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大河への道は遠かった!?

『大河への道』を観賞した。落語家の立川志の輔師匠の創作落語が原作。誰もが知る!?伊能忠敬。ところが日本地図の完成時には、既に本人は死亡していたという事実から、遡って忠敬を取り巻く弟子たちが彼の遺志を継いで完成させるまでを描いた作品である。千葉県の佐原市の地元では、“忠敬(ちゅうけい)さん”と親しまれる存在でありながら、市役所の職員でさえも事実誤認しており、伊能忠敬こそ大河ドラマの題材に相応しいと考える。しかし実際にドラマで描こうとすれば、毎回日本の何処かで測量する忠敬を映して、何が面白いのか?といった尤もな意見も出る。確かに全国を行脚する時代劇は、水戸黄門で十分だ。しかも水戸黄門にはストーリーがあるが、測量から離れたところにエピソードは少ないと思われる。仮に測量マニアなる者が存在して、『今回の測量は秀逸だった!!』などの感想が聞けるかも知れないが、ごく一部のマニア向けに大河ドラマを制作することは出来ないだろう。

上映中も、映画を観ているというよりも落語を聴いているような感覚になった。現代の登場人物が、忠敬周辺の関係者を演じる。大笑いするというよりもクスリと笑う場面が多く、これがクライマックスに繋がっていく。出演者全員が適役であったと私は思う。ストーリーは単純であるがゆえに、落語で言うところのオチも想像に難くない。しかし演技巧者の面々が、その単純さを興味深いものと変えている。こうした人間模様を描くのが日本映画の特色であり、魅力でもある。バカバカしいと思わずにチケットを購入してほしい。

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