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戦争は自殺者を減らす!? 人間心理の謎

「戦争」という言葉を聞くと、誰もが悲惨なイメージを思い浮かべるはずです。無数の命が失われ、社会が荒廃する――これが戦争の現実です。
ですが、戦争が始まると「自殺率が下がる」という現象が観察されることをご存じですか?一見して矛盾しているように思えるこの事実は、人間心理の深い部分に触れるテーマです。
また、宗教的信仰や家族とのつながりが強い人は、自殺率が低いことが知られています。この現象は、戦争や信仰、家族というテーマが持つ共通点――「つながりの力」と深く関係しています。この記事では、戦争をきっかけに、自殺の原因を社会心理学的な視点から考えてみます。


1. 戦争が自殺率を下げる理由:孤独の消失

戦争という極限状況では、社会全体が一つの目的に向かって動きます。このとき、個々人が孤立しにくくなるため、自殺率が低下する現象が見られます。

  • 外的脅威の出現による連帯感
    戦争中、人々は共通の敵や目標を持つことで、社会的なつながりを強く感じます。この「一体感」が孤独感を和らげるのです。
    例えば、第二次世界大戦中のイギリスでは、ドイツ軍の空襲が続く中、市民が防空壕で共同生活を送り、自然と助け合いの精神が生まれました。これは、「自分は一人ではない」という安心感を与え、心理的な安定に寄与しました。

  • 生存本能の優先
    また、戦争中は「生き延びること」が最優先されるため、自己破壊的な行動に走る余裕がなくなります。外的な脅威に対抗するために個人的な悩みが相対化され、結果的に自殺行動が減少するのです。


2. 宗教的信仰が自殺を防ぐ理由:絶望に抗う意味の力

宗教を持つ人が自殺率を下げる理由は、宗教が人生に「意味」を与え、困難に対処する力を提供するからです。

  • 「意味の喪失」に抗う力
    社会学者エミール・デュルケームは、自殺を「社会的連帯が失われたときに起こる現象」と説明しました。宗教は信仰を通じて、孤独や無意味感を軽減する役割を果たします。
    たとえば、多くの宗教が「命は神聖なものであり、自殺は許されない」と教えることで、個人が自殺を選ぶ可能性を減らします。

  • コミュニティの存在
    宗教は信者同士をつなぐコミュニティを提供します。この集団の一員であるという感覚は、孤独感を緩和し、「自分を支えてくれる存在がいる」と実感させます。


3. 家族のつながりが持つ力

家族との絆は、困難な状況に直面したときの最大の支えとなることが多いです。

  • 心理的サポートの提供
    家族は、感情を共有し、個人を支える最も身近な存在です。問題を抱えたとき、「話を聞いてくれる」「支えてくれる」存在がいることは、自殺の抑制に大きく寄与します。

  • 責任感の発生
    家族がいる人は、「自分がいなくなったら家族が困る」という責任感を感じやすいです。この責任感は、自殺を思いとどまらせる重要な要因となります。


4. 戦争、宗教、家族に共通する「つながり」の力

戦争中の社会、宗教的信仰、家族関係に共通するのは、「人とのつながり」、「使命感」や「所属感」です。人間は孤独に弱い生き物であり、孤独が極限に達すると自殺を選んでしまうことがあります。しかし、つながりを感じられる環境では、そのリスクが大幅に低下します。


5. つながりを失ったとき、何が起こるのか?

逆に、つながりが失われると、自殺リスクが高まります。戦争後の平和な社会や宗教的信仰を持たない個人、孤立した家庭環境では、孤独や疎外感が強まり、自殺率が上昇する傾向が見られます。

デュルケームは、これを「エゴイズム的自殺」と呼びました。社会とのつながりを感じられないと、居場所がないと個人は孤立し、自殺に至る可能性が高まるのです。
そして、戦争はそんな人に願わずも「役割」と「居場所」を与えているんですね。


おわりに

戦争がもたらす社会的連帯。それはかなり強く人を結びつけ居場所をつくり、社会における役割を与えるんですね。
それは家族や宗教と同じくらい力強く。
つまり自殺者を減らすためには、平和な社会でも孤独を感じない、「自分は一人じゃないんだ」と感じられる環境を提供することが近道ということですね。

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