レディオヘッドの罪

ロミオ+ジュリエットという映画がある。
シェイクスピアの戯曲で舞台や映画など数多くの作品がある。
その作品群の一つ、バズ・ラーマン監督製の映画が公開されてたときの話。
映画はレオナルド・ディカプリオとクレアディンズ主演で、舞台を現代に置き換えられた設定になっている。
しかしセリフ自体はほとんど変えられてないので、その洗練された言葉の数々は今でも新鮮、当時初めてロミオとジュリエットに触れた僕はすごく感動した。
また若者が見てもスタイリッシュな映像と売れに売れたサントラが物語るとおり、音楽もどれも捨て曲ない出来栄えであり、後に日本でもタイタニックでスーパーブレイクするディカプリオと初々しいクレアディンズ、ふたりとも美しいの一言である。

さて、
映画館はまだ席同士の段差がほぼ無く、前に人が座ると見えないことがあった
座席も酷く古くて座り心地も悪い、床は少しベタベタしてて歩くとジャッ!と音がした
スクリーンは古くて、むき出しの年代物の大きなスピーカーが左右に鎮座している。
そして何より座席の間隔がすごく狭くて、座席前でですれ違うのはまず無理だった。
でも当時はそんな映画館ばっかりだったし、それが当たり前の時代である。
映画の公開から結構経ったというのもあり、座席は空いていたがガラガラというわけでもなく、客の入りはなかなかあった。
当時ディカプリオがグイグイ来てる時期で、客層は若い女性が多く、僕の隣には誰も座らなかったものの、列の両端には女性が座っていた。
これから2時間かけて…とナレーションがあってから、本当に2時間後、あの悲劇的なエンディングを映画は迎えた。
ああ、いい映画だったなと思い、スタッフロールが始まって劇場から出ようと思った(当時、スタッフロールを最後まで見る人は半分くらい)のだが、
列の両端の女性がしくしくと泣いている。
若い彼女にとってのその悲劇は心を貫いたのだろう。
さて、こんなに泣いてる女性の前を「はいはいごめんよ」と退かして席列から出ることはできないな、と判断して僕はまた席に座った。
スタッフロールは呟くように歌う洋楽が流れている。
ああ暗い曲だなと聴いているとそれはなかなかいい。和訳の言葉一つ一つも映画をよく表している。
曲は呟くようにしばらく同じトーンがつづいたが、音楽が少し盛り上がったころ、一気にギアがはいったのが、当初の呟くような歌い方から、絶叫に近い歌声に変わり、その迫力で私はぴりりと鳥肌を立てさせた。
うわ、いい曲だなと思って、両端の女の子をみるとそのサビで、もうしくしくからうぉぉんと号泣に変わった。
その後曲が変わったものの、両端の女の子は止まらない泣きっぷりで、劇場が明るくなっても顔がぐちゃぐちゃなのか席を立つことができなかった。
この状況でもやはり席を退かして座列から出るのは無理。
仕方なく短い足を駆使して席を乗り越えて、転けそうになりながらなんとか座列から離れる…ことが…あ、傘忘れた。
結局彼女たちがなんとか化粧を抑えて席を立つまで、ちょっと離れたところに座って傘を回収するのに結構時間が掛かりました、てお話。

ちなみに後で調べてその号泣曲を調べたら
レディオヘッドのイグジットミュージック(フォーザフィルム)ていう曲でした。

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