見出し画像

お粗末すぎる外国人労働力の効果論

有名エコノミストのこんな記事を見つけました。

『外国人1割社会』で日本経済は再生できるか?
2023/06/26 木内登英(野村総合研究所エグゼクティブエコノミスト)
外国人労働力が潜在成長率を押し上げる
将来人口推計(令和5年)が前提とするペースで日本における外国人の数が増えていく場合、それは日本の潜在成長率に相当のプラスの効果をもたらす計算となる。
日本人、外国人ともに人口に占める労働力、つまり就業者数の比率が一定であることを計算の前提とする。そのもとで、人口の減少率は2070年にかけて加速的に低下していくことから、労働供給が潜在成長率に与える影響では、マイナス幅が一貫して拡大していく形となる。他方、2070年に人口全体の12.4%まで増加する外国人(労働力)によって、そのマイナス幅の拡大は一定程度抑えられる。外国人による各年の潜在成長率へのプラスの効果は、2070年にかけてプラス幅を拡大させていき、2023年+0.10%から+2070年には+0.24%まで高まる
ちなみに、向こう50年の年間平均値で見ても、その影響は+0.14%である。日本銀行が推計する潜在成長率が、最新の2022年10-12月期で+0.27%に留まる点を踏まえると、外国人の増加が日本の潜在成長率に与える影響はかなり大きいと評価できるだろう。
外国人増加の潜在成長率への影響は試算結果よりもさらに大きくなるか
上記は、外国人労働者の増加が潜在成長率に与える直接的な影響を試算したものだ。ただし、外国人が労働供給、需要の両面から日本の潜在成長率を押し上げるとの期待が企業の間で高まれば、企業は中長期の成長率見通しを引き上げ、それに対応して設備投資を拡大させるだろう。それは、資本ストックの増加と生産性(TFP:全要素生産性)の向上を通じて、潜在成長率をさらに押し上げることになるはずだ。
また、外国人労働者の増加という労働者の多様性の拡大が、企業経営に刺激を与え、経済効率の向上に貢献する可能性も考えられるだろう。
こうした点を考慮に入れると、外国人が人口推計の通りに増加する場合には、それが潜在成長率に与える影響は、上記の試算よりも大きくなることが期待されるのである。
外国人労働者の積極活用、移民政策の導入をタブー視しない
政府は6月9日に、人手不足対策として、外国人労働者の在留資格である「特定技能2号」の対象を、現在の2分野から11分野に広げる方針を閣議決定した。特定技能制度は国内の労働力不足に対応するために2019年に導入された制度だ。一定の技能が必要な特定技能1号と、熟練技能が求められる特定技能2号とがある。特定技能2号では、事実上無期限の在留や家族の呼び寄せが可能となる。3月末時点で1号の対象者は15万4,864人、2号の在留者は11人しかいない。
現時点では、自民党保守派などからの反発や国民の慎重な意見を踏まえ、特定技能制度の見直しは「移民政策とは異なる」、というのが政府の公式見解だ
しかし、人口減少が進む中、国内の労働供給を拡大させるためには、同制度の積極的な見直しを通じた外国人労働力の活用が必要なのではないか。また、人手不足期に一時的に外国人労働者を受け入れるのでは、経済の潜在力向上につながらない。外国人労働者の長期滞在や家族呼び寄せも認め、労働供給、消費の両面から中長期的に日本経済に貢献すると期待が高まることで、初めて企業の投資が促され、潜在成長率の上昇につながるだろう。そのためには、長期在留が可能な特定技能2号の枠をさらに大幅に拡大させていくことが必要だろう
日本には移民政策が存在しないと言われている。政府は、「国民の人口に比して、一定程度の規模の外国人を、家族ごと期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持していこうとする政策」を移民政策であるとする一方、現在のように「専門的、技術的分野の外国人を積極的に受け入れること」は移民政策とは異なるとの説明をしてきた。移民受け入れに対する国民の慎重論にも配慮してきたのである。
しかし日本経済、社会を大きく不安定化しかねない危機的な人口減少への対応として、移民政策の導入もタブー視せずに議論を進めていく必要がある。現在は、「特定技能2号」の枠拡大が、なし崩し的に移民政策の導入へとつながっていく様相を帯びてきている。それを国民的議論へと発展させたうえで、中長期のビジョンを明確にしながら、戦略的に移民政策を逃げずに正面から考えていくことが重要だ。

NRIコラム

ふーむ。木内氏は

  1. 人口減少で労働者は減るので潜在成長率は下がりGDPは伸びない

  2. 外国人労働者を入れれば潜在成長率の落ち込みは+0.24%分薄まる

  3. さらにおまけでその分は消費にも回る

  4. 堂々と移民政策を推進せよ

と岸田首相が泣いて喜びそうなことを主張しているのですね。
D.アトキンソン氏は中小企業の数が多すぎるので淘汰せよ木内氏は移民を積極化すれば+0.24%の上乗せされるので成長率の落ち込みは緩和されると言っています。

本音を言えば、ろくでもないエコノミストばかり。昔から仕事柄多くのエコノミストやアナリストに囲まれて仕事しましたが、共通して言えるのは、企業行動や消費者行動の実態を知らない人間ばかり。その傾向がさらにひどくなっているような気がします。

大事なのは、

  1. 総額のGDPではなく一人当たりのGDPが真の豊かさ

  2. 世界における発言力や影響力はGDP総額順位ではなく、文化力道徳力のソフトパワーで

  3. 一人当たりGDPには、移民も中小企業の淘汰も無関係

  4. 付加価値デフレーター(つまり価格決定力や値付け力による粗利の確保)が最も重要で、そのための政府・企業あげての施策が必要

なのです。
これについては、動画にしようかな(その方が分かりやすいから)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?