見出し画像

車というのは新聞配達用自転車だった

上野から山手線に乗り大塚で下車、公衆電話から店に連絡した。「すぐ車で行きます」という元気な声。10分足らずで迎えに来た。車というのは新聞配達用の自転車。先輩は二浪決定と笑った。

帰りは自転車を押しながら2人で店に向かう。学費は自分で払うということで自分で新聞販売店を探していた。店員は7人で大学生は1人だけ。専業が1人、休学中1人、あとは浪人生である。

文京区大塚、東京での新生活が始まった。大塚公園近くの銭湯に通い、夜公園のベンチで涼んでいると、職務質問をよく受けた。警察官は高校の先輩で「真面目にやれ。頑張れ」と激励される。

あれから60年近く経つ。店は空き家のままだ。公園近くにあった小さな喫茶店はまだあるのだろうか。涼しくなったらぶらり大塚へ。20年前に先輩と行って以来となる。営業中ならこの上ない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?