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在野の民俗学

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#民俗学

引き潮

祖父が臨終の際にあった時、祖母は
「引き潮が魂さひいてぐんだ」
と言っていた。
わたしはそれ以来、灰色の太平洋の潮を見るたび、
遠くの方にいる祖母や祖父の白い影を思う。

ただ風が吹き荒れるだけの真夜中の海は、
空も海も区別なくただ深い闇となってそこに落っこちていて
大きな大きな声で、
おじいちゃーーーーん
おばあちゃーーーーん
ばらばらに乱れる波打ち際に声をかき消されて
なおも大きな声で、
おじ

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尻屋崎 (17th Jul. 2013)

2013年5月の頭に訪れた陸奥にて聞いた話が興味深く、今まであたった文献には載っていなかったため、備忘のためここに記録しておこうと思う。

尻屋崎とは、青森の北端、斧の様な形状をした下北半島にある。
その斧の、柄にあたる部分の突端に存在している。
寒立馬が主な観光資源となっている、海に向かって生きている土地である。

尻屋崎は、もともと海賊の村なのだと言う。
海賊が住み着いたものか、住民が海賊にな

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