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【自然分娩】出産レポ①【初産8時間出産】

その夜。
深夜2時ごろ、夫がベッドに入ってきた。
「はなちゃん・・・、今、阿部サダヲのやつ観てた・・・。すごかったよ・・・。グロかったよ・・・。阿部サダヲってさ・・・、猟奇的な役のイメージがすごいよね・・・。」
戦場カメラマン渡部陽一のような喋り口調で囁いてくる夫。
Netflixの阿部サダヲ主演ドラマ”死刑に至る病”を観ていたのだという。

私は、夫がベッドに入ってくる少し前に、お腹の痛みで起きていた。
生理2日目の、1番ピーク時の痛みだった。
長らく生理を味わっていなかったので、「懐かしい痛み!」と思った。

あまり痛みに集中しないようにして、夫の話し相手をした。
「阿部サダヲって猟奇的なイメージあるかな?私はどっちかというとIWGPの警官みたいなコミカルな役のイメージが強いけどなー。」
「えー?そうかな?マルモリとか?」
ここで初めて夫が”マルモのおきて”のことを”マルモリ”と呼ぶことを知る。
「うん。そう、マルモリとかね。下妻とか、うん・・・てか、お腹痛いかも。」
痛みに集中しないとは言っても、やっぱり痛い。
夫にお腹が痛いことを伝えた。
このとき、これってもしや陣痛?という気持ちが一気に沸いてきた。

”陣痛きたかも”というアプリを開く。
陣痛には波があり、痛みを感じる時間はおよそ1分間。
1分間を乗り越えると痛みが数分おさまり、また次の1分間の陣痛がやってくるというシステム。
その波が10分間隔になれば、いよいよ産院に電話して症状を伝える。
電話して、「では来てください。」と言われれば、ここでようやく産院へ向かう。
痛くなったらすぐ産院へGO!ではないのだ。普通に帰されるらしい。
この重要な【10分間隔】を便利に計ることのできるアプリが”陣痛きたかも”。
本当に便利な時代!

私は、”陣痛きたかも”に記録を始めた。

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①2023年06月13日 02:18:33
前回からの間隔06分15秒
続いた時間01分23秒
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②2023年06月13日 02:23:10
前回からの間隔04分26秒
続いた時間00分50秒
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③2023年06月13日 02:28:41
前回からの間隔05分31秒
続いた時間00分36秒
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こんな調子で、10分間隔ってガチ実在するの?というタイムが続いた。
もう結構痛いのに、10分間隔にならないと産院に電話ができない。
早く10分間隔になって欲しかった。

一応、お風呂に入っておくことにした。
陣痛がきたらまずお風呂に入ることが大事だと、インスタグラムで死ぬほど見たからだ。(出産は汗をたくさんかくし、出産直後はシャワーを浴びることができないので体を綺麗にしておくことと、お風呂で体を温めると陣痛を進める効果があるみたい。)

お風呂のお湯を張っている間、そばで焦り散らかしている夫が
「10分間隔じゃなくても、もう一応電話したら!?!?」
と言う。
10分間隔じゃないと相手にされないことを予習していた私は渋る。
「まだ10分間隔じゃないから無理だよ・・・。」
「うーん・・・。でも、痛そうだし、一応電話しておいたほうが良くない!?」
だから10分間隔じゃないと相手されねーんだっつってんだろうが!!!!!!!!!!!と心の中だけで思った。
だがどう考えてもお腹は痛くなっている。確かに痛くなっている。
「うん、これは1回かけてみよう。」
私はあっさり産院に電話をかけた。

「もしもし、診察券番号●●のザ・花実です。陣痛みたいな痛みが2:00頃から始まりました。でも間隔が短くて、不規則で、10分間隔ではないです。」
「うーん・・・。10分間隔になったらまた電話かけてください!」

やっぱりね!!!10分間隔じゃないと見向きもされないんだ!!!
悔しい!!悔しい!!!!悔しい!!!!!!!
オーディションに落ちたときのような気持ちになった。

不規則な痛みを感じながらお風呂に入る。
体が温まれど、お風呂に入っている間も痛みの波はあって、欠かさず”陣痛きたかも”に記録した。
間隔が短いので、記録してiPhoneを置いてはまた記録して、記録してはまた置いて、の繰り返しだった。忙しい。

お風呂から上がると、ジュワッと生理の出血のような感覚があった。
この日は丁度、検診で内診をしていたため、おしるしの出血だろうと思った。
夜用ナプキンを付けて、産院へ向かえる服を着た。

時刻は早朝5時半。
痛みを感じ始めてから、もう約3時間ぐらいは経っているのか。
それでも私の陣痛らしきものはまだ10分間隔にならなかった。
ずっと短く細かい間隔で、痛みの秒数も短かったり長かったり、不規則なままだった。

「なんでこんなに10分にならないの・・・?陣痛じゃないの・・・?」
私は嘆いた。
「もう1回電話してみたら?」
心配そうに夫が言う。
だ!か!ら!10分間隔じゃないと落とされるんだってば!!!!
このオーディションは!!!めちゃくちゃ狭き門なんだよ!!!!
何回言ったら分かんだよ?!?!!?!?!!!!!!
痛みでもうあまり正気じゃなく、夫を責めそうになったが
「うん、かける。」
私はまたもやあっさり電話をかけた。
心は10分間隔にこだわり続けていたが、体はそろそろ痛みに耐えられるか不安な状況だったのだ。

「もしもし。先ほどお電話したザ・花実です。間隔はまだ不規則なままなんですけど、痛みが結構増しています・・・。」
「分かりました。向かってください!」

え!!!!?!???!??!!??!?!?!??!??!?
ご、合格!????!?!?!?!!?!?!?!?!?!?!
まさかの合格通知に拍子抜けした。

「っしゃ。行くか。今日、会えるのかな!」
夫はそう言って、テキパキと出産バッグと入院バッグを持ち、車を準備してくれた。
いよいよか・・・と、私も車に乗り込んだ。
目の前の痛みと向き合うことに集中していて、緊張とかは意外と無かった。

セブンへ寄ってほしいと夫に頼む。
陣痛は体力勝負だから、水とおにぎりとサンドイッチとカロリーメイトとウィダーインゼリーとポカリを持って行けとインスタグラムで死ぬほど見たからだ。
大量に買い込んで、産院へ急いだ。
車内での私は、「ふぅーーーーーーーー。」と、息を長く吐いていた。
YouTubeで予習していた呼吸法だ。
こうして息を長く吐くと、痛みが少し和らいだ。
このときまでは。

続く!











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