試合が展開されていくことをイメージすれば、投手のリズム(=プロジェクトマネジメント計画書)を中心にそれぞれのポジションのリズム(=その他◎◎マネジメント計画書)も連動していく、ということも想像しやすくなるのではないだろうか。

<1.2:プロジェクトマネジメント計画書の作成(主なアウトプット)>

◎プロジェクトマネジメント計画書
基本的な”10の補助計画書と3つのベースライン”を統合・集約し作成する。承認を受けたプロジェクトマネジメント計画書は「プロジェクト・ベースライン」とも呼ばれる

 ⒈スコープ・マネジメント計画書
 ⒉要求事項マネジメント計画書
 ⒊スケジュールマネジメント計画書
 ⒋コストマネジメント計画書
 ⒌品質マネジメント計画書
 ⒍資源マネジメント計画書
 ⒎コミュニケーションマネジメント計画書
 ⒏リスクマネジメント計画書
 ⒐調達マネジメント計画書
 ⒑ステークホルダーマネジメント計画書

 A:スコープ・ベースライン(スコープ記述書/WBS/WBS辞書)
 B:スケジュール・ベースライン
 C:コスト・ベースライン
→ 上記3つのベースライン総称を”パフォーマンス測定ベースライン”と呼ぶ

1.3:プロジェクト作業の指揮・マネジメント

プロジェクトマネジメント計画書で定義された作業をリードし、遂行し、また承認済み変更を実施するプロセス。

試合前に想定した投球プランをイメージし実際にバッターと対峙してゆく。試合中に対戦していく中でも打席を重ねるにあたって、打者の反応を見ながら都度”攻め方を変える”などの変更をバッテリー間でも重ね、勝利というプロジェクト成功を手繰り寄せていく投手のさまが”プロジェクト作業の指揮・マネジメント”と類似している。

3つの”変更要求”

プロジェクトを進行していく上で”変更要求”が発生することは免れない。ただしその変更要求がどういった性質のものなのか?は正しく抑えておく必要がある。以下が3つの要求事項の説明となる。

是正処置:将来の結果と計画を一致させるための変更
予防処置:将来問題が起きることを未然に防ぐための変更
欠陥修正:既に発生した欠陥を修正するための変更

これら変更要求は「実行」「監視・コントロール」の多くのプロセスからアウトプットされ、統合変更管理(CCB)のインプットになるものである。

<1.3:プロジェクト作業の指揮・マネジメント(主なアウトプット)>

◎成果物
「固有で検証可能なプロダクト、所産、またはサービスを提供する能力で、プロセス、フェーズ、またはプロジェクトを完了するために生成したもの」と定義されている。

◎作業パフォーマンス・データ
アクティビティ実施中に把握した生の観測値や測定値。各実行プロセスにおける測定結果のことであり、監視・コントロールプロセスにおける”作業パフォーマンス情報や作業パフォーマンス報告書の源”となる。

◎課題ログ
全ての課題が記録され、追跡されるプロジェクト文書。
主には以下のような項目が記載されている。
 ー 課題のタイプ(カテゴリー)
 ー 誰が、いつ問題を提起したのか?
 ー 説明
 ー 優先順位
 ー 課題に誰が任命されているのか?
 ー 目標とする解決日
 ー 状況
 ー 最終解決策

1.4:プロジェクト知識のマネジメント

プロジェクトの目的を達成し、組織としての学習に貢献するために既存の知識を生かし、新しい知識を創造するプロセス。要するに”過去の教訓を未来に活かすため”の活動のこと。

確率に左右される野球というスポーツにおいて投手と打者に力の差が大きかったとしても、常に”必ず抑えられる”ということが無い。予期せずに痛打をくらうこともあれば、配球や攻め方など細かい部分での反省を積み重ねながら、投手は次の打者と対峙していく。
その”過去の対戦を振り返り、次に活かす”という行為がまさにプロジェクト知識のマネジメント(=自分自身の教訓登録簿)である。

「暗黙知」と「形式知」

新しい教訓や知識を創造してゆくためには2つの知識をマネジメントしなくてはならない。その2つの知識が「暗黙知」と「形式知」である。

◎暗黙知
信条、洞察、経験、ノウハウなど明確に表現するのが困難な知識。
背景やコンテキストなどはあるが文書化が困難で、この知識を理解・共有するためには会話や相互作用を通さなければならない。
Ex)どのシチュエーションで打たれることが多いか?

◎形式知
単語、絵、数字を使って容易に文書化できる知識。但しそもそもの背景やコンテキストが含まれていないために他の人に正しく理解され難い
Ex)対戦通算の被打率はどれくらいなのか?

いずれもどちらか一方ではなく2つの知識の特徴を理解しながら、いかに「暗黙知を形式知化して他人と共有・知識統合をしていけるか?」が重要なポイント。

野球というスポーツでも”あうんの呼吸”と呼ばれる投手と捕手のバッテリーの絶妙なリズムは非常に”暗黙知”的である。高校野球などでもたまに見られるが小さい頃から同じチームという背景やコンテキストを持ってその感覚で今の場面を共有し、相互作用させているように映る。

それに加えて昨今のスポーツのデータに伴い、野球でもバレルゾーンやボールの回転数や回転軸などの形式知的な”数値化したそのもの”も出現してきており、野球界においてもこれら”暗黙知”と”形式知”をどうやって融合させて、ハイレベルでバランスをとっていくのか?が強いチーム作りに欠かせない要素となってきている。

<1.4:プロジェクト知識のマネジメント(主なアウトプット)>

◎教訓登録簿
プロジェクト全体にわたってプロジェクトから得た知識や教訓をストックしていく文書。

1.5:プロジェクト作業の監視・コントロール

プロジェクトマネジメント計画書に定義されたパフォーマンス目標を達成するために全体的な進捗状況を追跡し、レビューし、かつ報告するプロセス。

投手は試合中、常に打者を観察し、勝利を引き寄せるために駆け引きを繰り返す。さらには、打者それぞれの投球に対する反応や時として相手ベンチの様子など広い視野を持ってグラウンドの中心で試合をコントロールし続けていく。

<1.5:プロジェクト作業の監視・コントロール(主なアウトプット)>

◎作業パフォーマンス報告書
意思決定や対策あるいは認識を引き出すために作業パフォーマンス情報(=実行プロセスにおける測定結果データを分析したもの)を物理的または電子的にまとめたドキュメント。ステークホルダーへ提出される。

◎変更要求
計画値と実績値を比較した結果によっては「是正処置」「予防処置」「欠陥修正」などの変更要求が提出されることがある。

1.6:統合変更管理

全ての変更要求をレビューし、承認し、そして成果物・プロジェクト文書、及びプロジェクトマネジメント計画書などへの変更をマネジメントし、決定事項を伝達するプロセス。

プロジェクトのベースラインが確定したらそれ以降変更要求などが発生する場合はこの統合変更管理プロセスを経て承認または却下される

<1.6:統合変更管理(主なアウトプット)>

◎承認済み変更要求
全ての変更の状況を変更ログにて管理・記録する。承認された変更要求は「プロジェクト作業の指揮・マネジメント」プロセスのインプットとなり実行に移される。

◎プロジェクト文書更新版【変更ログ】
公式な変更管理プロセスに基づく変更情報は全て”変更ログ”として文書化

1.7:プロジェクトやフェーズの終結

プロジェクト、フェーズ、または契約上の全ての活動を完結させるプロセス。全部で10個ある知識エリアの中で終結プロセスがあるのはこの統合知識エリアの【プロジェクトやフェーズの終結】プロセスのみ

このプロセスを経て一つのプロジェクトが終結し、次の新たなプロジェクトのために確保されていた組織内資源も開放される。

野球は、投手がボールを放つことから試合が始まり、投手が27番目の打者を討ち取ることで試合が終結を迎える。この辺り”試合というプロジェクトを終結に導く存在”という特別なポジション感とのアナロジーで記憶しておくとわかりやすい。

<1.7:プロジェクトやフェーズの終結(主なアウトプット)>

◎プロジェクト文書更新版
全てのプロジェクト文書は更新されて、最終版として記録される。とりわけ重要な”教訓登録簿”には次の項目が記録される。
 ー ベネフィット・マネジメント計画書(※PJスタート以前に作成)
 ー ビジネス・ケースの正確さ
 ー プロジェクトと開発のライフサイクル
 ー リスクや課題のマネジメント
 ー ステークホルダー・マネジメント
 ー その他プロジェクトマネジメント・プロセスに関する情報

◎最終プロダクト、サービス、所産の移管
プロジェクトの開発チームからその成果物の運用・維持または別のサポートチームへの引き継ぎをする。

◎最終報告書
プロジェクトまたはフェーズの概要レベルの説明から始まりスコープ目標、品質目標、マイルストーンの計画と実績値、受入可能なコスト範囲、最終的なプロダクト及びサービスが本プロジェクトでどういう課題を達成したのか、などをまとめた報告書。

”統合マネジメント的”プレイヤー

統合マネジメントという知識エリアを見てきたが、その役割はプロジェクトを成功させる上では非常に重要なポジション・存在であることは理解できたと思う。さて、それを”投手”という野球上のポジションに置き換えてきたわけだが、実際のプレイヤーとしてみた場合、誰のイメージだろうか。

勝利を掴むというプロジェクトを成功させる上で必要なグランドの中心に立ち、常に冷静な視点を持ち、ゲーム前から最高の準備をして試合に臨み、いざ試合が始まれば、自分の能力を存分に発揮して打者の反応を見ながら駆け引きして相手を翻弄していく。

まさに”絶対的エース”と呼ばれる存在が頭に思い浮かんでくる。そして、その代名詞でイメージするのは菅野智之(読売ジャイアンツ)山本由伸(オリックスバファローズ)あたりだろうか。

菅野智之(読売ジャイアンツ)
現代プロ野球の中において”ミスターパーフェクト”と言っても過言では無い能力を有し、まさに試合を”統合的に管理・支配”している印象。

山本由伸(オリックスバファローズ)
ここのところ急激にその能力で日本プロ野球界を席巻している次世代日本を代表する若きエース。ストレートとスライダーの質は一級品で”試合を支配”するコツを心得ている。



次回は「#2:スコープ・マネジメント」


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