海外の「日本型会社」で起きるギャップ
マレーシアの日系企業で働く日本人の若者から、職場の不満を聞くことがあります。それは割と日本と似通っています。
「上司が飲みニケーションを強要する」
「職場の怒鳴ってて嫌」
「休日出勤・時間外の仕事を強制される」
「朝礼が嫌」
「無駄な時間が多すぎる」
「直行・直帰を認めてもらえない」
etc etc。
そんなわけで、採用条件とか、仕事内容に不満があるわけじゃないのに、大勢が辞めていくのです。
一方で、マレーシアの日系企業からは、日本人を現地採用してもなかなか長続きしないという話を耳にします。
上司たちは「最近の若い子はすぐ辞める」「育ててるのに、わかってくれない」「昔のコはもっと根性があったのに」などと愚痴っています。
えっと……。ハタから見れば、そこには大きな前提条件の違いがあります。
もうね、どこも面白いくらいパターンが同じです。
企業だけじゃなく、ボランティア団体にも似たような話があって驚きました。
経営者と働く人の間にギャップがある
おそらく、経営者として東南アジアに出てくる人と、海外に働きにくる人には大きな差があります。
海外に出てきている若者には、日本に合わないからという理由で来ている人が結構います。
日本の飲みニケーションや長時間労働などの文化がいやで、新天地を求めてきている人が一定数いるわけです。
ところが、経営者として東南アジアに出てきた人は、真逆です。日本でそれなりの成功体験をつみ、それを再現したいパターンが多いのです。
経営者に悩みを聞くと、「現地の社員に日本の常識が通じない、遅刻したり納期を守らなかったり報告がなかったりする」などと言っています。日本式に社員を教育したい人も多く、最近では、日本式にマレーシア人社員を教育するためのシステムが始まりました。そして古くに東南アジアに出てきた人は、昔の日本の感覚そのままでいることもあるっぽく、今の日本の会社よりもさらにブラックに体育会系になっていくこともあります。
彼らがわざわざビザを出して日本人を雇うのは「日本式のやり方を再現するため」だったりします。
そのため、日系企業に入っても働く人と経営者との価値観が平行線なんでしょうね。
ほとんどの人は無理なので辞めていく、という悪循環が起きています。
この二つを近づけるのは至難の技です。
大事にされていると思うと、人は頑張れてしまう
ちなみに、日系企業だけではなく、現地の会社にもブラックなところや怒鳴る人がいるところ、あるんです。
実は私が以前いた現地の会社も、労働条件で言えば正直日系企業と大差ないブラックぶりでした。社長は外国人でしたがワンマンで、労働時間も長く、いつ終わるかわからない会議が年中あります。チャイニーズ・ニューイヤーの2日目に働いている華人がいるといえば、現地の人には激務っぷりを想像してもらえるのではないでしょうか。
ところがいくつか違うところがあるのです。
それは社長が部下にそれなりに尊厳を持って接してくれていたこと。そのため社長が愛されていたこと。職場で怒る人がおらず、いつも雰囲気が良かったことです。
それこそ、社員はマレーシア人ばかりでしたが、先日遊びに行ったら、数年経つのにかなりの人が同じ職場にとどまっています。これにはびっくりしました。
そういえば、以前一緒に働いていたマレー人は給与が大変少なかったのですが、「仕事が楽しいから僕はここにいる」と言っていました。
どんなに条件が悪くても、「自分が大事にされている」「いる意味がある」という実感があると、人は頑張れてしまうのかもしれませんね。
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