いじめが起こりにくい「システム」とは? 国際バカロレアのある学校の話
先日、国際バカロレアのインクルーシブ教育を実践する小学校でダウン症の女の子イシャが、学業トップアワードを受けた話を書きましたが、その続きです。お母さんのLi Hsianさんは「いじめがなかった」と言います。本当に、そんなことが可能なのでしょうか? Li Hsianさんへのインタビューの続きです。
ーーイシャはずっと普通クラスにいて、本当にいじめられたことがないのでしょうか?
もちろん、誰かがときどき彼女をからかうことはあります。でも彼女のアクションが面白いとかで、彼女自体を笑ったりしないのです。
他の親もオープンで、「こういう子だからよろしくお願いします」と記事をシェアすることもありますが、理解しようとしてくれる。
みんな深い心の中では、親切にしたいと思っていますし、不親切を子どもに教えたい親もいないと思います。
ーーなぜそれが可能なのでしょうか?
学校のシステムがそうなっているからです。
まず、IBの目標がただ「勝つこと」ではありません。IBでは、システムが「違うことができる子ども」を求めているから、学業成績だけが強調されません。アカデミックな賞もあれば、他の賞もある。
誰にも高いチャンスがある。勝つとか、達成するだけじゃない。
例えば、IBの10の学習者像に「ケアリング」(思いやりがある)が評価に入っています。だから、「ケアリング」(思いやりがある)な子がいたら、学校はその子に「グリーンレター」をあげて、彼を認識するんです。それを両親にも知らせます。子どもたちはこれが好きで、「グリーンレターもらった」みたいな感じで喜びます。
いくつかの学校を試してみましたが、中には新入生と話したがらないクラスもありました。新入生を無視したりして、先生から促されて、ようやく話すみたいな。
ところが、この学校では子どもたちが非常に親切で、「ハロー」と言ってくれる。
実は(イシャの双子の兄である)長男も非常に心配していましたが、「子どもたちはとてもよくしてくれる」と言います。
彼はダウン症はないですが、ナーバスでセンシティブ。
入った当時はただ心配し、毎日泣いていました。
6歳のとき彼は「ママ、先生に僕が泣くのを止めないように言って。一人にして数分すれば治るから」と言ったんですね。
でもじきに、彼は学校が彼のような子も認めてくれると知りました。 ノーマルキッズも特別に扱ってくる。どんな子も違う。
今では、息子もとても楽しんでいます。
私はこういう学校がよかったんです。
結局のところはシステムがいいのだと思います。
校長先生がいつも言うように、「価値は、意図したシステムから作られる」と感じます。
「Value is not accidental(価値は、偶然できるものではない)」
ーーでも先生や子どもはともかく、保護者を変えるのは難しいのでは。
子どもが学校にいる限りは、システムが非常に大きいと思います。学校の「バリューシステム」が親にも確信させるのだと私は感じます。ほとんどの家庭が同じではないでしょうか。
すごく高価な学費の学校にも、意地悪な子はいます。
だけど、IBの親は、少なくともIBのシステムを信じている。
意地悪な子がいたときに、「先生、これは私の子どもに直接の影響はないけど、嫌です。やめてください」とはっきり言えます。すると、彼らは理解してくれるのです。「キャラクタービルディング(人格形成)は非常に大きなパートである」と認識しています。
校長先生はいつも「Value is not accidental(価値は、偶然できるものではない)」と言います。もし先生がこれらの価値を理解せず、「学業だけ」に価値を置いたら、多分そうはならないでしょう。
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