24歳一人暮らしの私がコロナになった記録

一人暮らしのコロナ罹患はとても心細い。
それにも関わらず、私が調べた今日現在では、その詳細記録が多くはなかった。
これは、今後そういった人たちの参考となればという願いと、また私自身がこの経験を忘れないための記録である。
(なお、今回はより多くの人に読んでもらうため、読みやすさを重視して、いつもの関西弁は封印しています。)

1日目【8/19 (木)】発症の始まり

この日の仕事は過去一体力的にキツかった。
ドラマ撮影の現場として、マネージャーである私は大きなホールに11時半から立っていた。

「カット!!!!」

大きな声にパチンと響かせた音が重なるのを聞きながら、ただひたすら緊張感の途切れない時間が続く。

昼過ぎから私の体に異変が起こった。
空咳が止まらない。
このとき現場ではスモークを炊いていたため、喉が乾燥したためだと思っていた。
今思えばこれが症状の始まりである。

時刻は最後23時。
2回しかない休憩でしか座れず、ほとんど終日立ちっぱなしだった。

撮影終了後、疲れ切った私は、担当の子をホテルまで送り届けたあと、終電のひとつ前に乗り込み、帰宅してすぐに就寝した。


2日目【8/20 (金)】日常からの一転 嘔吐・発熱

前日の疲れを取ることもままならず、朝10時から別の仕事現場に向かう。その後は美容室に行ったり、カフェに行ったりと、結局夕方までだらだらとすごした。前日の空咳はこの時はほとんど気にならず、夕方には帰宅。

その日の夜である。

普段は感じえない吐き気に襲われ、洗面所から動けなくなった。うまい吐き方もわからず、ただただ苦しみの中で洗面所に立ち尽くすことおよそ10分。

水を大量に飲み、すぐに熱を測るとそこには38.3という数字が。

一瞬万が一を考え、職場に連絡しようかと思ったが、寝て起きて治っていることと信じ、市販の解熱剤のイブを飲んで寝た。 

3日目【8/21 (土)】高熱・頭痛・全身の倦怠感の起こり

頭の痛みで目が覚めた。
前日飲んだ薬はまったく効いていないようだった。
体温を測るとなんと39.1℃
さらに体の節々が痛い。
この日も仕事があったがこれではさすがに行けない。やむをえず職場に連絡すると、上長が車で関節痛に効くという漢方(芍薬甘草湯)を持ってきてくれた。すでに昼を回っており、朝飲んだイブと併用するのが問題ないのかわからなかったため、この日は朝昼晩とイブを飲んだ。

熱は薬を飲むごとに37℃代に急激に下がり、飲まないと一気に39℃まで上昇するという感じで、それはもはや体温計の故障を疑うほどだった。

コロナを疑ったわたしはいろんなもののにおいを確かめていた。冷蔵庫をあけると、何かの食材が悪くなっていて庫内全体が異臭を放っていた。においがわかることへの安堵。腐った食べ物に感謝をしたのは生まれてはじめてである。

とはいえ念のためにPCR検査は受けておきたい。
と思ったが、土曜日である。ほとんどの病院が休診日だった。
何度も電話をかけ、やっと見つけた自宅から500メートルの病院に、熱のある体を無理やり動かし向かう。
レントゲンを撮られ、肺に影があるからコロナの疑いがあるからと、その病院からバスで20分はかかるPCRの検査場に行けと言う。

どうやら、最近は診察後にその病院でそのままPCR検査を受けられるところと、その場では受けられず検査場に案内される病院があるらしい。
ちょうど1ヶ月前、PCR検査を受けた病院はこの日休診日だったが、診察したその病院内で受けられたため、この想定はしていなかった。

こんな状態で自力で遠くまで行くのはさすがに厳しい。

ひとまずPCR検査は断った。

キットで自宅検査にしてしまおう。

レントゲンを撮ったことで無駄に4000円も支払うことになり、私は一体何をしているんだろうかと、熱に反して冷静な頭で思いながら、病院を後にした。
その足で近くのドラッグストアに立ち寄る。

しかし検査キットの値段を見てこれまた衝撃を受けた。1万円もするのである。確か1ヶ月前にPCRを受けたときは2000〜3000ほどだった気がする。
一度手に取った検査キットを元の棚に戻す。
2000円で実施できるものを1万円で買うのはかなりバカバカしく思えた。
こんなんじゃいつまで経っても感染拡大は収まらない。

週明けにそのまま受けられる病院を受診することにしよう。

4日目【8/22 (日)】高低差3℃の急激な体温変化と味覚・嗅覚異常の初期段階


起きてすぐに何か違和感を感じた。
嗅覚がおかしい気がする。

普通は鼻に通る空気や部屋のにおいがするはずだが、そういったものを感じない。
ベッドの脇にあるディフューザーを嗅いでみた。
いつもより強くはないが近づけばにおいはする。

普段から鼻炎気味で嗅覚があまり強くないことと、朝は鼻詰まりが起きやすいことから、これがコロナの症状なのかただの鼻炎なのかはっきりとわからず、ひとまず熱を測ってみた。 

体温計は39.7を示していた。

とりあえず起き上がってみると、頭痛と倦怠感が昨日とは比にならなかった。

一度ソファに移動する。
日曜日。近くの病院はどこもかしこも休診日である。
そもそもこの状態じゃ病院にはどう考えても1人ではいけない。

ひとまず昨日頂いた漢方の箱をネットで検索。イブが飲みあわせが可能な薬かどうか調べてみる。
どうやら飲みあわせはロキソニンかカロナールに限るようだった。
この熱ではさすがに薬すら買いにはいけない。

あまり人に甘えることが得意ではない私は、ひとりで解決するにはどうしたらいいものかと、39.7℃のあまり機能していない頭をフル回転させた。

コロナ禍となってからはどこも宅配サービスが充実している。ウーバーイーツなどの普及から、出前を頼むことが日常化し、私自身、昨年は一人暮らしでも米や水などの重い荷物を運ぶことがなくて済むことから、ネットスーパーには特にお世話になった。

食べ物に関しては問題なさそうだ。

しかし日用品にはこういったサービスがあまりない。
前述のウーバーイーツにはコンビニが、ネットスーパーには日用品商品関連のページが、あるにはあるのだが、文具、洗剤、サプリメント、ティッシュなどはあれど、
医薬品だから審査が厳しいのだろうか。ほとんど取り扱ってはいなかった。

Amazonや楽天などでは注文可能だが、プライム会員である私の手元に届くのすら、早くても明日になりそうだ。

もはや何も気にしている場合ではなかった。39.7℃である。このままじゃ死ぬ。  

「ロキソニン買ってきてくれる…?39℃あって…」

頼んだロキソニンばかりでなく、レトルト食品やスポーツドリンクなどを1時間で家まで届けてくれた友人には感謝してもしきれない。

さて、ここで今朝の嗅覚への違和感を思い出し、冷蔵庫に入っていた小さい紙パックのぶどうジュースを飲んでみることに。普段は肌荒れを防ぐために、夜遅くから翌日の正午にかけては水かコーヒー以外は口にしないようにしているのだが、今はそんなことを言っている事態ではない。
子ども用につくられたそのぶどうジュースからは、すっきりした甘さこそ感じれど、もし目隠しでもして出されたらそれと判断することはできないであろう優しすぎる味がした。
不安だったので、1つ残っていた4個パックのアロエヨーグルトも食べてみた。
これもまた、ほんのりとした甘みやアロエの味は感じるものの、なんだか鼻に抜けないというか、風味というものを感じさせる機能が低下していることを感じさせた。

私は嗅覚は普段からあまり強くないが、味覚にはそこそこ自信があった。
普段なら一口食べれば聞かなくてもそこになんの調味料が使われているかだいたいわかるし、外で食べた料理は同じ味付けを家で再現できるし、市販の飲料水はものによって味の違いがあることを知っている。

しかしこの時は毎日飲む2ℓペットのいろはすの水から、普段なら感じるはずのほのかな甘みを感じなかった。

トイレに入ると、いつもなら入った瞬間から強く香りを放っているピーチの香りのブルーレットの存在感がなんだか薄い。手に取って鼻に近づけて初めて匂いを認識できたものの、自分の嗅覚に異変が起こっていることを強く自覚させるには十分だった。

これはどう考えてもコロナやないか(某芸人風)

嗅覚や味覚が完全に消えたわけでないが、体感では50%くらいに半減しているような感じがした。

熱は昼間には一度37℃代まで下がるものの、夕方にはまた39℃まで上がり、夜には36.8℃まで下がるという、ジェットコースターのような急激な体温変化が見られた。

一日中寝たり起きたりを繰り返し、また漢方を飲んだおかげか、疲労感や関節痛はほとんど感じなくなった。

今はまだ味もにおいも、いつもより半減するとはいえ感じることができているが、これはまだ序章なのだろうか。明日朝起きて次は何も感じなくなったらどうしよう。そんな不安を抱きながら眠りについた。


5日目【8/23 (月)】嗅覚機能の完全停止・肺機能障害の現れ

目が覚めると真っ先に昨日も嗅いだベッドのそばのディフューザーを嗅いだ。
においがなにも鼻に入ってこなかった。
やっぱり悪化したかと、落胆しつつ、今度は大きく息を吸った。
やけに肺が苦しい。
走ったあと、とまではいかなかったが、早歩きしたあとくらいの息苦しさを感じた。

私はこの時はじめてこのウイルスに恐怖を覚えた。

発熱や頭痛は市販薬でも抑えられるが、肺機能の低下は薬では難しい。そもそも普段から経験することがない。

このとき都内では毎日5000人の感染者数を突破していた。
出ている数字だけでこれだ。実際の数字はこの数倍におよび、一説によると4万人を超えるとも言われていた。
もはや感染経路を追うことはほぼ不可能で、正直なところ、このときまでは熱さえ薬で下げればマスクをしてできるだけ人混みを避けて買い物くらいは行こうかと思っていたが、
肺機能に障害が出始めると、直す薬がないのでそれは物理的に不可能である。

もっと早く連絡するべきだったのだろうが、この時点で私はようやくこの週に会う予定だった人すべてにキャンセルやリスケの連絡をした。
打ち合わせや接待など以外の基本的な業務がテレワークで済む仕事体制だったことは救いである。

昨日友人が持ってきてくれた経口補水液の残りを飲んだ。
なんだかしょっぱい。
味覚の方もさらに低下しているようだった。

今日こそは病院に行ってPCR検査を受けるんだと、昨日から目星をつけていた病院に9時になった瞬間に電話をかけた。
予想はしていたがまったく繋がらない。
それはそうだ。週明けである。私のように土日に病院にかかれなかった人が他にもたくさんいるに違いない。

1ヶ月前にも病院に行った私は病院の予約の取り方をよく心得ていた。
この場合、いくら電話が繋がらなくとも、いったん諦めて時間を置いてからかけ直すことはご法度である。
電話を途切れずにかけなおし続け、誰かの電話と電話の間に絶対に入り込むくらいのことをしないと、予約はすぐに埋まる。
この間に予約が詰まると、結局今日の診察は満了ですとなってしまう。ということを私はすでに1ヶ月前に経験済みであった。まさに世はコロナ時代である。

何回かけなおしたかわからない。
何度も何度も《通話中》の文字を見、それでも諦めずにかけ続けた。
20回くらいはかけただろうか。
ようやく繋がった。
PCR検査をその場で受けられることをしっかり確認。
12:20ちょうどに来るようにとのこと。

自宅から500メートルの病院まで、息が上がらないようゆっくりと向かうと、まずは病院の外に立たされた。
保険証を出すように言われ、看護師さんに手渡すと、保険証にアルコールを吹きかけられた。

パーテーションで区切られた、誰もいない狭い場所に通され、声だけで診察をされるのは初めてだった。
まるで私自身を拒否されているような少し寂しい気持ちにもなる。

急に先生がパーテーションの中に入ってきて、PCR検査をさせてほしいと細い綿棒のようなものを鼻にぐりぐりと突っ込んできた。
唾液じゃないパターンのものは初めてだった。
インフルエンザもだが、私はこの手の採取がとても苦手だ。成人しているくせにこの程度で半泣きになったのは内緒である。(しかもそんな私を見て、「子どもさんでもできるやつですからね〜」と言ってきた先生はどう考えても煽ってるんじゃないだろうか…。)

病院では薬すらも貰えなかった。
市販の解熱剤や鎮痛剤で熱や頭痛を抑えるくらいしかできることがないのだろう。
大きな不安要素である味覚や嗅覚異常、肺機能障害など、薬では改善できない部分が多いことがコロナ感染の恐ろしさなのだと思う。

最後に、PCR検査の結果は翌日の午前中もしくは検査数が多ければ昼過ぎるかもしれないが病院から電話をするとのことを受け、診察は10分以内に終了した。

診察料は1790円。
やはりドラッグストアで1万円支払ってキットを購入しないで正解だった。
国民皆保険は自信を持って日本の誇るべきシステムのひとつだと思う。

外に出ると目の前にはからあげ屋さんが。
あまりにも美味しそうだったので一瞬買って帰ろうかと思ったが、味覚機能のない状態で食べるからあげは、好きなものだけにあまりにもみじめだったので、今度治ったら食べることにしようと心に決めた。

もう家を出ることはしばらくないかもしれないと思い、コンビニで一気に買い物をして帰ることに。

結果が出ていないとはいえ、ウイルス感染中である可能性の高い私が一度手に取ったものを元に戻すのはよくないと思い、できるだけ手に取らず慎重に商品を見ながら吟味して買い物をする。

買ったものはこちら


味覚が機能していない状態で自炊するのは非常に怖いため、すぐ食べられるものをたくさん購入。
サラダチキンを入れるだけでつくれるパウチが結構おいしそう。

お昼時だったのでさっそくサラダチキンを使ったスープを食べてみる。

が、やはりしょっぱい。
いやかなりしょっぱい。

私の場合、味覚が完全になくなったというよりは、甘さやからさなどの基本的な味覚だけが残っている状態のようだった。その結果、それ以外の味がわからずそればかりが強調されてしまうため、普通よりも味付けが濃く感じてしまうのかもしれない。

そしてすぐ味に飽きる。
食欲がないわけではないのに、淡白な味が続くとどうしても楽しんで食事を続けることができず、一食を食べ切ることが難しかった。

ただおもしろいことに、絶対に味が分かってないはずなのに、なぜかなんとなく味が少しはわかる気がした。
見た目の色や見えている食材、食べたことのあるものから、勝手に脳で味を想像して感じ取っているというか、「きっとこんな味なんだろう」と思い込みだけで、感じていないはずの味を舌が捉えている感覚はとても不思議な感覚だ。食は味と同じくらい視覚情報が大切らしい。

息苦しさはさほど強くはなかったものの、嗅覚や味覚が前日より低下していることから、これ以上ひどくなることを想定して洗濯や掃除をしてしまうことにした。

それにしてもにおいが本当にわからない。
香水の入ったボトルの蓋をあけ、鼻の穴にくっつくくらい近づけた。

無臭だ。

鼻の穴にぶっ刺した。

やっぱり無臭だ。

ここまでわからないと、もはやおもしろい。

この日の体温は昼頃は37.2℃ほどだったが、夜にはまた39℃まであがった。この急激な体温変化がコロナの特徴のひとつでもあるのだろう。


6日目【8/24 (火)】睡眠時の呼吸困難・咳と吐き気の再来

深夜1時半ごろに目が覚めた。
まだこんな時間か、と焦る。
その後も何度か目が覚め、結局明け方5時台に目が覚めた。
なんだか寝苦しい。
息がうまく吸えないのだ。
私に現れた呼吸障害はさほど強いものではないため、浅くゆっくり呼吸すればいいのだが、寝てる時ばかりはそこまで意識することはできない。
どうしても深い呼吸も混じってしまうため、深い睡眠に入ったかと思えば目が覚める、といったことが起こっていた。

体温は39.5℃ 
朝はどうしても熱が高くなるということはそろそろ覚えてきた。

起き上がって経口補水液を口に含む。
もはや味覚を確かめるルーティンである。
経口補水液は昨日ほどのしょっぱさを感じなかった。
基本的な味覚も昨日よりまた低下していた。

午前11時ごろ、前日行った病院の先生から電話がかかってきた。

陽性でした。と

うん。だろうな。としか言えない。
軽症扱いの感染とのこと。

しばらくすると保健所からも電話がかかってきた。

・感染経路について(私の場合この人だというのがもうわかっていた。その人が責任を感じてしまうと思うので、特に本人に報告もしておらず、当然ここにも書く予定もない。)

・発症から数えた自宅待機の期間がいつまでなのか(一人暮らしのため、自宅待機となった。)

・1日に2回、朝と夕方に保健所から来る自動音声の体調報告に番号プッシュで回答すること。

・酸素が体にどのくらい行き届いているかを測るパルスオキシメーター(指にはめて計測する機械)を保健所の方が明日持ってきてくれること。

・24時間対応しているので何か異変があったらすぐに連絡すること。

以上の話を受け、電話は終了。
昨日の病院もそうだが、コロナ患者に対しては普通の風邪に対する扱いとは全く違う、VIP対応と言っても過言ではない、なんとも手厚いサポートである。
いつでも電話していいというのは一人暮らしでもとても安心だ。

この日、やたらとまた咳き込むようになった。
初日の頃のような空咳ではなく、痰が絡むような嫌な感じの咳である。
先程のパルスオキシメーターについても、実は今かなり数が足りていないようなのだが、私が電話口であまりにも咳き込んで会話に時間がかかったために心配してくれたのだと思っている。

また、前日しっかり寝れなかったため、夕方は昼寝をしようとしたが、どうしても呼吸に意識がいってしまい、結局これも途切れ途切れに寝ることになった。
といっても、重度のものではなく、呼吸できなすぎて困るというほどでもなかったことは幸せな方だ。
これ以上悪化しないことを祈るばかりである。

夕食を取った後、また異変が起こった。
2日目と同じ吐き気に襲われ、えずき、洗面所の水の流れるところを一点見つめる10分間がおとずれた。
かなりつらいのにも関わらず、
「つわりってこんな感じなのかしら」
なんて思うくらいには冷静なのが我ながらおもしろい。

熱は終日かけて37℃台、それも37℃前半をキープしており、高熱のピークは過ぎたように思えた。


7日目【8/25(水)】咳と吐き気からの呼吸困難・パルスオキシメーターの手配

味覚はさらに前日より弱くなっているようだった。
でもこのままだと完全に消えることはないだろうと思う。甘さや辛さがわかるだけ、まだ食事が苦痛ではなくてラッキーだ。
午前中の熱はこれまた37.5℃ほどであり、この日も終日かけてこの前後を行ったり来たりした。
もう高熱になることはなさそうだ。

午前11時頃、激しい咳き込みと吐き気が私を襲った。
咳き込むスピードに対して呼吸が追いつかず、それが吐き気を引き起こす。
咳き込むために息を吸うと肺が苦しくなり、またそれが咳き込む原因となった。
さらにこのとき、鼻詰まりも起こしており、そもそも呼吸自体が難しい状態だった。鼻詰まりのために、鼻の通気口が小さく、普段より息を吸って呼吸する必要があったが、そうすると肺がまた苦しくなるのである。

この鼻詰まりや喉の痛み、咳など、まるで風邪のような症状が多々見られるのが変異種デルタ株の特徴でもあるのだという。

また、この午前中はただ座っているだけで呼吸が少しつらかった。今までは激しく動いたりしなければ息が上がることはなかったのだが、何もしていないのに呼吸に少し違和感があるのは不安だ。

不安になった私は、昨日保健所の方が言っていたパルスオキシメーターがいつ届くのか確認とともに、一刻も早く持ってきてもらおうと、24時間対応の自宅待機者向けのフォローアップセンターに電話をした。

すると、
まだ保健所から私たちに連絡が来てないので手配ができないと。
また、もし今すぐ連絡が来たところで、手配するのは送る時間も考えると2日はかかるという。

2日は…かかりすぎじゃないか…?

正直体感的には全然呼吸はまだ平気ではあったが、まだ平気だから頼んでいるのであって、苦しくなってからもらったって仕方ないのだ。
というか2日もあれば治ってる気すらするし、それなら私じゃなくてもっと必要な人に届けてくれた方がいい。

さらに、もし急ぎなら保健所の方に自分で電話をして、フォローアップセンターに連絡するように伝えてもらった方が早いかもしれない、と言われ、一度電話は終了。

なぜ呼吸が苦しいと言っている私が保健所に「早く電話してね〜」の連絡をしないといけないのかと疑問だったが、保健所も忙しいのだろうと思い電話をかけることにした。


出ない。

もう一度かけ直す。

やっぱり出ない。

通話中の文字を見つめ、私はため息をついた。
これ、本当に緊急で必要な人はどうするんだろうか。
死ぬんじゃないだろうか。

もう一度フォローアップセンターに電話をかける。
繋がらなかったのでどうしたらいいかと聞くと、もう保健所から連絡が来てるので手配を進めるとのこと。
さっきの時間はなんだったのだろうか。
というかそういえばどっちにしてもパルスオキシメーターが届くのは2日後である。
私は何をしているんだろうか。

さて、昼も過ぎた15時頃だっただろうか。ピンポーンとチャイムが鳴った。
何かと思って出てみると、なんとパルスオキシメーターである。

すぐ来るんかーい。

いや本当になんなんだ。
情報の伝達がされてなさすぎではないか?
とは思ったものの、すぐ届いたことはよかったので文句を言うのはやめた。とりあえずこれでひとまずは安心だ。

この日は丸一日、まるで陣痛の波のように、咳き込んで吐き気に襲われては洗面所でうずくまり、しばらくして落ち着いたかと思えばまた吐き気に襲われるという1日を過ごすことになった。呼吸ができないというのは人をもっとも恐怖心に駆らせる。
痰が絡むため、吐き出そうとするのだが、それを出そうとすればするほど肺に負担をかけ、気分が悪くなり、悪循環が起こってしまっていた。

幸い、夜寝る前までには落ち着き、疲れ切ってしまっていたのか、日付が変わるとすぐにねむりに落ちた。


8日目【8/26(木)】続く呼吸の苦しさと自宅待機期間の延長宣告

起きて一番に熱を測ると、38.5℃だった。
まだ上がる時は上がるらしい。
解熱にイブを飲んで効くまでは寝ることにする。

ずっと長風呂上がりのような、少し頭がくらっとするような息が上がっているような感じで、座っていてもつらい、起きててもつらいので、もう寝るくらいしかすることがなかった。
この日は仕事でのzoomが一本あったため、顔出しはもちろんしなかったが、それを昼ごろにこなし、その後はただひたすら眠った。
寝ても寝ても寝れるあたり、やっぱり病気なんだわと今更なことを思う。

夕方ごろ、電話が鳴った。

保健所やらフォローアップセンターやらから電話がくるため、常に通知が聞こえる手元にスマホが必要だ。

今回は保健所からだ。

今日の2回の病状報告の電話に出れなかったことを心配してかけてきてくれたようだった。
実際はzoomやらトイレやらタイミングが悪くたまたま出れなかっただけなのだが、お手を煩わせて申し訳ない気持ちである。

熱や今の状態について伝えると、このまま明日もまだ熱が下がらないとなると、療養期間が延びることになると伝えられた。
「発症から10日後」
「解熱剤を飲まない状態で3日熱がないこと」
を条件に外に出られるようになるらしいのだが、発症から10日の来週の月曜日が、すでに明日で3日前であり、明日時点で熱があるのであればこの条件を満たさないことになる。

解熱剤を飲めば下がってしまって、正常な数値がわからないので、飲む前に毎回熱を測るようにとのことを受け電話は終了した。

コロナは回復までの期間が長すぎる。
軽症の私でこれなのだから、もっとかかる人たちは学校や仕事はどうなるんだろうか。

さすがに寝過ぎておなかもすいたので、久しぶりにウーバーイーツでもすることにした。大好きな唐揚げ屋さんのゆず親子丼を注文。

しかし結局1/3くらいしか食べることができず、ラップをして冷蔵庫に戻してしまった。
食べるという行為はある程度体力を使うらしい。
食欲がないわけではなかったのだが、なんとなく食べながら息をするのが大変だったのかもしれない。

夜も更けて23時半
すごくおなかがすいた。
そりゃそうだ。ちゃんと食べられてないのだから。
普段は絶対に食べないが、今は病気であることを理由に、食べられるときに食べておけと心で呟き、残っていた親子丼を温め直した。

一口食べたその瞬間、味覚に変化を感じた気がした。

気のせいかと思ってもう一口食べた。

これは気のせいじゃない。

この親子丼はゆずの香りが入っているのだが、このとき私の舌はゆずの香りをわずかに捉えていた。

味覚がだんだん戻りつつある。

回復の兆しが見えた瞬間だった。

9日目【8/27(金)】味覚と嗅覚の快方

熱っぽさが完全に消えた9日目。
前日の時点で午後は熱がなかったので、このまま平熱に戻ると思われる。
肺だけはまだつらかったので、今日もおとなしくしようと決めた。

午前中、またもや電話が鳴る。

「パルスオキシメーターを届けに上がりたいのですが…」

いや、今…?え?今…?

ここで私はすべてを悟った。
なるほど。私が一番最初に保健所の人から言われた、「明日持っていく」と言われたのが、あの例の問題の電話の後にすぐ来たパルスオキシメーターで、
例の電話の件の回収はちょうど2日経った今になるのか。

こう、なんというか。
意思疎通が大変なくらい現場は混乱してるんだろうな。
(だがしかしもう少ししっかりしてほしい。)

ひとまず、数も足りていないだろうに私が余分にもらったって仕方ないので、パルスオキシメーターの配達は断りを入れることに。

ものの30分も立たずして、今度はインターフォンが鳴る。生活用品をAmazonで頼んだりしていたこともあって、毎日何かは届くのだが…はて、なんだっただろうか…。

これに加えて2リットルの水が6本入ったダンボールも届いた。

なんと保健所からの食料品である。

それも大量の。

いや、あの、なんだろう。
もうどこから突っ込めばいいのかわからない。

まず、遅い。

もう治りかけなのよ。

そして家に上がれないからと、このダンボール3つを家の前に置き去りにしていかれたわけだが、
呼吸がつらい病状で、平常ですらまあまあ重いこの段ボールを3つ家の中まで運ぶのは、そこそこ辛かった。
運び込んでからしばらくは動けなかったのは言うまでもない。

食料配給があることは聞いていたが、もっと冷凍のお弁当だったりを想像していたので、思っていた物とは随分異なった。

人に頼むにしてもUberやネットスーパーを使うにしても、お菓子のチョイスはあまり頭になかったので、お菓子が入っていること自体は嬉しかったが、それにしてもお菓子の比率がちょっとな…。
写真では隠れていて見えないがレトルト食品はわりとたくさん入っていた。

なんにせよ、とてもありがたいことなので感謝である。
ただ強いて言えばもう少し早く持ってきてほしかったところである。それ以外は何も文句は言わない。

夕方ごろ、トイレに立つと、ドアを開けた瞬間にふわっと芳香剤の香りがした気がした。

おや…?

部屋に戻り香水の蓋を開けた。 

おぉ…嗅覚がちょっと戻ってる…。

普段からあまり嗅覚は強くないので、感動まではしなかったが、落ちていた機能が回復するの嬉しいものである。

この日は結局終日熱は37.3以下にとどまり、翌日以降も熱が上がらずだったため、この日記はこれにて終了とする。
(少しの咳と呼吸の心配があったので、月曜日いっぱいまでは家の中で療養することとした。)

最後に : コロナになって学んだこと

こんなに流行ってるのに、自分はかからないとたかを括ってしまうのはなぜだろうか。私もそうだったし、他のかかった人もそうだったのだろう。

私の場合は、誰経由でかかったのか思い当たる人が1人しかいなかったのだが、その人と会ったその日に、その人自身もまだコロナであることを知らなかったので、もうこれは誰も悪くないし、それは逆もそうである。

ただ、私の発症1日目や2日目に近くにいた人が今のところ誰もかかっていないらしいのはラッキーだったとしか言いようがない。

また、保健所はすごく頑張っているのだと思うが、やはり手が行き届かない感じがすごかった。
私のような軽症患者にも毎日電話をかけ、保健所じゃ繋がらないからとフォローアップセンターなるものを用意し、宅配で食料やパルスオキシメーターを届けてくれるのは素晴らしかったが、
とりあえず保健所にはこちらからかけたところで全く繋がらない上、何もかも手元に届くのが遅すぎる。
軽症だからよかったものの、重症化したりすればこれは死活問題である。

解熱薬と頭痛薬のストックも常日頃からしておくべきだと感じた。
ネットで買っても最速で1日はかかるので、すぐにほしい時に手元に無くて1番困るのは、Uberやネットスーパーじゃ変えない薬だったりする。食べ物は即日で届くサービスがわりと広まっているが、食べ物以外の日用品が即日に届くサービスがあまり普及していないことに気がついた。それに気がついてからは、トイレットペーパーなどの衛生用品は、急に必要になっても前もって注文するようにした。Amazonなら1日で届くので、基本的にネットが使える世代としては、特に困ることはなかった。Amazonプライムは素晴らしい。


まだしばらくは味覚も嗅覚もかなり緩めで、肺もなんだか小さくなった気がするので、ゆるりと生活することになりそうだ。
これにて私のコロナ記録はいよいよ終了とする。
次回はワクチン接種編にて…!?(確約はできませぬ)

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