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4年目の翻訳

PCに向かって一心不乱に翻訳をしていると、自分がどこにいるのか分からないような感覚に陥ることがある。

ひたすら、英語と日本語に埋もれていく感じ。目に入った言葉が日本語なら英語の中で、英語なら日本語の中で、その言葉に一番近い言葉を考えていく。頭の中の語彙の中から、これだ!というのを捕まえて、当てはめていく。分からないことがあれば、ネットで調べて、理解して、それにぴったりの表現をターゲット言語の中から見つけ出す。

えっと、いつだっけ。あの時読んだ資料でいい感じの表現があったはず。前にもらったフィードバックにはこう書いてあったはず。とか、過去の経験を必死に呼び起こしたりもする。

出来上がった訳文を読んでみる。初めて読んだ人はどう思うか? やっぱりこっちの言い方のほうが分かりやすいんじゃないか? この表現は誤解を与えるかもしれない。

翻訳には優しさが必要だ。

あっという間に昼になる。PCから顔を上げると、プハッて息継ぎした気分になった。

お昼ご飯を食べに行って、同僚と話して、ああここは会社やったか、と変な気分になった。窓から見える山を見て、ああここは京都やったか、と思った。ずっと海に潜っていて、お昼ご飯を食べに陸に上がってきたみたい。

歯磨きをして、口紅を塗り直して、デスクに戻ると、またズブブと言葉の中に潜る。

肩が凝ってくる。目が疲れてくる。でも、なかなかやめられない。トイレに行ったり、コーヒーを飲んだり、伸びをしたりもするけど、頭ではずっと翻訳中の訳文のことを考えている。気づいたら定時を過ぎていた。完成した原稿をメールで送る。外に出ると、むわっとした空気。秋らしい夕焼け空に京都タワーがきれい。

やりたいことは山ほどある。でも今、一番は翻訳。翻訳だけを仕事にして4年が経って、今もう一度翻訳に夢中。

#日記 #仕事 #翻訳 #ある日のこと

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