備忘録:精神医科学基礎 e-ラーニング Vol.2 内因性精神障害

精神医科学基礎Vol.2とVol.3を視聴した後にテキストを読んでまとめた。

内因性精神障害とは

脳神経系での情報伝達異常や神経伝達物質の分泌異常のために精神が異常な状態になるものである。医学・生理学的知識が必要不可欠であり、医師との連携や医師へのリファーが重要になっている。

内因性精神障害には、統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害群、双極性障害および関連障害群、抑うつ障害群がある。統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害群には、統合失調症、妄想性障害、緊張病、短期精神病性障害などがある。双極性障害および関連障害群には、双極1型障害、双極2型障害そして気分循環性障害が含まれる。抑うつ障害群にはうつ病、持続性抑うつ障害、重篤気分調節症、月経前不快気分障害が含まれる。

統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害群

統合失調症は、ドーパミンの分泌異常が一因であると考えられていて、主に10代後半から30代半ばに発症する、陽性症状と陰性症状という全く異なる2つの症状が単一の精神疾患においてみられるものである。陽性症状とは妄想・幻覚・支離滅裂で脱線の多い会話・支離滅裂な行動であり、陰性症状とは感情の平板化や意欲ないし活動性の低下などである。症状が複数有り、そのうち陽性症状が一つ以上、認められていなければ統合失調症とみなされない。他の内因性精神障害と同じく、あくまでもクライアント固有の状態に対して変化していること、各種症状の発症原因が他の疾患で説明されないこと、薬物などの外的要因に因らないことが、診断のうえで求められている。陽性症状の一か月間以上の持続、各種症状の半年以上の持続が診断の要件である。

統合失調症の症状は、前駆期→急性期→小康期→回復期または慢性期と進む場合がある。経過は様々であるので、かつて行われていた病型分類はDSM-5では削除された。小康期で経過が順調であり回復したときも、再発予防が必要である。前駆期には、主業の意欲低下・集中力の欠如・身だしなみの欠如・不眠・易怒性などが現れ、身近な人が変化を感じることが多い。そして急性期に陽性症状があらわれて受診と診断に至るケースが多い。家族・関係者には、医師の説明を受けて理解することと、経過に応じた適切な対応をすることが求められている。

ところで、診断基準には含まれないが、統合失調症のクライアントには病識が欠如した人が多い。そのために自身で能動的に医療機関を受診することは少ないし、統合失調症の認識を持たせることや処方された薬を指示通りに服用させることが必要である。

薬物療法により症状が落ち着いている状態での来談者中心療法や認知行動療法による支援が奏功することがある。Social Skills Training、集団行動を伴うスポーツやゲーム、対話などの病の回復に合わせた社会活動・日常生活へのリハビリが、実施されることが多い。病後すぐに社会活動や日常生活に戻ると、過度のストレスにより再発することが有るため、Social Skills Trainingは重要である。

妄想性障害は、その名の通り妄想を主とする疾患であり、統合失調症の幻覚・支離滅裂な言動・陰性症状は無い。また、妄想性障害は妄想の種類によって、自分が他者から愛されているという妄想を中心に持つ被愛型・他者が認めていない自らの成果を中心にもつ誇大型・恋人や配偶者が不貞を行っていると証拠もないのに確信する嫉妬型・騙されていたり嫌がらせを受けていると思い込む被害型・身体の機能や知覚に関する妄想を中心に持つ身体型に分類される。主に10代後半から30代半ばに発症し、認知行動療法が奏功することがある。

緊張病は、昏迷・カタレプシー・ろう屈症・無言症・拒絶症・姿勢保持・わざとらしさ・常同症・外的刺激の影響によらない興奮・しかめ面・反響言語・反響動作のうち3つ以上が認められるもので、さまざまな身体疾患や精神疾患に併発しておこる。おもに入院による治療や支援の状態において診断される。

短期精神病性障害は、ストレス因により、統合失調症の陽性症状が1日以上1か月未満出現するもので、ストレス因の低減によりおさまることも多い。

双極性障害および関連障害群

双極性障害および気分循環性障害は、年齢を問わず発症する可能性が有る。双極性障害には、重度・中等度・軽度・部分寛解・完全寛解という重症度の段階がある。寛解とは病気の症状が軽減したり一見消滅した状態のことを指す。薬物療法のほか、認知行動療法が奏功することが有る。

双極1型障害には躁病エピソードを満たす時期と抑うつエピソードを満たす時期があり、双極2型障害には軽躁病エピソードを満たす時期と抑うつエピソードを満たす時期がある。躁病エピソードはしばしば入院が検討されるほどのものであるのに対し、軽躁病エピソードは日常生活に著しい支障をきたしたりはしない、という違いが有る。

気分循環性障害は諸エピソードの基準を満たさない程度の(軽)躁状態と抑うつ状態を2年以上(未成年者なら1年以上)繰り返すものである。持続性抑うつ障害では抑うつエピソードを満たす期間が存在していてもよいが、気分循環性障害では存在していてはいけない。(参考:それぞれのエピソードについて

抑うつ障害群

抑うつ障害群は、ノルアドレナリンやセロトニンの分泌異常により年齢を問わず発症する可能性が有る。

うつ病には、重度・中等度・軽度・部分寛解・完全寛解という重症度の段階および単一エピソードと反復エピソードの区別が有る。寛解とは病気の症状が軽減したり一見消滅した状態のことを指す。単一エピソードは、抑うつエピソードが一回あり、その後はエピソードの基準を満たさない期間に2か月以上なり、エピソードは再び現れないものである。反復エピソードは、エピソードの基準を満たす期間が複数あり、エピソード間には2か月以上の間欠期間があるものである。

持続性抑うつ障害は、症状の発症期間が2年以上のものである。双極性障害群に属する気分循環性障害が、抑うつ・(軽)躁病エピソードいずれの基準も満たさないのに対して、症状が起きている二年間にうつ病の基準も満たしていてもよいとされる。

重篤気分調整症は、慢性的に激しい易怒性を示すもので、(軽)躁病エピソードの易怒性と区別するために、うつ病および持続性抑うつ障害群に属している。また月経前の気分の落ち込みなどが社会生活に支障をきたすほどになった月経前不快気分障害もうつ病および持続性抑うつ障害群に属す。

(参考:それぞれのエピソードについて

雑感

気分循環性障害と持続性抑うつ障害のうち抑うつエピソードを満たさないケースの鑑別がとても難しそう。

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