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トイレ動作に必要な認知機能、下衣の着脱動作に着目して考える 〜トイレ動作の動作分析から情報共有までの流れを学ぶ〜


皆さんこんにちは。作業療法士の内山です。前回は起立・立位保持動作に必要な認知機能について解説しました。今回は、下衣の着脱動作に必要な認知機能について考えていきたいと思います。
前回の内容はこちら>>>トイレ動作に必要な認知機能:起立と立位保持について 〜トイレ動作の動作分析から情報共有までの流れを学ぶ〜

◎文献ベースで考えるトイレ動作に必要な認知機能とは?

○視空間認知機能

視空間認知は「目で見た情報を処理し、空間的な位置関係を理解する能力」です。トイレ動作ではトイレまでの道順を把握したり、便器の位置を認識したりすることに活用されます。
[注釈: 視空間認知機能は、物体の形状、大きさ、位置、方向性などを認識し、それらの空間的関係を理解する能力を指します。この機能は日常生活のあらゆる場面で重要ですが、特にトイレ動作のような複雑な空間移動と物体操作を必要とする活動において crucial です。]
視空間認知機能が障害されると、以下のようなリスクや問題点が起こることが考えられます。

  • トイレまでの道順が分からなくなり、間に合わず失禁してしまう。

  • 便器の位置が分からず、距離感を見誤り転倒する恐れがある。

  • 小さい段差などに気付けない

○実行機能

計画を立て、実行する能力です。具体的には以下の機能が重要とされています。

  • 作業記憶:トイレ動作に必要な情報を一時的に記憶しておく能力。

  • 抑制:他の刺激に惑わされず、必要な動作に集中する能力。

  • 柔軟性:状況に合わせて、計画を変更する能力。

  • 監視:自分の動作を注意深く観察し、修正する能力。

[注釈: 実行機能は前頭葉が主に担う高次脳機能で、目標設定、計画立案、実行、自己モニタリングなどの複雑な認知プロセスを統括します。トイレ動作のような多段階のタスクを遂行する上で極めて重要な役割を果たします。]
実行機能が障害されると、以下のようなリスクや問題点が起こることが考えられます。

  • 次に取るべき行動がわからなくなる(例:便座に移乗した後に、下衣の着脱動作を実行できない)

  • 指示理解が乏しくなる(例:手すりを把持して欲しいと指示するが、行動に移すことができない)

  • 外部から他の刺激が入ると、そちらに注意が向いてしまう(例:下衣の着脱動作を行っている際に、声をかけられると動作が止まってしまう)

○記憶保持機能

トイレ動作では、主に以下のような記憶機能が関係していきます。今回はトイレ動作での具体例を提示しながら、当てはめて考えていきます。

  • 短期記憶:トイレまでの道順、必要な動作の順番、排泄のタイミングなどを一時的に記憶しておく能力。

  • 作業記憶:トイレ動作に必要な情報を保持し、指示に従って実行する能力。

  • 長期記憶:トイレの場所、使い方、自分の排泄パターンなどを長期的に記憶しておく能力。

[注釈: 記憶保持機能は、情報を一時的または長期的に保存し、必要な時に想起する能力を指します。短期記憶は数秒から数分間の情報保持、作業記憶は情報の一時的保持と操作、長期記憶は長期間にわたる情報の保存と想起を担います。]
記憶保持機能が低下すると、以下のようなリスクや問題点が考えられます。

  • トイレの場所を忘れてしまい、間に合わず失禁してしまう。

  • ズボンや下着の脱ぎ方が分からない

  • トイレに行ったことを忘れてしまう

[視覚的補助の提案: ここで、短期記憶、作業記憶、長期記憶の関係性を示す簡単な図を挿入すると、読者の理解が深まる可能性があります。例えば、三つの記憶システムを重なる円で表現し、それぞれがトイレ動作のどの部分に関与するかを示すような図です。]

◎臨床場面での経験から考える必要な認知機能とは?

○視空間認知機能

空間認知:トイレまでの道順を把握したり、便器の位置を認識したりする能力です。その中でも、視空間認知は「目で見た情報を処理し、空間的な位置関係を理解する能力」になります。下衣の着脱動作では、ズボンを見ながら膝下程度まで下げる際に位置を目で確認するために必要な能力になります。
・内山が評価するときに意識して見ていたポイント
視空間認知機能を評価するときは、空間全体を認識できているか、また認識できている範囲を観察することやご本人に話を聞いて評価することはもちろん重要です。ですが自分の目の前の空間を見渡すためには「頭頸部の可動性や安定性」、「固定視や追視ができるか」など脳機能や身体機能の評価も同時にしていく必要があります。下衣の着脱動作に当てはめて考えると、ズボンの位置を目で見て確認できないことが「視空間認知機能の問題」なのか?「脳機能や身体機能の低下による問題」なのか?を区別することができます。

[視覚的補助の提案: ここで、トイレ空間の見取り図を挿入し、視空間認知機能が必要となる具体的な場面(例:便器までの距離感、手すりの位置など)を示すと、読者にとってより具体的なイメージが掴みやすくなります。]

○実行機能

計画を立て、実行する能力のこと。具体的には以下の機能が重要とされています。下衣の着脱動作では、ズボンをどのような順序や方法で着脱するのか考えながら実際に実行に移すために必要な能力になります。
・内山が評価するときに意識して見ていたポイント
実行機能を評価するときは、まず一連のトイレ動作ができるのかを実際の場面で見ていきます。その際に視空間認知のポイントでも話した「実行機能の問題なのか?」「身体機能の問題なのか?」を区別して評価していく必要があります。下衣の着脱動作に当てはめて考えると、ズボンを脱ぐ際に上肢・手指の関節可動はできるのか?その間立位保持は可能であるか?など先に身体機能をメインに見るようにしていました。その上で身体機能に大きな問題はないが、下衣の着脱が困難な場合は実行機能に問題がある可能性が高いです。作業記憶に問題があれば、この後話す記憶保持機能も評価する必要があります。また、抑制などに問題がある場合は、刺激が少ない環境に変えて行うとできるようになるのかなど、場面設定を変えて評価するようにしていました。

○記憶保持機能

トイレ動作に必要な情報を保持し、指示に従って実行する能力です。下衣の着脱動作では、ズボンの着脱方法や工夫するポイントなど自分なりのやり方を覚えておくために必要な能力になります。また、動作の途中で外的刺激が入った後でも、必要な情報を覚えていられるかも重要となります。
・内山が評価する時に意識して見ていたポイント
記憶保持機能を見るときは、前提としてどの程度の時間記憶を保持できるのかを評価する必要はあります。また、単語レベルであれば記憶できるのか?短い文章であれば記憶保持できるのか?など覚える言葉にも段階づけをして評価するようにしていました。記憶保持の媒体も、文章を読むと覚えられるタイプや、図や絵など視覚的な刺激であると覚えやすい方などタイプも様々です。どのような媒体であれば記憶に残りやすいのかも評価できているとアプローチの質も向上していきます。

◎まとめ

  1. 下衣の着脱動作では、視空間認知機能・実行機能・記憶保持機能に着目して評価する。

    1. 各機能の評価をする際に、身体機能の評価も同時並行で行い、動作困難な理由が、どこにあるかを判別する。

    2. 評価場面や環境設定は、日常場面だけでなく本人がやりやすい環境でも評価してみる。

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