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【東大式】行動とモチベーションの改善に役立つやさしい心理学

現役の東大・京大・東北大生が「"身近な事象"と"教養"」をテーマに、一部の人には「学問」として敬遠されてしまう「教養」をわかりやすくまとめています。

今回のテーマは心理学の用語である「原因帰属」についてです。具体的には皆さんが普段の生活で様々な成功や失敗を経験した時にどのような心の動きがあるのかを紹介します。

この記事で得られる知識は、成功や失敗のあとに自分の行動やモチベーションを改善することに役立ちます。というのも、成功や失敗をした時の自分の感情を客観的に理解することができるようになるからです。

普通、自分の感情を客観的にとらえることは難しいです。しかし、自分の感情を説明する方法を心理学の観点から学ぶことで、自分の感情をより理解できるようになります。感情を把握できたら、次の機会に向けて「自分は何を変えるべきなのか」を考えることができ、適切な行動を起こすことができます。

人の全ての行動の裏側には心の働きがあります。心理学の知識を学び、皆さんの普段の生活に存分に活かしてもらうことがこの記事の目的です。

日々の小さな行動を変えていくのに、すぐに役立つコンテンツになっています!

では、始めます。

1.原因帰属とは

「どうして、この間の英語の試験で悪い点数を取ってしまったんだろう」「なんで、あの上司は部下をひどく叱るんだろう」

自分の行動や他者の行動、身の回りの出来事について、“どうして”、“なぜ”と原因を考えることはよくありますよね。このように、様々な行動や出来事の原因を推論するプロセスのことを「原因帰属」と呼びます。

原因帰属:様々な行動や出来事の原因を推論するプロセス

ここでの「帰属」という言葉は、普段使う「会社への帰属意識」や「領土の帰属問題」のような“所属する”、“所有となる”といった意味ではないことに気をつけてください。英語のattribution(動詞attributeはattribute A to Bという形で使われ、“AをBのせいにする”という意味です)の訳語です。

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では、どうして人は行動や出来事の原因を知ろうとするのでしょうか。それには2つの意味があると考えられています。

1つ目は、原因を特定することによって、行動や出来事の意味を理解することができるということです。例えば、あなたが取り組んだ仕事が失敗に終わってしまったとします。その原因が全く分からなければ、失敗という結果を受け入れることができず、もやもやした気持ちが残ります。しかし、失敗の原因が「ある点で自分の仕事が不十分だったから」などと分かれば、失敗という結果になったことをひとまず理解し、受け入れることができます。納得のいかない出来事や結果を何かしらの原因と結びつけることで、少しでもその意味を理解しようとしているのです。

2つ目は、将来の行動や出来事についての予測力が高まるということです。例えば、あなたが英語の試験で良い点数を取ったとしましょう。その原因が「あなたの英語の能力が高いから(語彙力があるとか文法を理解しているとかでしょうか)」だとすれば、次の試験でも良い点数をとれる可能性が高いです。一方、「勘で解いた記号問題が全て正解でたまたま運が良かったから」が原因だとすれば、次の試験で良い点数をとれるかはまず分かりません。このように、原因を特定することで、将来も同じような事態が起こるかを予測しようとしているのだと考えられます。

これ以降の章では、「原因帰属が、その人のその後の感情や行動にどのような影響を与えるのか」についてお話します。

2.成功―失敗の原因の分類

まず、成功や失敗をした時の原因の分類について紹介します。皆さんも、成功や失敗をした時にどのようなことを考えているか思い出しながら読んでみてください。

成功や失敗をした時の原因帰属の分類には「内的-外的」「安定-不安定」の2つの観点があると言われています。

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2-1.「内的」な原因と「外的」な原因

「内的-外的」の観点は、その原因が自分の内側にあるか外側にあるかということです。例えば、内的な原因としてはその人の能力や努力など、外的な原因としては課題の難しさや運などが挙げられます。

「内的-外的」の観点
行動や出来事の原因が自分の内側にあるか外側にあるか

「内的-外的」の原因帰属は自分をすごいと思う感情(心理学の用語で自尊感情に影響すると考えられます。成功した時に内的な原因に帰属する(例:自分の能力のおかげだと考える)と自分をすごいと思います(自尊感情は上がります)が、外的な原因に帰属する(例:運が良かったからだと考える)と成功したのに自分をすごいとは思わない(自尊感情は上がらない)のです。

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また、失敗した時に内的な原因に帰属する(例:自分の能力がないからだと考える)と自分はだめな人間だと思います(自尊感情は下がります)が、外的な原因に帰属する(例:運が悪かったからだと考える)と失敗場面でも自分がだめな人間だとは思いません(自尊感情は下がりません)。

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2-2.「安定」した原因と「不安定」な原因

次に、「安定-不安定」の観点は、その原因が永続的なものか(安定)、一次的なものか(不安定)ということです。例えば、安定した原因としては能力や課題の難しさなど、不安定な原因としては努力や運などが挙げられます。

「安定-不安定」の観点
行動や出来事の原因が永続的なものか(安定)、一次的なものか(不安定)

「安定-不安定」の原因帰属は将来への期待に影響すると考えられます。成功した時に安定した原因に帰属する(例:自分の能力のおかげだと考える)と次も今回と同じように成功するだろうと期待されます。不安定な原因に帰属する(例:運が良かったからだと考える)と次も成功するだろうという期待は高まりません。

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また、失敗した時に安定した原因に帰属する(例:自分の能力がないからだと考える)と次も今回と同じように失敗するだろうと悪い意味で期待してしまいます。不安定な原因に帰属する(例:運が悪かったからだと考える)と次は今回とは異なる結果になるかもしれないと期待されます。

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どうですか?「そうやって考えること、あるある!」って思ってもらえたら幸いです。成功や失敗をした時の原因帰属には「内的-外的」と「安定-不安定」の2つの観点があることを理解していただけていたら大丈夫です。

3.一般的に人はどんな原因帰属をするのか

前章で原因帰属の分類についてお話しました。この章では、人は一般的にどんな原因帰属をすることが多いと考えられるかをお話します。

人は一般的に心理的な安定を求めるため、自尊感情を上げ、将来への期待を明るいものにしようとすると考えられています。そこで、次の2つの原因帰属スタイルをとると言えます。

①成功した時は、内的で安定した原因に帰属する(例:能力があるからだと考える)。つまり、自分はすごいと思い、将来への期待を明るくしようとします。
②失敗した時は、外的で不安定な原因に帰属する(例:運が悪かったからだと考える)。つまり、自分はだめな人間だとは思わず、将来への期待を暗くしないようにします。

成功した時は自分の良いように、失敗した時は自分にとって悪くないように考えようとするということですね。これを聞くと「なんて利己的で自分勝手な考え方だ」と思われるかもしれません。しかし、生き物には自分の利益に向けて行動するようにする性質があり、あくまで心の自然な働きであると考えてください。

ここで、「皆がみんな一般的な原因帰属をするとは限らないのでは?」と感じた方、その通りです。原因帰属スタイルはあくまで「このような原因帰属をすることが多い」ということであって、人によっても、状況によっても、原因帰属は異なってきます。

例えば、成功した時は外的な原因(例:運が良かったから)、失敗した時は内的な原因(例:能力がないから)に帰属するという人もいます。同じ人でも状況によって考え方は変わるかもしれません。

皆さんも自分が成功・失敗した時に何を原因だと考える傾向にあるか、一度思い出してみてください!

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4.日常生活でどのように活かせる?

さて、ここからは今まで紹介してきた原因帰属の考え方を日常生活にあてはめて考えると何ができるのかについて考えていきます。

まず注意していただきたいことは、「内的-外的」「安定-不安定」のどちらが良い/悪いという訳ではないということです。成功した時に外的な原因に帰属すること、失敗した時に内的な原因に帰属することは、おごらずに自分をより高めることに繋がるかもしれません。「内的-外的」も、「安定-不安定」も、どちらも必要で自然な考えです。

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私は、この原因帰属という考え方は日常生活で自分が成功・失敗した時に自分の感情を理解し、行動やモチベーションを改善するのに役立つと考えています。

例えば、あなたが仕事で失敗をしてとても落ち込んでしまったとします。とっても落ち込んでしまってどうにも立ち直れない時、原因帰属の話を思い出すと、「自分はなぜ今落ち込んでいるのか」「失敗した原因は何だと考えているのだろうか」と冷静に考えてみることができます。もしかしたら、外的な原因もあったのに必要以上に自分の原因を責めすぎてしまっているかもしれません。このように、まずは自分の感情を客観的に理解します

私もよく自分が失敗した時は、落ち込んでいる自分がいるのと同時に「待て待て、いまの私は内的な原因帰属をしているぞ。落ち込みすぎてはいけないぞ。」なんて考えている自分もいます(笑)

もちろん失敗した時に自分の原因を考えることは成長する上で大切ですが、自分を必要以上に責めて落ち込んでしまっている状態は時間も心の負担ももったいないです。大切なのは自分の心の動きを客観的にとらえ、失敗の原因を適切に把握することです。

例に戻ります。失敗の原因を必要以上に自分のせいにしてることに気づけば、「自分以外の原因もあるから落ち込みすぎる必要はない。今は次の仕事に向けて何ができるか考えよう!」と落ち込んでいる状態から回復し、いち早く次の行動に移すことができます。失敗によって下がっていた仕事へのモチベーションも上がり、迅速で適切な行動に移すことができるのです。

自分の心の動きを理解し適切な考え方に変えることが、自分の行動とモチベーションをより良くするのにとても有効です。

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また、原因帰属の考え方は周りの人が成功・失敗した時にその人の感情を理解するのにも役立ちます。

家族、友人、職場の人など、あなたの身近な人が失敗をして「自分に能力がないからだ。自分はだめな人間だ」と落ち込んでいる場合を考えてください。そんな時、皆さんは原因帰属の話を思い出して「この人は失敗の原因を自分の能力(内的な原因)だと考えているけれど、その原因帰属は適切だろうか」と一歩引いて考えてみましょう。目の前の人が落ち込んでいる理由が自分には理解できない!なんて状態を解決することができます。

そして、「失敗したのには他の原因もあったんじゃないかな。自分のことを責めすぎずに、少し考えてみよう」などと声をかけることができます。目の前の人が落ち込んでいる理由が分からないから励ましようがない!なんて状態も解決です。

皆さんも是非、この記事で知っていただいた原因帰属のことを日常生活でも思い出して使ってみてください!

おわりに

心理学を学ぶというと「人の心を読めるようになるの?」と言う人がいます。とても残念なことに心理学をどんなに極めても人の心を読めるようにはなれません(なれたら怖すぎますね)。自分の心を完璧にコントロールするなんてことも不可能です。

ですが、心理学という学問は、人の心や行動を科学的に研究する学問です。どんなに頑張ってもとうてい100%は理解できない人の心をちょっとでも理解しようと頑張る学問だと考えています。

誰もが他者と関わりながら生きています。心理学で学んだことは身近なことに活かしやすいのです。

心理学を学ぶことで、皆さんの日常生活が少しでも豊かになったら嬉しいなと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。忌憚なきご意見、ご感想をいただければ幸いです。

参考資料

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