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ビッグになりたかった男

※このnoteの内容は全てフィクションです

どうも、こんにちは

 最近とても興味深いものを買ったので、こういうブログという形で記録を残したいと思います。最後まで読んでいただけたら幸いです。

 私は、毎日朝同じ時間に起きて、同じ時刻に発車する電車に揺られ、同じような業務を淡々とこなし、また電車に乗り、家に帰って寝る。本当にこれっぽっちも変わり映えしない日常にうんざりしています。

 ただ、一つだけ楽しい繰り返しもありまして、帰り道に寄るコンビニで買うカップラーメンと缶ビール、これが最高なんですよ。1日のご褒美といいますか、自分の好きなことにお金を使えるのが楽しいんです。
 毎日同じ時間に同じコンビニに通ってると、店員さんと、会話さえほとんどなかったですけど、なんとなく顔見知りになっていきました。その中で勧められたのがdポイントカードでした。0:00〜15:59の間は100円につき1ポイント、16:00〜23:59の間は200円につき1ポイント、1ポイント1円から使えるdポイントがたまるんですね!これは非常にお得です。なんでもっと早くからポイントカード作らなかったんだろうと大変後悔しています笑
 しかもこのdポイントはコンビニやスーパーだけでなく、メルカリでの支払いやドコモの携帯電話の料金の支払いにあてることもできちゃうんですって!こんな便利なサービス始めない理由がありませんね!!!

 というわけで僕がコツコツ貯めたポイントがかなりの額貯まったので、私はメルカリとかいうなんか物が買えるやつでポイントを使うことにしたんです。

 前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。

 せっかくだし普段自分からお金出して買わないものを購入しようと思い、新着順のところから商品を探してたんです。
 普通に洋服や靴があったり、珍しいもので言えば宝石のエメラルドがあったり。いろんなものが出品されてるな〜と思いつつ見ていると、とあるものが目にとまったんです。

 それがこれです。

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 一冊のノートなんですけど、説明欄のところに

「倉庫を整理していたら出てきたものです。内容が気持ち悪く、捨てるのも少し怖かったので出品します」

って書いてあって。

 これ、めちゃくちゃ気持ち悪くないですか?

 ただ、300円だっていうもんですから…

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買っちゃいました。

 外見は学生が使う普通のノートですね。あのグラフとかが書きやすい小さい点がたくさん入ってるやつ。

 で、肝心の中身なんですけど、これがまた気持ちの悪いものだったのでところどころ抜粋しながら内容を要約して紹介していきたいと思います。

 まず、この「手記」というノートを作成したのはとある引っ越し業者の社員さんのようです。仮にAMという引っ越し会社で働くYさんとします。
 このYさんは非常に真面目に働いていたのですが、思うような成果が得られず、同僚に先を越されてしまった、そんな悩みを毎日淡々とこのノートに綴っていました。

 以下が本文です。(プライバシー保護の観点から名前は伏せておきますね)

4/3
 今日からAMで正社員として働くことになった。今まで着実に真面目にアルバイトをこなしてきたことがやっと評価されたんだ。正社員になったからには誰よりも真面目に働いて、誰よりも早くビッグになってやるんだ。誰にも負けないビッグな男に。


6/7
 今日は同僚のAさん(仮名)と初めてサシで飲んだ。Aさんは今年で39歳になるらしいが入社は俺と同じで今年。それまでは格闘家をやっていて、一昨年引退し、暇になって仕事を始めた。Aさんは同僚なんだしタメ口でいいよ、と言ってくれたけど、さすがに二周りも年上の人にタメ口は厳しい。
 なんとか敬語を使うことに納得してくれたが、しぶしぶといった感じで寂しそうな顔をしていた。あんな顔をされちゃうと逆に申し訳ないし、ちょっとしたらタメ口使い始めようかな。


8/21
 今日はH(下の名前の呼び捨て。多分Aさんのことだと思われる)の家族とバーベキューをした。Hの奥さんと娘さんとは初対面だったけど、Hが家で俺のことをいろいろ話していたみたいでとても親切にしてもらった。家族の楽しみに俺なんかが混じっていいものかと思ってたけど、Hの家族は俺を家族の一員として接してくれた。本当に楽しい1日だった。


と、ここまでは仕事への前向きな話題や、Aさんとの思い出のようなことが書かれていました。なんら不思議なところはないし、こんなものをどうして捨てることができなかったんだろうと私も不思議に思いました。
 が、9/13から突然、Yさんに変化が見られ始めました。


9/13
 おかしい。おかしいおかしいおかしいおかしい。どうして?どうして俺じゃない?なんで?
 真面目に、ただひたすらに真面目に仕事をしてきたはずだろ?俺は。他の誰よりも考え、行動し、お客さんのために尽くしてきた、そうだろ?
 俺とあの人になんの差があったんだよ。
 どうして。


9/27
 ダメだ。あの人だけがどんどんビッグになっていっている。おかしい。俺はあの人の何倍も努力してきたんだ。そうだろ?誰の目にも明らかだ。同期の中で、会社の中で一番真面目に頑張ってきたのは俺のはずなんだよ。
 何が足りない。俺には何が足りなかったんだ。これから何をする?何をする、ではないんだ。なんでもしなくちゃ。
 ビッグになるために。

(ここだけ日付が飛び、9/27の次のページが12/5になっていました)

12/5
 記録をつけるのを忘れていました。何日も何日も寝ずに、ただひたすらに真面目にやってきたのですが、僕はビッグにはなれませんでした。
 才能がなかったんです。きっと。
 あいつだけビッグになった。あいつにはビッグになる才能があったんです。俺にも才能があれば。才能がないからこんなにちっぽけなんです。
 というかあいつさえいなけりゃ俺が一番ビッグなのに。


4/9
 はっきりと結果が出た。
 俺は190cm、Hは31.8m。
 完敗だった。
 俺はこんなにも真面目にやってきたのに、才能がないばかりに190cmまでしかビッグになれなかった。
 Hはとぼけてやがった。「どうしてそんなに大きくなっちゃったんですか?」って聞かれた時も「なんでやろなぁ」と。そしたら他の若い子は言うんだ。「真面目にやってきたからよ」って。
 違う。あいつがあそこまでビッグになったのは決して真面目にやってきたからではない。ただ才能があっただけだ。俺の方が何倍も真面目にやってきた。
 あいつもわかってるはずだ。なぜ自分がここまでビッグになれたのかを。そのうえでああやってとぼけてやがるんだ。ふざけるな。
 あんなやつ死ねばいいんだ。あんな才能に胡座をかき、ひたすら真面目にやってきた者のことを下に見るやつなんか。
 死ねばいいんだ死ねばいいんだ死ねばいいんだ死ねばいいんだ死ねばいいんだ死ねばいいんだ死ねばいいんだ死ねばいいんだ死ねばいいんだ死ねばいいんだ死ねばいいんだ死ねばいいんだ死ねばいいんだ死ねばいいんだ死ねばいいんだ死ねばいいんだ死ねばいいんだ死ねばいいんだ死ねばいいんだ死ねばいいんだ……(以下3ページに渡って「死ねばいいんだ」のみが書かれていました)


 そのあとのページにはAさんを殺すための計画が事細かに書かれていました。
 しかし、その計画のあとのページには何も書かれておらず、ただ白紙が続くだけでした。

 はたしてその計画は成功したのか、私はとても気になってしまいました。

 というわけでこのノートに出てくる引っ越し会社の名前とYさんとAさんの名前で検索してみると、いくつかのニュースがヒットしました。

そのうちの一つがこれです

 『一般人を踏み殺した大男に無罪判決』
 4/23、東京都世田谷区で起きた身長31.8mの大男が一般人を踏み殺した事件の判決が今日午後2時18分に下された。判決は無罪。理由として、被害者Yさんには容疑者を殺害する目的で近づき、殺されることを恐れた容疑者が逃げようとしたところ踏んでしまったため、正当防衛が適用されて至極当然である、といったものであり、今後検察側も控訴する予定はないという。

 つまり、YさんはAさんへの恨みが溜まりに溜まった結果、殺す計画を立て、犯行に及ぼうとしたところ返り討ちに遭ってしまったということでした。
 非常に悲しいお話でした。

 確かにこんな気持ちの悪いノート、手元に置いておきたくないですよね…
 かといって捨てるのもまた躊躇われますね。

 でも、ということはこのノートももとは警察が押収した物だったんですかね。多分Aさんの無実が決まったのもこの計画書が証拠になったでしょうし、なんでこんな物が関係ない倉庫なんかにおいてあったんでしょう。

 そこんところはまだはっきりとせず釈然としませんが、これで私の不思議なお買い物の話は終わりです。ここまで読んでいただきありがとうございました。


<追記>
 ブログを書いている時には気づかなかったのですが、片付けようと思い持ち上げた瞬間にこんなことが書いてある紙がノートの隙間から落ちてきました。

このノートを購入された方へ
このノートは呪いのノートです。
このノートの今までの持ち主は全員死んでいます。
死因は皆同じ、牛乳を永遠に飲み続け、そのまま窒息死です。
詳しいことは「牛乳 怪死事件」と調べてもらえばわかります。
これは憶測に過ぎませんが、このノートの元の持ち主・Yは背を伸ばすために牛乳を飲み続けており、その強い思いが呪いとなりこのノートに残ってしまっているのだと思われます。
これを書いている今、私は牛乳が飲みたくて仕方なくなってきています。
私ももうすぐ死ぬのでしょう。
どうにかしてこの連鎖を止めてください。お願いします。

 なんと私は死んでしまうらしいです。

 悪い冗談だと思い、インターネットで「牛乳 怪死事件」と調べてみましたが、残念ながら事実のようです。

 とりあえず牛乳の存在しない山奥へ避難したいと思います。新たな被害者を生み出さないためにこのノートと一緒に。

 半年後、まだ生きていたらブログを更新します。

 それまで、待っていてください。

2020/1/6 

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