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「嫁が陰謀論にハマりまともな会話が成立しなくなった」




嫁が陰謀論にハマり、まともな会話が成立しなくなった。と嘆いていたのは、新宿在住の会社員Aさん。Aさんは15年前に元嫁のBさんと結婚し、2人の子宝に恵まれた。離婚後、親権は母方に行ったので、持ち家だった新宿の家はBさんと子供たちが引き続き住むことになった。養育費の支払いも含めると、離婚してもしなくても変わらないか、離婚後のほうが金銭的な負担は大きいようだ。

Bさんは熱心な反ワクチン主義者で、ノリのよさがありつつもクロちゃんに生理的不快感を覚えるなど、やや過剰に反応する節がある人だ。よく飲むれると人気の乳製品にも「あれは果糖という体に悪い物質が入っていて」、飛行機雲にも「今日もケムトレイル、体に悪い」などとツッコミを入れる生粋のネットに脳みそを侵されたタイプだ。

なぜ人は陰謀論にハマるのか、Aさんは考えたが、あまりに身近だった人が自分のもとを去り(正確には耐えられなくなった)、冷静に考えるには時間が必要だった。Bさんは純粋で明るく、素敵な人だったはずだ。Aさんは長い間、Bさんの思想に疑問を抱いていた。露骨に否定こそしなかったが、Bさんからしたら、それとなく馴染み出るAさんの否定的な態度に寂しさを感じていた。

元夫であるAさんは、離れてみて気が付いたBさんの感情について考えた。Bさんは若くして結婚し、子供を育てているうちに、自分のアイデンティティの喪失を覚えたのかもしれない。心身疾患になるといったものではなく、一度きりの人生におけるポジティブな未来が描けなくなってしまったのかもしれない。日常を受け入れることを惨めだと感じたのかもしれない。生粋のパンク精神と言えるかもしれないが、コロナ禍がBさんの思想にブーストをかけた。

Aさんからしたら、コロナ禍は不安の入り混じる時期だった。仕事が減り、このまま家族を養っていけるのかという漠然とした不安。その不安は守るべき家族にも伝わってしまい、崩れて行く家庭。もともと「支え合う」という感覚が両者ともに乏しかったという結果論は置いといて、なんとかならなかったのか。悩みに悩んだが、離婚は必然だったのかもしれない。Bさんは今、何をしているだろうか。

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