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学校に絶望した子どもとどう対峙するかーー「オードリー・タン 母の手記『成長戦争』 自分、そして世界との和解」から学んでみた

こんにちは。

オードリー・タン 母の手記『成長戦争』 自分、そして世界との和解」(KADOKAWA)が、本日発売だそうです。

「私たちが過去に受けた苦難を、誰かがもう一度味わうことがありませんように」――母親によって描かれた、これまで誰も見たことのないオードリーの横顔、そして家族の物語。

母・李雅卿さんの「成長戦争」(絶版)をライター近藤弥生子さんが、日本向けに翻訳・再構成。独占取材も含まれています。

近藤さんのご好意で、校了原稿を拝読しました。
題名の「戦争」の通り、凄まじい内容で、「学校システム」と闘うことがどれだけ困難かを教えてくれる本でした。

不登校で悩まれる方のために、今日は紹介します。

台湾では、学校に行かないと罰金刑だった

硬直化して、絶望が支配していたという台湾の教育。
選択肢は少なく、かつて学校に行かないと親が罰金刑だったそうです。

日本でも、インターに通わせると役所から「義務教育違反です」と言われることがあるそうですが、かつての台湾には実刑があったのです

「台湾の教育には絶望する」――筆者自身、保護者たちからも、若い友人からも、そんな言葉を何度も聞いたことがある。「変えることなどできないから」と、海外へ留学する台湾人も少なくない。問題がどこにあるのかは分かっていても、根本が複雑すぎて、一朝一夕で変えられるようなものではないからだ。

そんな硬直化した台湾で、生まれつき心臓に問題があったオードリー さん。

体育はできず、ギフテッドと言われ、いろいろな教育機関に行きますが、そのギフテッドクラスにも絶望してしまいます。
両親との関係も悪化し、自殺を考えるようになっていきます。

親自身が「欲望」に気づき手放す

印象的だったのは、お母さんの李雅卿さんが、不登校を許すシーン。自分は罰せられてもいいと、「教育の選択肢を子どもに返す」のです。

「私は子どもにどうなってほしいのだろう? 私は自分自身に訊いた。
 温和? 従順? 明るい? 理性的? 寛大? 意志が強い? 独立している? 順応できる? 機敏? 正直? ――この時、突然自分の中にある貪欲な心と、その矛盾に気が付いた。私が心の中で求めているような子どもは、この世に存在せず、自分でもなることのできない『聖人』だ。そう思った途端に考えがはっきりし、身も心も明るくなった。もう、どんな子どもになってほしいかなど考えない。私は子どもがしっかりと生きていてくれたらそれで良い、ありのままで良いじゃないか!」

親の「欲望」が子どもを追い詰める。

こうして、自分の欲望に気づいて手放すことは難しいと思う。
子どものため!と、無意識に期待をかけている親も多いと思うのです。法律違反になれば尚更です。

しかし、母親がようやく気づいたことで、オードリーさんは少しずつ「世界と和解」していきます。

蔡先生の啓発を受けた李雅卿はオードリーの休学を受け入れ、1人、また1人とオードリーにとって恩師となる教育者たちと出会っていく。この時の彼女はまだそれを知らないし、それを目指したわけでもない。ただひたすら、オードリーの心を取り戻したいと願って行動しただけなのだと思う。

こうして、1年以上続いた悪夢から抜けられる手応えを信じ始めたと言います。

「1年以上続いている悪夢を追いやれそうだと信じ始めた私に、楊教授は『喜ぶのはまだ早いよ』と、宗漢の状況を分析して聞かせてくれた。
『まだ、彼の人に対する警戒心を解いただけに過ぎない。この子はいくつかの大きなニーズを同時に満たしてあげないと、幸せになるのは難しい』
 そう言って、彼が必要としているニーズについて教えてくれた。仲間から受け入れてもらうこと、知識の探求、想像力の広がりに、感情――なんということだ! 私には何ができるのだろう。

「学校に行ってほしい」と願う親と「学校はいらない」と思う子供の戦いはあちこちで起きていますが、ニーズが一人一人違うのです。

最終的には「いかなる教育体系にも属さない」と決めた

その後、親子はドイツに渡り、結局台湾に戻って自分のペースで学べるオルタナティブ・スクールを設立。
しかし最終的にオードリー はそこにも背を向けて、「いかなる教育方法にも所属しない」と決めるのです。

その後、彼はこれからもう二度と、いかなる教育体系にも属さないと告げた。自分は自分の道を歩き、〝こうあるべき〞というもののために生きることはしないと。
『人は完全なるもので、今を生きる実体だ。だから自分はもう人を傷つけないよう誠実でなければならない』と言った」
「卒業証書も、卒業資格も、進学も必要ない――
 これは周囲の人たちにとって、彼が小屋に閉じこもるよりもさらに受け入れ難いことだった。

こうして結局学歴は自分には「いらない」と結論づけ、アメリカの大学にも興味を示しません。それを母親がサポートするのです(父親は最後まで学歴にこだわったようです)。

そして小学校から好きだったパソコンで、プログラミングの道に入っていき自分の会社を設立するのです。

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凄まじい内容で、まさに「戦争」でした。

つくづく「完璧な学校はありえない」と思います。

オードリーさんは結局お母さんと作ったオルタナティブ・スクールですら自分には「いらない」と決定づけてしまったわけですから。

子どものニーズをどう満たすかーーこれは私も子供のホームスクール時代、よく先生たちと話したことです。ニーズは時期によっても変わります。我が家の場合は、知識を追求したホームスクール時代には、「同世代の仲間をどう作るか」が課題でした。学校に戻った今は「仲間はたくさんいるけど、自分の知識を探求する時間が足りない」です。

日本でも教育論争はあちこちで行われていますが、今不登校で悩んでいる親には、ぜひ手にとってもらいたいと思います。

それではまた!

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