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横隔膜の解剖と機能を徹底解説! 〜学生・新人理学療法士、作業療法士のためのスキルアップガイド〜

こんにちは。理学療法士の内川です。今回は、呼吸と体幹安定性に欠かせない横隔膜について、その重要性から機能訓練まで詳しく解説します。

横隔膜:呼吸と体幹安定性の要

皆さんは横隔膜についてどのくらいご存じでしょうか? 横隔膜は呼吸において最も重要な筋肉の一つであり、体幹の安定性や内臓の支持にも関与しています。では、横隔膜の機能不全が生じるとどのような障害が起きるか、肋骨から起始しているため肋骨が動かなくなるとどうなるのか知っていますか?

私自身、かつては横隔膜=呼吸と単純に考えていましたが、学びを深めるにつれ、呼吸のみならず体幹の安定性にも重要な役割を果たすことを知りました。このコラムでは、横隔膜の解剖、評価、機能訓練、機能低下の影響について詳しく解説します。理学療法士や医療従事者の方々はもちろん、健康に興味がある一般の方々にも役立つ情報をお届けします。

目次

  1. 横隔膜の解剖と作用

  2. 横隔膜の評価

  3. 横隔膜の機能訓練

  4. 機能低下と影響

  5. 臨床ちょこっとメモ

  6. まとめ

  7. 参考文献

1. 横隔膜の解剖と作用

  • 起始:胸骨の剣状突起、第6-12肋骨、腰椎の椎体前面

  • 停止:腱中心(中央腱)

  • 支配神経:横隔神経(C3-C5)

主な作用:

  • 呼吸の主力筋:収縮により胸腔内の容積が増加し、吸気が行われる

  • 内臓の支持と安定

  • 体幹の安定化

横隔膜は胸郭と腹腔の間に位置し、ドーム状の形をしています。呼吸の際には、この筋肉が収縮し、胸腔内の容積を増加させて空気を肺に取り込む役割を果たします。これにより、酸素の取り入れと二酸化炭素の排出が効率的に行われます。

2. 横隔膜の評価

横隔膜の機能テスト:胸郭拡張テスト

(本来は肋椎関節や肋骨自体の可動性を調べるテストです)

  1. 座位を取ってもらう

  2. 第10肋骨にてメジャーを巻く

  3. 最大吸気、最大呼気での差を計測する

判定:差が3cm未満の場合は肋椎関節や脊柱、横隔膜の働きが悪くなっています。

3. 横隔膜の機能訓練

腹式呼吸訓練

  1. 患者を仰臥位にし、膝を軽く曲げさせます。

  2. 手を肋骨下部に置き、ゆっくりと鼻から息を吸い込みます。

  3. 吸気時に腹部が膨らむのを感じ、口からゆっくりと息を吐きます。

吸気に対して呼気を長く持つようにして行う。

4. 機能低下と影響

  • 横隔膜の機能低下が生じると呼吸補助筋の過剰収縮や上位胸郭での呼吸が優位となりやすいです。

  • 横隔膜の機能低下が生じると肋骨の拡張(リブフレア)が生じやすいです。

  • 横隔膜は腹横筋と連結を持っているため、横隔膜の機能低下は、体幹の安定性の欠如を引き起こします。

5. 臨床ちょこっとメモ

  • 横隔膜がしっかりと動くことで肋骨や脊柱の動きもでるため、自律神経にも関与してきます

  • 横隔膜が働くことで、内臓のマッサージ効果が得られ、消化機能の改善にも寄与します。また、呼吸筋のトレーニングは、ストレス軽減やリラクゼーション効果も期待できるため、患者の全体的な健康状態の向上にもつながります。

  • 胸郭拡張テストは肋椎関節の動きと胸椎の動きも関与します。範囲が狭い場合は脊柱の問題なのか、肋椎関節の問題なのか、横隔膜の収縮不全なのかは分けて考えるようにしましょう。

6. まとめ

1. 横隔膜の重要性と多面的機能:

横隔膜は呼吸の主力筋であるだけでなく、体幹の安定性や内臓の支持にも重要な役割を果たしています。その機能は単に呼吸だけでなく、他の筋肉との相互作用を通じて体全体の健康に影響を与えます。理学療法士として、横隔膜の解剖学的構造や機能を深く理解することが、効果的なリハビリテーションを行う上で不可欠です。

2. 横隔膜の評価と機能訓練:

横隔膜の機能を評価するには、胸郭拡張テストなどが用いられます。機能訓練には腹式呼吸訓練が効果的であり、患者の姿勢や呼吸のパターンに注意を払いながら実施します。これらの評価と訓練を通じて、横隔膜の機能を改善し、呼吸効率を高めることができます。

3. 横隔膜機能低下の影響と臨床的考慮事項:

横隔膜の機能低下は、呼吸補助筋の過剰収縮、上位胸郭での呼吸優位、肋骨の拡張(リブフレア)、体幹の安定性の欠如などを引き起こす可能性があります。また、横隔膜の適切な機能は自律神経系や消化機能にも影響を与えるため、患者の全体的な健康状態の改善にも寄与します。臨床現場では、横隔膜の機能だけでなく、関連する構造(肋椎関節、脊柱など)の問題も考慮に入れる必要があります。

今回記載したものはあくまでも筋単体のことです。実際の治療においては周囲にいくつもの筋肉が存在しており、深さも考えなければなりません。周囲に何があるかイメージできていますか?不安な方はぜひ一緒に勉強しませんか?

詳細な解剖学的イメージを学ぶ

7. 参考文献

  • 脊柱理学療法マネジメント

  • プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論運動器系 第3版

  • 筋骨格系のキネシオロジー原著第2版

  • 基礎運動学 第6版補訂

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