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ある男のはなし

この物語はフィクションです。実在の団体、人物、事件とは一切の関係がありません。
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一、    ある男の話


 風鈴はクラゲの骨でできているのだ、と私に噓を教えた男が、死んだ。

 その男は筋金入りの海好きで、住まいは海の前の古い日本家屋だった。夏は海から立ち上る湿気と気温で腐敗しそうなくらい暑かった。台風など来ようものなら蒸し暑さとバタバタと揺れる雨戸の音でとても眠れたものではなかった。かといって冬は冬で隙間風が海から吹き込み、しぶいた波が庭で凍り付きただでさえ古いオンボロの軽トラにあっさりとどめを刺した。

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