見出し画像

二十四節気の養生法【2022白露】

 早くも秋の3番目の節気。9月8日から9月22日(秋分の前日)までの2週間が「白露」です。
暦便覧には「陰気ようやく重なりて露にごりて白色となれば也」とあります。秋のはじまり“立秋”から“白露”の終わりごろまでが、残暑も厳しく夏と秋が行き交う季節。白露の9/8は、旧暦ではまだ8月13日でそう思うとまだまだ暑いはずですが、白露から秋分に向けて少しずつ秋の気配が感じられるようになっていきますね。
 夜ベランダに出てみると夜風も涼しくなり秋の虫の鳴き声が涼やかに鳴きだしてきました。燕が帰り雁がやって来る頃で、鳥たちも冬を越す準備をはじめます。自然界はちゃんと気が巡っていますね。
私たち人間も、この自然界の気の巡りに合わせて生活することが養生の基本です。
 9月9日は「重陽の節句」ですが、旧暦では10月4日が「旧重陽の節句」なのでもう少し先です。9/10は十五夜で中秋の名月ですが、9/11は二百二十日でこの日も昔から台風の災害などが多い日なので名月が見られるでしょうか。9/19は敬老の日で21日がお彼岸入りなど白露の期間はいよいよ秋が深まって行く感じですね。 

今月の癒しの庭園 龍安寺の石庭「方丈庭園」

 今回のお庭は、皆さまご存知、石庭で有名な龍安寺の「方丈庭園」です。金閣寺のすぐ近くにあるお寺ですが実は妙心寺の塔頭です。1975年にはイギリス女王のエリザベス2世が石庭を拝観され世界的に有名になりました。

画像1

 山門は、実は観光道路と呼ばれる国道162号線を渡った向かい側にあります。写真では奥まで一本の参道のように見えていますが、観光道路が出来た時に参道が分断されてしまったのです。駐車場から入るとこの山門は通りませんので龍安寺に参った観光客も実は山門を知らずに帰った人が多いようです。次回参られた時はぜひ観光道路から嵐電龍安寺駅側にある山門から入ってお参りしてくださいね。

画像2

 山門をくぐってすぐにあるのが「鏡容池(きょうようち)」。回遊式庭園の中心の大きな池で、青紅葉の隙間から池一面に睡蓮の花が咲き誇っているのが見え、とても美しい景色が広がっています。

画像3

 階段の脇を飾るのが「龍安寺垣」と呼ばれる菱形のデザインの竹垣で優美なデザインが独特の美しさを醸し出し、お寺を訪れた清々しさを感じます。

画像4

 庫裏を入るとすぐにこちらが有名な石庭「方丈庭園」があります。足るを知る庭とも言われ、枯山水式庭園で綺麗に箒目がつけられた白砂に15個の石が配されていますが、石の数や配置の意味は謎で見る人の自由な解釈に委ねられているそうです。1500年ごろの作庭だそうですが作った人はどのように感じて作られたのでしょうね?
縁側に座ってお庭を眺めているとだんだんと心が落ち着いてきますね。

画像5

 お庭の反対側の方丈広間には立派の龍の襖絵が飾られていますが、これは元総理大臣の細川護熙氏が描かれた襖絵です。細川氏はこのお寺を創建した細川勝元公の家系にもつながっているそうです。

画像6

 左側の蹲踞は、ご存知黄門様の水戸光圀公の寄進と伝えられ、真ん中の口という字を上下左右の文字と組み合わせて「吾唯足知」と書かれてあり、吾(われ)唯(ただ)足るを知るという意味で禅の境地を表しています。
今回は、有名な石庭や龍の絵も見たかったのですが、特にこの蹲踞を拝見したいと思っていました。「明珠在掌」という禅の言葉もそうですが、貪欲にアレも欲しいコレも欲しいと物欲や食欲にまみれている自分の心を洗われるようです。上を見ればきりがないし、下を見てもきりがない。今の自分を感謝する心。これが何よりもの養生法なのかも知れません。
 右側の「侘助椿」は、侘助という者が朝鮮半島から持ち帰った樹齢400年以上の椿だそうで、日本最古と言われており豊臣秀吉も賞賛したとも言われています。すごい歴史を見てきた椿ですね。

画像7

 普段は公開されていない仏殿西の庭も公開されていて、1797年に焼失以来200年ぶりに復元された仏殿の天井には龍が描かれており、天井の龍の絵を皆さまにご紹介したかったのですが、堂内は撮影禁止だったので京都観光Navi「京の夏の旅」のサイトより画像をお借りしました。https://ja.kyoto.travel/event/single.php?event_id=6713
 右は、細川廟に祀られた龍安寺を創建した細川勝元公の像です。足利幕府の菅領ですが京都を焼け野原にした「応仁の乱」の東軍の総大将ですね。

画像8

 左側の木は大きな「(えんじゅ)」という木で、中国では槐門棘路の木として「出世の木」と言われ名家の庭には必ず植えられているてそうです。右側は「われ桃」の実が出来ていました。
今回は有名な龍安寺でしたがやはり禅寺としての詫び寂びを感じ心が静まり穏やかになっていくように感じました。

画像9

 最後に、寺西乾山の筆による”氣通”(気を通ず)と書かれたつい立がありました。やはり”気が滞る”ことなくスムーズに”通じている”ことが、万物が健やかでいることの基本ですね。毎日のストレスやイライラで気を滞らせることなく、伸びやかに巡らせることが養生の基本ですね。

画像10

さて、では白露の養生法です

 秋は“天気以急”天気が急変しやすいのが特徴です。日中は暖かくても朝晩は急に冷え込むので、窓を開けて寝たり、汗をかいたままでいたりすると風邪や関節痛などの症状が起こりやすくなります。上着やストールなどで対応し、少しずつ冷気に慣れさせ、汗をかいたら早目に着替えて冷やさないように気をつけましょう。
 また、秋霖と呼ばれるシトシトと降る長雨も秋の特徴です。秋の雨は体を冷やすので天気予報に注意し、出掛ける時は雨具の用意も忘れずに。
 秋は夏から冬への季節の変わり目。夏の疲れをしっかりとって厳しい冬を乗り切る準備が必要です。スポーツの秋とも言われますが、あまり激しい運動をして陽気を発散しすぎないようにして、夏に消耗したエネルギーをしっかり補充して回復させましょう。

夏の疲れを癒し冬に向けてリセットする時期

 秋は燥邪により肺を傷めやすい季節ですが、秋分を過ぎるころまではまだまだ残暑も強く暑邪に注意することも大切です。特に夏に暴飲暴食したり冷たい物の過飲食で脾胃を損傷したり、蒸し暑くて寝汗をかいたり、逆に寝苦しいのでエアコンを入れっぱなして寝たり、一日中冷房の効いたところにいたりして自律神経がアンバランスになってしまっている人も多いです。
中医学で、気と陰分が不足してしまっている「気陰両虚」と言われる体質です。出来るだけ早く夏の疲れを癒しカラダをリセットして、来たる厳しい冬を乗り越えられるように備えることが大切です。でないと冬に泣くことになります。しっかりリセットして備えましょう。
この時期の養生法は、脾胃のリセットと陰気を補う質の良い睡眠です。

夏の疲れを癒す…1.健脾和胃

画像11

 日本の夏は蒸し蒸しと蒸し暑いので暑邪とともに湿邪も体内に侵入していることやサラダやフルーツなどの生ものやアイスクリームやビールやジュースなど冷飲食の過食のため脾胃を損傷している人が多いです。
 今年は、梅雨が明けてからも各地で集中豪雨があったり秋になっても雨が多いので、さらに湿邪にやられている人もいます。
ちょっと調子が悪いなぁと感じる人は、脾虚体質になっているかも知れません。健脾和胃をして水の巡りを調え、脾胃の働きを取り戻し消化吸収・運搬をスムーズに行えるようにしておきましょう。

 脾胃を補う食べ物は、米、小麦、トウモロコシ、大豆、小豆、ジャガイモ、サツマイモ、やま芋、かぼちゃ、栗、にんじん、冬瓜、はちみつ、高麗人参など、薬膳食材はと麦緑豆百合なつめ蓮の実山査子などです。これらの食材を使ってお粥やスープなどを作って飲むと益気和胃になります。※ただし良いからと言って過食すると高血糖や糖尿になりますので十分注意が必要です。これらを食べた後におかきやお饅頭、ケーキなどの甘味は厳禁ですね。

夏の疲れを癒す…2.陰を補う

画像12

 また寝苦しい毎日から不眠や睡眠不足の人が多いのもこの時期に良く見られます。これから”冬至”に向けて陰気が旺盛になっていくので、それに合わせてしっかりと睡眠をとって体内の陰気を充実しておくことが大切です。
 肌荒れや便秘気味、足の裏や手のひらが火照るなどイヤな熱感があるのは陰虚と言って陰が不足気味です。
 早寝早起きを心掛け、早寝で「陰気」を補い、早起きして「陽気」を適度に動かして、カラダの内側から陰陽のバランスを調えましょう。

 陰気を補う食べ物は、だいこん、レンコン、やま芋、梨、白ごま、牡蠣、貝類、イカ、カニ、エビ、牛乳、鶏肉、豚肉、うずらの卵など、余分な熱を取るのはセロリ、セリ、きゅうり、ごぼう、冬瓜、牡蠣、シジミ、カニ、昆布など、薬膳食材では白キクラゲ百合緑豆などがおすすめです。

 秋の養生は「滋陰潤肺」や「養陰防燥」です。
血・津液・精が不足した陰虚体質になるとカラダが乾燥し熱っぽく、性格はせっかち、痩せ、肌や髪にツヤがない、頬が赤い、のぼせ、汗かき、暑がり、めまい、耳鳴り、心煩、冷飲食を好む、唾液少、喉が渇く、掌や足の裏が熱い、寝つきが悪い、寝汗、便秘、尿量少、出血の色が濃い、生理不順、無月経、不妊症などの症状が現れます。
 陰虚になる原因は、飲酒・喫煙・激辛など刺激の強い香辛料・高カロリー食・過労・夜更かし・睡眠不足・房事過多・慢性病・老化・ストレスなどの生活習慣やイライラ・怒りっぽい・許せない・執着心が強いなどの感情や性格などが考えられます。ひどくなると陰虚火旺となり脳出血や精神異常などを引き起こします。
 手遅れになる前に、飲食を中心とした生活習慣を見直し、陰を滋養し余分な熱を冷まし潤いを補って未病を癒す養生をすることが大切です。 

 秋は、カラダの中の陰陽のバランスを調えて、厳しい冬を乗り越えられるように準備をする季節なのです。運気の低下は、邪気がカラダに侵入し体調不良を起こすことから始まります。

画像13

京都伝統中医学研究所の"白露におすすめの薬膳茶&薬膳食材"

「滋陰潤肺・養陰防燥」陰を養い肺を潤し乾燥から守るための薬膳茶&食材  
 残暑は厳しいですが、気は巡り徐々に秋が深まっています。いつまでもアイスクリームや冷たい物を飲んだり食べたりしないで食生活も秋モードに切り換えましょう。
 蒸し暑い夏は、西瓜、糸瓜、冬瓜、苦瓜、胡瓜、甜瓜などの瓜類は、余分な水分を利湿してくれるのでむくみやすい人や雨が降ると体調が悪い人にはオススメですが、秋になると瓜類を食べ過ぎると下痢をしやすくなると言われますので気をつけてください。

 空気が乾燥してくると鼻や喉の粘膜も乾燥しやすくなります。スーパーにはもういろいろなが出回っていますね。誰かがゴホンと言えば“梨”といった感じで梨は常備薬ならぬ“秋の常備菜”です。
 また燥邪からカラダを守るために淡甘潤の性味のレンコンや白きくらげ、松の実、百合、白ごま、長いも、はちみつ、豆乳、豚肉、鴨肉などが肺気を補い潤す食べ物としてオススメです。
 特に白きくらげは淡甘/平で肺・胃・腎に帰経し、陰液を滋養し肺を潤し空咳、喀血、喉の乾燥・イガイガ、皮膚の乾燥や痒みの改善効果があるほか、脾胃を補い津液を生じ胃のシクシクした痛みや食欲不振、胃の痞え、ゲップやしゃっくり、喉の渇きなどの改善効果があるのでオススメです。キノコと白キクラゲの炒め煮や梨と白きくらげのスィーツなどで召し上がるのがオススメですが、白きくらげは水に浸けると4~5倍ぐらいに膨れますので、ひと口大にちぎって10分ぐらい茹でてコリコリ食感を残して和え物やサラダなどに使ったり、2時間ぐらいゆっくり茹でてネバネバトロトロにするとコラーゲンたっぷりの美肌食材になります。   
 「2時間も待てない!」という方は「食用重曹」を耳かき1杯程度入れると10分ぐらいでネバネバトロトロになります。冷凍保存も可能なので、戻し過ぎた時は冷凍で保存して、朝食のお味噌汁に入れるのが手っ取り早いですが、パスタやスープ、うどん、チャーハン、ハンバーグや餃子に練り込むなどお使いくださいね。お腹が重いなぁというようなときは少し多めに食べると、腸の調子が良くなり今までよりツルんとスッキリ!

陰を補い余分な熱を冷まし、肺を潤すオススメの薬膳茶&薬膳食材は、
薬膳茶では、「カラダ潤し茶」、「五望茶」、「増血美肌茶」、「野ばらとなつめの美顔茶」、「なつめ薬膳茶」、「酸梅湯」など、
薬膳食材では、「白キクラゲ」、「百合」、「はと麦」、「菊花」、「緑豆」、「蓮の実」、「山査子」、「松の実」、「白きくらげのスィーツ」などがオススメ。
普段召し上がっているお味噌汁やスープに白キクラゲや百合、蓮の実、はと麦などを加えてお召し上がりいただくと滋陰潤肺養陰防燥の効果がアップします。

薬膳茶や薬膳食材などの商品は各ショップでお買い求めいただけます。
薬膳茶&薬膳食材専門店 京都 楽楽堂
https://www.kyotorakurakudo.com (ただいま開店準備中)
京都伝統中医学研究所 楽天市場店 https://www.rakuten.co.jp/iktcm/
京都伝統中医学研究所 ヤフー店 https://store.shopping.yahoo.co.jp/iktcm/

中医学や漢方の知恵を毎日のくらしに活かして、体質改善や病気の予防に役立てて下さい。
次回は、9月23日「秋分」ですね。”暑さ寒さも彼岸まで”と言われるように、朝夕はずいぶん過ごしやすくなって来る頃ですね!?  
その代わり朝夕と日中の温度差が非常に大きくなりますので、かえって体温調整が難しく体調を壊しやすい時期でもあります。台風の上陸も多くなりますので気をつけてお過ごしくださいね! 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?