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大企業のサラリーマンも楽じゃない

自著に対し、いろんな人からポツポツ感想をいただいてます! ありがとうございます。

実は「人生観が変わった」と言われる方、男性、それも有名大企業や公務員で長く勤めている方が多いかも。女性の方の感想の方が、どちらかというとクールで「ふーん」って感じかなぁ。

実は私のTwitterのオーディエンス(読者)も、意外なのですが、男性が多いです。今も、男性62パーセント、女性が38パーセントです。Twitterって男女の利用率だと女性の方が高いそうですが、逆転しています。

私は長年、男性読者が90パーセントという雑誌で仕事してるのも、関係してるかもですね。

我慢し続けてきているのは男性が多い

さてさて。

私は日本の実社会を離れて長いので、「ネットの闇落ち現象」によって、若干のバイアスがかかっていることは認めつつ、
「我慢の練習をして、ずっと辞めないで耐えてきている」のは、ある程度の年齢以上の男性が多いのかなと推察します。

大企業のサラリーマン、お給料も良いし、安定してます。
美味しく見えますけど、内情はそこまで楽じゃない。

そりゃ、フワッと転身できちゃう人や、むちゃくちゃ楽しそうにサラリーマンやってる人もいます。私の友人にも何人かそういう人がいて、「転勤はワクワクする」「でかい仕事ができるのがサラリーマンの醍醐味」などと言って前向きです。すごいなーと思いますよ。私も会ってて元気が出ます。

ただ、男性はやっぱりプライドも高いし、弱みを見せない人が多いですから、内心どう思っているのか、他人に話す人は少ないんじゃないのかなっと。だから、すごく仲良くなると、「本当は転職しようかどうか、悩んでいて……」などと打ち明けられることもあるわけです。私の夫も滅多に弱音は吐きませんが、たまーに悩んでました。

けど、競争社会で、転勤や異動を繰り返していたら、そりゃ合わない上司もいるし、合わない職場もあります。通勤だって辛い。その上、食べさせないといけない妻子を背負ってたりして、やめた経験もないし、どうなるかも不透明。ホント逃げ場がないとキツイです。

女性って、出産や結婚で辞めるチャンスがあるんですね。よく寿退社などといって辞めますが、あれは結婚をエクスキューズに会社を辞められるチャンスでもある。

日本って子育て中の女性にも、かなりキツい環境です。それはあちこちで語られてますし、私が書籍を書いた動機にもなってます。しかし、同様に子育て中のサラリーマンも、なかなか大変な状況なんですよ。

「どっちが大変だ!」と比べても意味ないなぁ、とは思いつつ。

「ウシジマくん」が描くサラリーマン家庭の辛さ

それを本当に上手に表したのが、「闇金ウシジマくん」という漫画の「サラリーマンくん編」なのですが、この漫画、企業戦士の辛さと子育て中の専業主婦の辛さを両方描いていて、読んでいてとても他人とは思えません。

この「サラリーマンくん編」の主人公は、ウシジマくんの登場人物としては、珍しく実に穏やかなタイプのまともな人なんですね。

一番胸にこたえるエピソードは、幼い子供と遊ぶ約束しているのに、わがままなクライアントと鬼のような上司に囲まれて、緊急に会社に行かねばならなくなり、ワンオペ育児の奥さんがブチ切れて家出してしまい、主人公が一人ぼっちになってしまうところです。

そして「何のために仕事しているんだろう」と虚しくなる。奥さんは冷たいし、話を聞いてくれるのは、風俗の女性と昔の友達だけです。

この「昔の友達」は遊び人で自分のためだけに生きているような人ですが、それもまた虚しいようで、内心苦しんでいます。自分のためだけに生きるというのも生きる目的がわかりにくく、やはり辛いようです。

我が家も、子供が小さい頃の夫は地方出張ばかりで不在でしたので、私は奥さんの方の気持ちがすごーくわかるのですが、同時にこの主人公の男性の辛さも伝わってきて、「どっちも幸せになりたいだけなのになぁ」と、切ないものがあります。

ワンオペ育児で夫に苛立ってる人もぜひ読んでみてください。夫がなぜ会社から遅く帰ってくるのか、理解が深まります(ただ、深まったところでイライラが終わるわけじゃないとは思いますが)。

なぜ、企業戦士と子育て中の主婦が辛いかというと、どちらも「辞める」というオプションがない。子育ては途中で放り出せませんし、子供を育てているサラリーマンも、おいそれと簡単に会社を辞められないわけです。

子供の数が多くて教育費がかかったりすると、もう辞める、というオプションがギャンブルになってしまうわけですよね。

余談ですが、この作者は取材を重ねて漫画を描いているそうで、だからエピソードの一つ一つに現実味があります。ヤクザを描いた回は、人間離れした人たちが出てきますが、市井の人を書いたものは、どれも心に沁みてくるほどリアルです。

家庭が「憩いの場にならない」悲劇

一番キツイのは、この「サラリーマンくん編」のように、家族が憩いではなく、戦いの場になってしまっている人たちかな。仕事の要求がキツすぎて、家庭にほとんどいることができず、そこで奥さんの怒りが溜まって、家庭内に不満が渦巻いてるパターン。

フラリーマンとか批判されますが、何となく理解できます。外に居場所を求めてしまうんでしょう。そして日本にはそういうサラリーマンを対象にした産業がやたらいっぱいある。遊んでいるように見える男性の行動が、子育て中の女性陣の怒りに余計に火をつけてしまい、子育て家庭が戦争状態になってしまう。

マレーシアの男性はどうかと言えば、そもそも終身雇用じゃない人が多いし、サラリーマンの給与が良くない。だからか、そこまでプライドが肥大している人が少ないです。

家族の何人かで協力して家計を支えたりしますし、積極的に投資したりして、会社にしがみつかないで起業する人が多いのです。

そしてイスラムの国ということもあり、飲酒文化が他国と比べると少ないです。そして家族を大事にする人が多いです。

長時間ダラダラできる飲み屋も少ないし、男性が愚痴を言えるような相手のいるバーやスナックみたいなのが少ないんですね。
風俗は表向き一切禁止ですし(あるにはあるのですがリスクもあります)、見ていると、伝統的な家族を中心とする価値観も強く、男性もよく子育てに参加します。つまり日本とだいぶ価値観が異なります。

そんな訳なので、日本人の駐在の人にはちょっとキツイ部分もあるかもです。フィリピンやタイの方がよかった、と言う人もいます。でもタイなどにいくと、やっぱり夫婦仲が悪化する駐在さんが増えるそうです。

終身雇用制度が崩れるのは、いいことかもしれない

日本でも終身雇用制度が崩れていくと、多分マレーシアのサラリーマンのように給与が下がっていきます。しかし、悪いことばかりじゃないかなっと。なぜなら、男性の自由度が上がっていくからです。

「一度も会社を辞めたことのない」人たちも、他の可能性を試すことで、社会の流動性が高くなります。国は副業を勧めていますが、副業も、何らかの風穴になるかもです。

問題は、その人たちの受け皿がホントにあるのか、です。

受け皿がないと一気に社会が不安定化しますから、定年を撤廃するとか、年齢差別をやめるとか、スキルセットを更新する仕組みとか、何か思い切った施策が必要になるかもですね。

それではまた。


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