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私的デジタル教材開発史(3)1989年情報基礎とFindOut、ハイパーキューブ

(タイトル写真出典 福武書店(現ベネッセ)の第2回 find out 大賞。 / Asahi パソコン 1991.12.1 http://twitpic.com/dwdmm9)

1989年(平成元年)に告示された学習指導要領(1993年-平成5年4月実施)
に初めてコンピュータが明記され、技術・家庭科に情報基礎領域が登場した。

1989年告示技術・家庭科 情報基礎領域 学習指導要領

1 目標 コンピュータの操作等を通して、その役割と機能について理解させ、情報を適切に活用する基礎的な能力を養う。
2 内容
(1)コンピュータシステムの基本的な構成と各部の機能を知ること。ソフトウェアの機能を知ること。
  ★入力、演算、制御、記憶及び出力を取り上げるものとする。
(2)コンピュータの基本操作ができること。プログラムの機能を知り、簡単なプログラムの作成ができること。
(3)ソフトウェアを用いて、情報を活用することができること。コンピュータの利用分野を知ること。
  ★日本語ワードプロセッサ、データベース、表計算、図形処理などのソフトウェアを取り上げ、情報の選択、整理、処理、表現などを行わせるものとする。
(4)日常生活や産業の中で情報やコンピュータが果たしている役割と影響について考えさせる。

情報基礎対応のアプリケーションの登場

告示に反応して、教材各社は、ワードプロセッサ、データベース、表計算、図形処理のアプリケーションの開発・販売に取り組んだ。
なかでも力が入っていたのは福武書店のFindOutであったが、市場を制したのはスズキ教育ソフトのハイパーキューブだった。

福武書店のFindOut

FindOutについて、当時の福武書店岡崎弘美氏のレポート
第6回 日本計算機統計学会 シンポジゥム 199210「FindOut」
「findout」

■findoutは様々な教育や学習の場面に必要な機能を考案・厳選し、教育用プログラム言語Lo go(ロゴ)で統合した教育用パソコンソフトです。小中学校をはじめとする教育現場で、先生と児童・生徒が様々な形で活用することができます。
■主な機能としては、ワープロ、グラフィックス、データベースというパソコンソフトの代表的な機能のほか、ビデオなどの外部機器を制御する機能も整備されており、findout一本でパソコンの基本機能や操 作方法を学ぶことができ、いろいろな教科の学習も効果的におこなうことができます。」

福武書店はパソコン教室を各地に展開して女性インストラクターを配置して普及に努めていた。Logoをベースにした統合型のアプリケーションで、とても敷居の高いソフトだったと記憶している。

現在聖徳学園大学教授の玉置崇氏の当時の実践記録がある。
活用事例

スズキ教育ソフトのハイパーキューブ

ハイパーキューブとは何か?
ホリタン(堀田龍也東北大学教授)のhorilab.jpに当時の社長横幕氏の講演会の様子が掲載されている。
情報学特別講義I — 2003年7月17日

■いわゆる,初めて義務教育にコンピュータが位置づけされて,情報教育の指針が作られた中で生まれてきたソフト。このソフトを中心にして,考え方などを情報化の流れといっしょに話していきたい。新しい会社で新しい商品を生み出していく。

■そういったことで,まだたくさんの隠し機能もあるんです。Windowsでも統合できるようになったのは最近。それを平成元年に発売しているわけです。今のWindowsと同じ見た目と,操作。そして1枚のFDに入れてある。再起動の必要がない。当時の主力ビジネスソフトとデータの互換性をもたせて,当社のソフト同士でデータの互換性を保っていた。当時は中学校に20台ずつそろえるときに,ワープロやりなさい,表計算やりなさいと。4大ソフトでも40万円はしていた。うちは4つそろって\29,800だった。価格破壊です。

■これも日本で初めて。学年別辞書。学校で使う日本語変換ソフトは,学年別に漢字を使う割合は違う。低学年では読めるように,高学年ではきちんと漢字になるように。シェアというのは,最近はいろんな会社のソフトを使っているので,私どものソフトが入っている学校の割合。もちろん,うちのソフトだけという意味ではない。我が社のソフトは60%くらいの学校にご採用いただいている。

FindOutとは異なり、ハイパーキューブはワープロ、お絵かき、表計算、データベースがそれぞれフロッピーディスク1枚ずつに収まっていた。
知り合いの中学校数学の先生が、ワープロのソフトが使いやすいのでいつも使っていますと仰っていたことを思い出します。

情報基礎の内容の変遷と指導時間

平成元年のころはまだコンピュータの整備中だったので、情報基礎は選択領域だった。

2017年(平成29年)告示学習指導要領

D 情報の技術
⑴ア 情報の表現,記録,計算,通信の特性等の原理・法則と,情報のデジタ ル化や処理の自動化,システム化,情報セキュリティ等に関わる基礎的な 技術の仕組み及び情報モラルの必要性について理解すること。
 イ 技術に込められた問題解決の工夫について考えること。

⑵ア 情報通信ネットワークの構成と,情報を利用するための基本的な仕組み を理解し,安全・適切なプログラムの制作,動作の確認及びデバッグ等が できること。
 イ 問題を見いだして課題を設定し,使用するメディアを複合する方法とそ の効果的な利用方法等を構想して情報処理の手順を具体化するとともに, 制作の過程や結果の評価,改善及び修正について考えること。

⑶ア 計測・制御システムの仕組みを理解し,安全・適切なプログラムの制作, 動作の確認及びデバッグ等ができること。
 イ 問題を見いだして課題を設定し,入出力されるデータの流れを元に計 測・制御システムを構想して情報処理の手順を具体化するとともに,制作 の過程や結果の評価,改善及び修正について考えること。

⑷ア 生活や社会,環境との関わりを踏まえて,技術の概念を理解すること。
 イ 技術を評価し,適切な選択と管理・運用の在り方や,新たな発想に基づ く改良と応用について考えること。

30年を経て、情報基礎の内容はこれだけ盛りだくさんになったのに指導時間の配当は平成元年当時と変わらない。
指導時間数だけで評価するのはいけないかもしれないが、学習指導要領はやってる感を出すだけで、これが日本の情報化の現実で、中学校が情報教育のエアポケットといわれる所以かと思う。

FindOutの復活を望む

find out : 福武書店 (現・ベネッセコーポレーション) の教育用開発環境 (FindOut - MemoWiki v5)
■ACCESS社が開発したLOGOの性能は優れたものだったが、教育用としては、そこそこ使われたものの、パソコン用言語として標準的に使われるところまではいかなかった。プロダクトとしての性能が良いかどうかと、商売として売れるかどうかは違うということの最初の学習であった。
■教育用としては、1988年に福武書店(現ベネッセコーポレーション)と共同開発した教材作成用ソフトウェアパッケージ「Find Out」の中心的な言語となった。1996年には、イージーインタネット協会、FAイントラネット推進準備協会の設立にACCESS社として参画し、ベネッセコーポレーション社と共同で、教育用マルチメディア・オーサリング・システム「マルチブック」を開発したが、その中心的な言語ともなった。

FindOutは30年早かったのだろうか、マルチメディアオーサリング、ネットワークへの対応、Logoプログラミング、すべて、今、情報教育に必要な機能が揃っている。
情報基礎に十分な時間を配当し、FindOutが使える環境が整備されないだろうか。・・・・GIGA端末で使えるようにならないかな

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