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腰痛はレントゲンでわかるのか?

腰痛で整形外科クリニックなどに行くと、必ずといってもいい確率で撮るのが「レントゲン」です。

そして、「少し神経の通る管が狭くなっている」だったり、「少し椎間板が狭くなっている」といった具合で、脊柱管狭窄症などの診断名がつき、お薬を処方されるのが多いのではないでしょうか?

しかし、本当にそれで腰痛の原因がわかるのでしょうか?

…私は難しいと考えます。

なぜかというと、痛みのない、健康な人でも椎間板の異常(変性)などは7割近い数で発見されるからです。

痛みのない人でも多くの確率で異常が見つかるのですから、画像を撮って異常があったら、じゃあそれが腰痛の原因です。というのはあまりにも理屈が通らなくないですか?

検査で大事になる「感度」と「特異度」

少し専門的な話になりますが、医学的な検査では「感度」と「特異度」という2点が非常に重要となります。

一つずつ解説していきます。

「感度」とは

ある疾患に罹患している場合に、当該検査で陽性結果が生じる可能性

「特異度」とは

ある疾患に罹患していない場合に、当該検査で陰性が生じる可能性

少し分かりにくいかもしれないので、例えると、コロナに感染している人がきちんと検査で陽性になり(感度)、コロナに感染していない人が検査できちんと陰性になる(特異度)ことを指します。

では、話を戻してレントゲンに当てはめて考えてみると、腰痛を訴えている人がレントゲン検査で、椎間板の異常が多く見つかり(感度が高い)、腰痛を訴えていない人にもレントゲン検査で、椎間板の異常が多く見つかっている(特異度が低い)。

理想的な検査は感度が高く(陽性者を見つけ)、特異度も高い(陰性者は排除)ことになるので、レントゲン検査はそれ単体では信頼性は低いと言えます。

木を見て、森を見ず

少し話が逸れますが、例えばある会社のことを評価するのに、社員1人だけを隔離して観察していても、その会社全体の能力はわかりません。

バリバリ外では働いていても、家ではグダグダ生活を送っている人も多いと思いますし。

そんな1人のことをいくら詳細に観察したところで、会社というシステムの全体像は把握できません。

なにが言いたいかと言うと、いくら椎間板や細かい組織の異常を検査で見つけようが、それが全体のシステムにどう影響を及ぼしているのかと言うことはわからないと言うことです。

森、全体のシステムを理解したいのに、一本の木ばかり観察していてはわからないのと一緒です。

では「ナニ」が原因なのか?

腰痛の原因はコレだ!とスパッと言えれば、痛快なのでしょうが、残念ながらそんなに簡単な問題ではありません。ひとえに腰痛と言っても痛みを訴える場所も、痛みが出るタイミングなども人によって大きく異なります。

例えば、人によっては歩く距離が長くなると痛みが出ると言う人がいたり、朝起きた時に痛くて、動いていたら徐々に和らいできたりと言う人がいたり…。痛みの場所も人によって広範囲に痛かったり、お尻のところが痛かったりと様々です。

こんなにも訴える病態が様々な腰痛ですが、人の身体の構造やシステムから、その腰痛はなぜ起こっているのか、ある程度の説明はできます。

しかし、それには複数の検査を組み合わせることが大切になります。

具体的には、問診で症状の特徴(どんな時に痛むのかなど)を把握し、既往歴(手術の経験や、過去のケガ)なども合わせて病態への影響を把握し、身体検査で各組織の状態を予想して、歩行や動きを見て全体のバランス状況を確認し、それらを組み合わせて論理的に辻褄があうのかを吟味する必要があります。

これらを丁寧に行おうと思ったら、最低でも30分ぐらいはかかります。

整形外科や接骨院で治療してもらった経験がある方はわかると思いますが、そんなに検査に時間がかかりましたか?ちなみに、医師の診察時間の平均は、世界的に5分程度だと言います。

この現状は、経営や法律的な事情がからんでくるのでなんとも言えませんが、その腰痛はどんなことが原因で起こっているのかを説明するには時間がかかると言うことです。

自らレッテルを貼らない!

整形外科クリニックなどで、背骨がこうなっているから腰痛になっていると言われ、これは一生付き合っていかなければと考えている方もいると思います。

また、歳だから仕方ない、ヘルニアだから…と諦めている方もいるのではないでしょうか?

でも、今まで述べてきたように、それが原因とは限りません。

私が担当した患者さんでは諦めていたけど、良くなったと言う方も多くいます。

歳だから…ヘルニアだから…と自らレッテルを貼って良くなる可能性をなくさないで欲しいです。

身体が変わるのに歳は関係ありません!椎間板がどれだけ変形していても、腰痛は改善する可能性があります!

今回は長くなってしまったので控えますが、次は腰痛を引き起こす要因などについて少し掘り下げていきたいと思います。

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