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パネルディスカッションでモデレータをするときに読むといいかも

こんにちは、kzk_maedaです。AWS Community Builders Advent Calendar 2023の16日目担当します!

AWS Community Builderとしてコミュニティ活動をいくつか実施しています。
主な生息地域はAWS Startup Communityで、イベントを企画したり登壇したり、といったコミュニティ活動をしています。

ありがたいことに今年もいくつかのイベントを開催することができました。
また、今年はパネルディスカッション形式のイベントも何度か開催させていただき、その際にモデレータを務める機会もあったのですが、その際に試行錯誤したので、これを機に

  • 事前にどのような準備をして

  • どんなコミュニケーションを取って

  • 当日に何を考えながら進行したか

について書き残してみようと思います。
これからパネルディスカッションのモデレータをしようとしている人の参考になれば幸いです!

まずはパネルディスカッションについて知る

パネルディスカッションとは

パネルディスカッションが全く想像できない人はあまりいないと思うので、特徴的な部分だけ列挙します。

  • 特定のテーマに対して、複数の人が一挙に集まり、意見交換を行う形式のイベント

  • 同じテーマに対して複数の視点からの意見が出ることで多様な観点でテーマに対する解像度を上げることができる

  • LTイベントと異なり、インタラクティブなコミュニケーションを発信する

パネルディスカッションにおけるモデレータの重要性

通常のLTイベントの司会と異なり、上記の特徴を引き出すための立ち回りがモデレータには求められます。

例えば、

  • 議論を多角的に行えるよう、同じ話題に対して違う視点で話をしてくれそうな人に積極的に発話を促す

  • パネラーの議論が盛り上がっている時は、基本的に自由にさせつつ、テーマからの明らかな脱線やタイムマネジメントに気をつける

  • テーマに対する基本的な知識や洞察も必要だが、自分の意見や経験の話は最小限にとどめる

といったあたりが重要かなと。

なによりも、後述しますが、パネルディスカッションの空気はモデレータが要因となって良いようにも悪いようにも変わるので、とても重要な役回りであると考えています。

パネルディスカッションに備える

事前準備の重要性

上記の立ち回りを行うために、モデレータの事前準備は非常に重要です。
モデレータがどれだけ事前に準備できているかでパネルディスカッションは活発な議論の場になることも、お通夜のような地獄になることもありえます。

(後者のイベントを何度か目にしたことがあり、できればそのような状況は避けたいと思い、色々試行錯誤しているところです・・)

学びとなる意見や経験を提供してくれる、パネルディスカッションの主役はあくまでパネラーにあることは間違いないですが、場の空気を作るのはモデレータであるという意識で、必死で準備をしましょう。

事前準備の具体例

じゃあ具体的にどんな準備をすればいいのか?ここでは今年モデレータを務めたイベントを一つピックアップして、実際にどのような準備を行なったのかを開示します。

対象のイベントは、今年の2月に行なった、Startup CTO of the year 2022の振り返りイベントで、2022年のStartup CTO of the yearでピッチされた方に集まっていただき、イベント当日の裏話や当日はできなかった話をしていく、というものでした。

当日の動画はこちらに上がっているので、よければ見てください。

このイベントは企画時点でイベントの立て付けと参加者が決まっていたので、そこからテーマを考えていくという流れで準備をしていました。
逆にパネルディスカッションのテーマが決まってから登壇者を募る形式のものもあるかと思いますが、基本的な流れは参考になるかなと思います。

1, 登壇者に親和性の高いテーマを選定する

繰り返しになりますが、このイベントはすでに開催されていたStartup CTO of the year 2022の振り返りイベントなので、当日のベースとなるピッチセッションがあることが前提となります。

なので当然当日のピッチ資料は読み込み、動画も最低2周は見て内容を頭に叩き込みます。

その中で、話されている内容を一段抽象化して、どの登壇者がどのテーマについて話しているのか、についてマッピングしていきます。
今回のイベントは、スタートアップのCTOがそれぞれの会社について話すことはわかっているので、話されている内容を

  • 事業に関する話

  • 技術に関する話

  • 組織に関する話

に分け、共通項を探していくようにしました。

その結果、技術に重きを置いた方、組織に重きを置いた方、など様々な特色がありますが、特に

  • 特徴的に行なっている開発スタイルの工夫

  • 組織構築・コミュニケーションの工夫

について共通テーマがありそうで、同じテーマでも全くことなるアプローチをとっている会社もあったので、このテーマで行ってみよう、と決めました。

ちなみに、最初は「スタートアップに求められるCTOの役割」みたいなテーマもあるかな、と仮説を立てていたのですが、思ったよりそういった話への言及はなかったので、予備テーマ程度にしておくことにしました。

2, 企画概要とテーマの第一案を登壇者に伝え、FBをもらう

この段階で、登壇者の方にイベント全体の企画書を送ってFBがあれば回収するようにします。

企画書にはイベントの目的や参加者の想定ターゲットなどに加え、上で準備したパネルディスカッションの想定テーマについても送付します。

実際の企画書の一部

このイベントでは特にFBはなかったのですが、イベントによっては「そのテーマでは話せることがなさそうです」といったFBをもらえることもあるので、そうしたらテーマを練り直すか、あるいは話題ごとにメインで話してもらう人を分けるなどの調整を行います。

3, テーマに関連する登壇者の情報を集める

登壇者の方の公開情報もなるべく広く集めます。

1の準備と合わせてすることも多いですが、テーマ選定の後にやると、そのテーマに関連した公開情報を能動的に探しにいくことができるので、あえてステップを分けています。

経歴や現在の役割はもちろんですが、例えば今回のケースだと、開発スタイルについてその会社が発信しているブログがあれば読んでみたり、知人がいたら話を聞いてみたりすることもやります。

正直、ここが一番時間がかかるステップですが、パネルディスカッションを効果的に実行するためには必須のステップだと思っているので、力を抜かない方がいいかと思います。

(実際、ここで読んだブログの内容を覚えていたことで、当日リアーキテクチャの話になった時、別の会社が公開していたリアーキテクチャの話題を振って議論を深めることができました。やっていて損はありません。)

4, 当日のプロットを作成する

ここまで準備した内容をまとめてプロットを作成します。
プロットは以下のように作成します。

  • テーマ内容

    • テーマについての導入、一言解説

    • 最初に誰に振るか、どういう文脈で振るかを決める

      • ピッチイベントの資料や発言から引用する

    • 議論を広げるヒントをメモ

      • xxx社もピッチイベントで同じテーマに言及していた

        • しかも真逆のアプローチを取っていた

      • 同じテーマでxxx社がブログを書いていた

実際にこのときに作成したプロットの一部です(情報が古くなっている可能性があるので一応社名は伏せていますが、基本的に上のYoutubeで話しているような内容です)。

プロットの一部

こうしておくと、テーマごとにどのように話題を導入するかも事前にイメージしておきやすいし、誰に振れば議論が引き出せそうかもシミュレーションしておきやすいかなと思います。

また、忘れがちなとても大事な準備があります。

社名と登壇社名は正確に発音できるよう、事前に確認しておきましょう。

当日スムーズに発話を促すのにとても重要な要素なので、頭に叩き込んでおいてください。

パネルディスカッションに臨む

当日の心構え

しつこいですが、パネルディスカッションの空気をつくるのはモデレータなので、ここまで準備してきたことがしっかり出せるよう、脳内メモリの引き出しやすい場所に情報を置き直しておきましょう。

タイムマネジメント

大体、各テーマにどれくらいの時間配分で進めるかはプロット作成時に作っておきますが、あまり厳密な時間管理をすると逆に空気が冷めてしまうので、ゆるくやりましょう。

個人的なおすすめとしては、もし議論が白熱してしまったときに捨ててもいい予備テーマを準備しておくのがいいと思います。このイベントでも、最初の2テーマが盛り上がったので、用意していた3つめのテーマは当日捨てることにしました。

パネラーの発話バランス

誰にどの話題でいつ発話してもらったかはできるだけ頭にいれておくようにしましょう。
この際、パネラーがPCでカタカタメモしていると興醒めなので、頭に入れておく自信がなければ、他の運営メンバーに頼んでオンラインメモに記録していってもらうのがいいかと思います。

そして、話を振る際には発話量が低い人にも積極的に話を振るようにします。

対話を引き出す質問

上の続きですが、発話量が低い人は、そもそもその話題について話すことがなかったり、あるいは他の人と比べて積極的に話せないタイプだったりする場合があり、そういった場合に抽象的な質問を投げかけると困ってしまう可能性があります。

そういった場合、僕は質問に限定をつけて聞いてみるようにしています。
「xxxについて、何か気をつけていることを一つだけ挙げるとしたら?」とか、「xxxの立場にご自身が立たれたらどのような判断をしますか?」とか。

あるいは、プロット作成時に準備していた、敢えて逆のアプローチを取っている人がいればその人に積極的に話題を振るようにします。
「xxxさんは以前拝見したブログで異なるアプローチを取っていたかと思いますが、ご説明いただけますか?」とか。

別にこれによって喧嘩が始まることはないと思いますが、エディタ戦争みたいなセンシティブなものは敢えて対立を煽らない、みたいな線引きも必要だと思います(リスクがあると思ったら事前コミュニケーションの段階で確認しておきましょう)。

参加者のエンゲージメント

オフラインイベントの場合、参加者の方のエンゲージメント、一体感も重要です。

最近一般的になっているのはSlidoを使ったインタラクティブなディスカッションですね。このイベントではない & 僕がモデレータしたものではないのですが、以下のイベントでパネルディスカッションを実施した際にはSlidoを使って参加者参加型のパネルディスカッションを実施しました。

Slidoを使わなくても、参加者に挙手を求めたり、あとは話をする際になるべく参加者の方を向くなどして、モデレータ・パネラー・参加者の三者でイベントをつくっていくんだ、という気持ちで臨むのがいいかなと思います。

楽しむ!!

本当にしつこいようですが、パネルディスカッションの空気はモデレータがつくっていくものだと思います。

なので、モデレータが「プロットどうだったっけ・・」「誰がこれまで話してたっけ・・」みたいなことばかりに頭を取られて必死な様子になっていたり、進行ばかり気にしてパネラーの話についていけてなかったりすると、それだけで場は相当白けてしまいます。

なので、準備はしっかりした上で、当日は一緒に議論を楽しめるよう余裕をもって臨むようにしましょう!

まとめ

今年何度かパネルディスカッションのモデレータをする機会があったので、その際の試行錯誤をまとめてみました。(AWS Community Builderのadvent calendarだったけどあんま関係なかったな)

自分自身モデレータとしてまだまだ進化していきたいと思っているし、世の中のつよつよモデレータの方々の知見も色々聞いてみたいところです。

コメント等あれば是非!!! X(Twitter)に大体住んでます

https://twitter.com/kzk_maeda


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