御堂狂四郎と運命の暗号
ザム氏が青ざめた表情で俺に言った。
『こ、これは…!御堂君!君はなんと不幸な男なのだ!』
『えっ、なにがですか?』
『ワシが今、占いを学んでいる事は知っているね?』
『ええ、知っていますよ。今やってるあみだくじもそのひとつでしょ?』
『そうだとも!その占いの結果、とんでもない事が分かったのじゃ!おお、なんという事だ…』
『な、何が分かったのですか?』
『それはワシの口から言うわけにはいかん…。恐ろしい事になる…』
俺があみだくじを覗こうとすると、ザム氏は大急ぎで紙を丸めて飲み込んでしまった。
『あっ!なんて事を!』
『うぐぐ…。うぐっ!!』
『…!?ザム氏!大丈夫ですか!?』
ザム氏は拳ほどの紙玉を喉に詰まらせてしまったらしく、激しく身悶えし、苦しみ出した。
俺はなんとか紙を吐かせようとしたが、ザム氏はそれを拒み、覚悟を決めた目で俺を見据えた。助からない事を悟ったのだ。
ザム氏は苦しみながら、最後の力を振り絞って筆を取り、床に何かを書きはじめた。
鬼気迫る表情で一心に何かを書くザム氏。俺は止める事も医者を呼びに行く事もできなかった。
見ている事しかできないその時間は永遠のように感じられた。やがて、ザム氏は筆を握ったまま『ぐふっ…!』と、息を引き取った。
『ザ…ザム氏…』
俺はザム氏をベッドに運び、深く悲しんだ。そして、ザム氏が書き遺したメッセージを見た。
『一体、何を書いていたんだろう…』
…
『御堂君、君がこのメッセージを読んでいる時、ワシはもうこの世に居ないだろう。
しかし悲しまないでくれ。これは運命なのだ。
ワシは占いに全てを賭けておった。占いこそワシの運命であり、全てだった。生き甲斐である占いの中で死ねたのだ、悔いは無い。
ただ、一つだけ心残りが有る。それは親友の君の事だ。
最後の占い(最後にするつもりは無かったのだが)は、君の未来を見ておったのだ。すると、想像もしていなかった恐ろしい結果が出た。
御堂君、落ち着いて聞いてくれ。どうか混乱しないでくれ。君は、もうすぐ死ぬ。それも、途轍もなく恐ろしく、血も凍るような残酷な目に遭ってな。
ワシの口からその詳しい内容を話せば、死期を一気に早める事になったので教える事はできない。分かってくれ。こうするしか君を守る方法は無かったのだ。
占いは絶対だが、諦めるな。
たった一つだけその運命を覆す方法が有る。
それは、この地球のどこかに隠されている9つの暗号を解読し、それから導き出された方法を、ある場所で実行する事だ。
険しく辛い旅になると思う。
だが、幸いにもワシはその暗号の在処の頭の一文字だけ、君に伝える事ができる。それを教えよう。
御堂君、君はワシのたった一人の親友だった。突然の別れは悲しいが、ワシは命と引き換えに君を守れた事を誇りに思う。
どうか運命に打ち勝ち、幸せな人生を送ってくれ。幸運を祈る。
では、よいか?
暗号の在処の頭文字は…
ぐふっ…!』
メッセージは、そこで終わっていた。
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