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【私小説41】ロゼッタ

いつからだったろう。幼稚園児の時、私がお遊戯会で代役を務める事となった土井晴美ちゃん。その晴美ちゃんがクラスでいじめられるようになった。私もかなピーとその取り巻きにはかなり嫌な思いをさせられたが、さらに辛い思いをしていたであろう晴美ちゃんを、私は助けてあげる事ができなかった。
晴美ちゃんは植物に明るく、植物博士と呼ばれていた事があった。そのあだ名がプレッシャーになったのだろうか、植物の事を訊ねられた時、自身が答えられない内容だと
「私今日忙しいから」
と姿をくらませたり、遠足に行った先で
「これはのびるっていうんだよ」
と言っていきなりそのノビルを引っこ抜いて弁当の足しにしたりと、ちょくちょくネタを提供してしまう子ではあったと思う。私同様。
晴美ちゃんはいわゆる菌扱いを受けていた。バッチ菌と言って晴美ちゃんに触れた人は次々に他の人をタッチし菌を移したり
「バリアー!」
と言ってそれを回避しようとしたり。
大人たちもマスコミも、いじめなんて言っているけどただの犯罪。本当になんでこんなに残酷な事が起こるのか。でもその時の私だって
「ダメ」
の一言すら言う事が出来ず。
かといって一緒になって菌移しに加担するほどの、ある種の協調性も持ち合わせていなかったので、クラスで晴美菌移しがが始まると私は全力で姿をくらましていた。今でも同じことをしてしまうのかな。でも子供の頃と違うのは、見て見ぬふりはダサい事だって認識がある。ヒーローになりたいなぁ。晴美ちゃんゴメン。
 
晴美ちゃん。タンポポの葉の並びを、ロゼッタと言うんだよと元カレにドヤ顔で説明できたのはあなたのおかげです。(でも後で調べたらロゼットだったわ、まあいいわ)

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