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仏教に改宗するユダヤ人たち JuBus

米国で仏教に改宗(または改宗はしないままに信奉する)するユダヤ人たちがいます。ユダヤ教Judaismと仏教Buddhismを足した造語でJuBuと呼ばれています。ユダヤ人家庭に生まれても仏教徒となった人たちが相当数いるわけです。

正確な数字の把握は困難ですが、米国の仏教徒の1/3はユダヤ人という調査が50年も前に行われ、米国在住ユダヤ人600万人と米国在住仏教徒300万人のうち、少ないない数の人々がJuBuであると考えられています。

ユダヤ教では「なぜこのようなくだらないこと(戦争や殺人など)がいつも私たちに起こるのですか?」という質問に対しては、イスラエル12部族の父ヤコブの旧約聖書創世記の中の答えしかありません。それは「私が世界を創造したとき、あなたはどこにいましたか?」と聞き返すだけです。私が創造主なのだからすべて神の思し召しと受け入れなさい、というものです。これはユダヤ教信者であっても満足がいく答えではありません
一方で、仏教は地上の厄災は無知と欲望の2つが原因で、禁欲と自己は無であるという洞察によって恐ろしい混乱を克服できるとしています。JuBuのムーブメントが起きたのはチベット仏教の指導者ダライ=ラマ師とユダヤ聖職者の1989年の対話からです。ダライ=ラマがユダヤ人に対しても真の暖かさで接していることが多くのユダヤ人の心に届きました。1994年には「蓮の中のユダヤ人(The Jew in the Lotus)」という本が出版されJuBuという言葉が使われました。中国共産党によるダライ=ラマ迫害への米国内の猛烈な抗議にはこの理由もひとつです。

反ユダヤ主義のとばっちりで増えるJuBus

現在、善良なユダヤ人たちは、ネタニヤフ政権のイスラエルに対する国際的な反発のとばっちりを受けています。

  • 10月18日ドイツ・ベルリンのユダヤ協会(シナゴーグ)の放火未遂事件。

  • 10月21日英国・ロンドンで「川から海へ』デモで数十万人が参加。ヨルダン川から地中海まで本来はパレスチナの領土であってイスラエルは侵略しているというのが「川から海へ」という意味です。

  • 欧州最大のユダヤ人コミュニティを抱えるフランスでも10月7日以降、800件を超える反ユダヤ運動による攻撃の被害が発生しています。

  • オーストリアでも反ユダヤ事件が300%の増加率で急増しています。

  • 中東ではもちろんですが、エジプトやチュニジアなどの北アフリカでも急増し、中国国内でも起きています。

1990年湾岸戦争、2000年テロとの戦い、東欧カラー革命とアラブの春、今回のハマス・イスラエル戦争と、米国の軍需産業ネオコンが時々の共和党や民主党政権と結託して戦争を起こすたびにユダヤ人批判、イスラエル批判が巻き起こり、「より平和的で具体的な解決策の道筋を示す仏教」へと改宗するユダヤ人たちJuBusが増える構図になっています。

別の投稿「古代史シリーズ」でも書くのでここでは余談にとどめますが、仏教はユダヤ教の影響を受けて成立しています。実際に、年代順ではユダヤ教、仏教、キリスト教、イスラム教というのは兄弟親戚宗教なのです。

反ネタニヤフの抗議がイスラエル国内で

親族らがエルサレムのベンヤミン・ネタニヤフ首相に行進し回答を要求。(出所:ドイツのユダヤ人一般紙Jüdische Allgemeine)
「私たちはテロ組織ハマスのことを常に耳にしており、彼らが何を望んでいるのかを正確に知っていると不満を述べた。しかし、私たちはイスラエル国家について何も知りません。答えを出さなければならないのに、政府は答えを出していない」と語り、ネタニヤフ首相に対し「この大惨事の発生を許したのは彼だ。答えを出さなければいけないのは彼だ。」

Jüdische Allgemeine

と不満を露わにしています。ネタニヤフが人質解放には関心がなく、ただ口実として使ってパレスチナ領土を占領することだけが目的と感じ取っているのかもしれません。

米国キリスト教福音派でも懐疑の芽が

プロテスタント福音派は米国人口の1/4の勢力をもつ最大宗派です。「聖書に書かれていることはひとつひとつがすべて正しい」と考えており、巨大な教会勢力に成長したメガチャーチが多く存在しています。2016年にトランプ氏が大統領選に勝てたのも福音派の支持を集めたからと言われています。
旧約聖書は正しい、だからイスラエルの建国は神の正しいお導きと考える福音派は盲目的にイスラエル支持派でもあります。在イスラエル米大使館をテルアビブからエルサレムに移転したのはトランプ大統領の福音派への土産であり、福音派は熱狂的に歓迎しました。今でもほとんどの福音派は変わらないと思います。
しかし、その中に懐疑の目が芽生え始めています全米では30歳代より下の若年層や特に大学生の間でパレスチナ支持が広がり反イスラエル運動が盛んです。「中東戦争以来のパレスチナ人の死亡者とイスラエル側の死亡者を比べれば、どちらが悪いかは一目瞭然だ」そう合理的に考える学生が増えているのです。その影響が福音派にも現れており、福音派でありながらパレスチナ支持と応える学生のインタビュー映像が流れていました。

反テロリズムかアパルトヘイトか?

ネタニヤフ政権とバイデン政権は今回の戦争を「テロとの戦い」といち早く表明し、英国やフランスなど欧州NATO加盟国も呼応しています。各政権は一様に反テロリズムと称しています。
一方で国連やイスラム諸国、そして欧米でも民間人はネタニヤフ政権が行なっていることは「アパルトヘイト政策による民族浄化」と考えています。民族浄化とは、複数の民族が住む地域で特定の民族集団が武力を用いて他の民族集団を虐殺・迫害・追放して排除することを意味します。いま世界の常識ではアパルトヘイト国家が地上で最も軽蔑されるべき国のカタチとされています。つまり、各国の政治家はともかく民衆はイスラエルって最低と思っているのです。

私はハマスは不当な占領に対する抵抗運動であってテロではないと最初から主張しています。そしてネタニヤフ政権が行なっていることは「アパルトヘイト政策による民族浄化」と考えています。日本の岸田政権は立場上そこまでは言えないかもしれませんが、せめてテロの表明はしてほしくありませんでした。しかし、上川外務大臣は先日のイスラエルとの会合の席でテロと口走ってしまいました。上川氏がどんな人物かは知りませんが、私にとっての同氏に対する評価はその一言で下がりました。

まとめると

  • 各国の多くの民衆と一部の国際機関がパレスチナ支持と考えている

  • その多くはネタニヤフ政権をアパルトヘイトと軽蔑している

  • ネタニヤフ政権を擁護している欧米の政権に対して反発感情がある

  • 善良なユダヤ人にまでその反発の矛先が向かっている

  • 善良なユダヤ人の中には仏教に改宗する者までいる

  • イスラエル国内でもネタニヤフに対する懐疑的な見方がある

  • 米国福音派の若年層にもパレスチナ支持の芽生えがある

ということになります。




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