見出し画像

情報Ⅰの共通テスト対策教材を制作する準備の話(その2)

以前,「情報Ⅰの共通テスト対策教材を制作する準備の話」を投稿しました。この投稿以降,少しずつ情報Ⅰの仕事を受注しながらも,さらなる準備をしてきました。ということで,今回は準備の続きについて書いていきます。なお,情報Ⅰの仕事のご相談やお問い合わせはこちらから。


リメディアル教材の仕事の経験を生かす

以前,大学初年次で使用するリメディアル(学び直し)教材の制作を受注したときの話です。私(中村)の大学時代にはリメディアル教育というもの自体がなく,どうすればいいかよくわかりませんでした。

この仕事の発注元が,日本リメディアル教育学会の全国大会に企業ブースを出展していると聞き,私も勉強のために全国大会に参加しました。リメディアル教育をおもしろおかしく取り上げるメディアとは違い,全国大会では有益な情報を得られました。

高校の情報科も私の高校時代には存在しない教科でした。そこで情報収集のため,日本情報科教育学会の全国大会へ勉強に行ってきました。こちらも有益な情報を得ることができました。

地学の教材編集者の話を参考にする

大学入試センターから公表されている共通テストの情報Ⅰの試作問題を見ると,プログラミング,データの活用,シミュレーション,論理回路などさまざまな内容が出題されています。

あるとき,会社員時代に地学の教材編集者の先輩から聞いた話を思い出しました。地学には天文,気象,地質とさまざまな内容が含まれています。先輩によると,
「例えば,大学時代に地質が専門だった地学の先生が,天文の原稿を書くと粗っぽい内容になる」
とのことでした。地学教材を制作するときは,各執筆者が得意分野を分担して執筆するのがいいみたいでした。

情報Ⅰに関しても,以前,何人かのライターさんに会って話をしたところ,みなさんから「この分野だけだったら大丈夫」と,得意分野なら仕事ができるとの返答をもらいました。

現代文の教材編集者の会議を思い出す

編集プロダクション勤務時代,編集部には理科や数学だけでなく英語,国語,社会(地歴公民)のセクションもありました。あるとき,国語担当の編集者が集まって打ち合わせスペースで会議をしていました。どうやら,現代文の教材で使う文章(素材文)の選定を行っているようでした。

現代文の場合,学校の定期テスト対策教材には教科書と同じ文章を使う必要があります。一方,入試対策教材のオリジナル問題や模試では,教科書には載っていない文章を用いる必要があります。現代文の教材編集者は教材で使う文章を探すために,たくさんの書籍を読んでいたようです。

ところで,大学入試センターから公表された「令和7年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト問題作成方針」によると,既知でない内容から出題される可能性が示されています。実際に試作問題を見ても,高校生が見たことのなさそうなモデルを使った問題も出題されています。

情報Ⅰの共通テスト対策のオリジナル問題を作成するときは,教科書を読むだけでは対応できそうにないです。そこで,現代文の教材編集者ほどではないにしても,プログラミングやデータの活用をはじめ,シミュレーション,論理回路,暗号化などの書籍を探して読んでいます。

高1生向け物理基礎の教材を参考にする

ある版元から物理基礎の問題集の仕事を受注したとき,高校の内容の前に中学理科の復習ページがありました。中学理科の物理分野は高校の物理基礎の土台となる内容です。

情報Ⅰの土台となる内容も中学校で扱います。中学技術ではプログラムのアルゴリズムについて扱いますし,中学数学ではデータの活用について扱います。そこで,中学技術や中学数学の教科書や教材を購入して読んでいます。

過去の例から情報Ⅰの教材の今後を予想

国立大学では,2025年度の一般入試から共通テストで情報Ⅰを受験することになりました。情報Ⅰは多数の受験者が見込まれるため,各版元が情報Ⅰの学参を発行しています。数学・理科教材に強いとされる版元だけでなく,山川出版社のような地歴公民が強いとされる版元や,インプレスCQ出版社などエレクトロニクス系書籍に強い版元も発行しています。

ところで,10年以上前に大学受験用の数学教材に強い版元と取引があったとき,なぜかその版元は英語の大学入試センター試験(当時)の対策問題集も発行していました。担当者によると,
「英語はセンター試験での受験者数がいちばん多い教科だから売れると思って発行したが,全然売れなかった」
とのことでした。受験者数が多くてもそれ以上に競合が多いと,特長を打ち出せない教材は売れないみたいです。情報Ⅰの学参でも,似たような状況になるかもしれません。

また,2003年に理科総合Aという科目が新設されたとき,センター試験での受験者数が地学Ⅰ(当時)より多くなり,各社が理科総合Aのセンター試験対策教材を発行しました。弊社でもいくつか仕事を受注しましたが,次の課程になって理科総合Aがなくなるまで続いた仕事は模試だけでした。情報Ⅰの学参も,ここ1年くらいで発行されたものが,多少の改訂はあっても課程が変わるまでずっと売られ続けるのかもしれません。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?