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五輪期間中に複数名から有休申請があったら?

いつもと違う有給申請

待ちに待った4年に1度のオリンピックでかつ東京開催。事実上、15-64歳の生産年齢人口の中に含まれる就労者にとっては「最後の自国開催」であろう。また企業によっては、激戦の抽選を運よく勝ち抜き、プレミア級のチケットを獲得した労働者も複数名存在することもあり得る。話は見えてきたであろうが、当然、割合的には平日開催の方が多いことになる。そこでチケットを獲得した労働者は「背水の陣で有給申請」することになる。

時季変更権は行使できる?

初めに法律条文を確認したい。労基法39条5項 使用者は有休休暇を労働者の「請求する時季に与えなければならない」。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが「事業の正常な運営を妨げる」場合においては、他の時季にこれを与えることができる。また、判例及び通達を咀嚼すると有給休暇は法律上当然に発生し、「請求」は「時期を指定する」という意味であり、使用者の承認は不要である。法律条文をそのまま読み込むと圧倒的に使用者不利の構図は否めない。それでは企業運営が立ち行かないとの見地から「時季変更権」が存在する。言わずもがな同権利の濫用は最高裁まで争うケースもあり、どのような論点を考慮要件として行使すべきかは以下の通りと考える。

①企業の規模及び業務内容、②(有休申請した者の)職務内容、③繁忙度、④代替要員の確保状況、⑤休暇期間の長短

①~⑤を企業として合理的かつ個別具体的に説明できるのであれば、時季変更権の権利濫用との判断は退けられると考える。

事前法務によるリスクヘッジ

近年はネット社会の発達により労働法をスマホ1台で簡単に学べることができ、ゆえに労働者も一定以上の知識を蓄えている。ここで有名な最高裁判例を紹介したい。昭和48年3月2日最高裁判・白石営林署事件では、有給休暇の利用目的は問われない。休暇をどのように利用するかについて労働者は使用者の勧奨を許さない。(自社のストライキに参加のような場合は例外)しかし、背に腹はかえられない状況になる前に前述の最高裁判例をも考慮しつつも状況を説明し、「該当者がどの程度いるのか」を把握し、他部署から代替要員を確保できるのか等も含めて計画的な運用で乗り切ることが適切と考える。今回の有休取得を却下することは将来にむかって大きなしこりを残すことも容易に想像でき、いわば会社としての力量を試されているとも言える。自社のリスク管理はどうだろうか?


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