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第4回 「職員会議」、どうしてますか?

「職員会議」

この言葉は、学校に勤めている方はもちろん、多くの方がご存じではないでしょうか。
私は小学生の頃、「〇〇先生、今日の放課後は職員会議だから遊びに来れないって言ってたよ」みたいな会話を友だちとしていた記憶があります。
今、思えば、放課後遊んでくれた担任の先生、めちゃくちゃいい先生だったなぁ(笑)。

このように、学校の職員たちが集まって行う職員会議というものがあるということは、多くの方がご存じですが、その内実がどのようなものかはあまり知られていないと思います。
実はこの職員会議、私が小学校に就職してからいろいろと「モヤモヤ」する場でもありました……。

今回は、私が職員会議にどのようなモヤモヤを感じていて、どのような職員会議を目指して実践しているのかについて、お話ししたいと思います。

1.事前会議が、本当の職員会議?


私の初任校では、毎月1回の職員会議がありました。
そして職員会議の1週間前に、「企画会」という名の「事前会議」(以下:事前会議)がありました。
この事前会議には、学校長、副校長、教務主任、学年主任、養護教諭がレギュラーとして参加し、さらにその月の提案者が加わります。
初任校は全学年2学級の学校だったので、つまり事前会議には職員の半数以上が参加します。

この事前会議の目的は、先輩から「職員会議を円滑に進めるため」と教わりました。
職員会議はだいたい1回45分~60分で、毎月5~10項目の審議を行います。
一つひとつの審議事項にみんなが意見を出していると、とても会議を時間内に終えることができませんから、事前会議で気になる点を指摘し、提案者が当日までに修正して提案するという流れとなっていました。

若手の私にとって、事前会議での提案はとても緊張しました(本当です!)。
私は体育主任をしている期間も長く、運動会の全体計画などを提案することが多くありました。
そのときにも、「この日程では~」「〇〇なときはどうすればいいんですか?」などたくさんの質問、ご指摘をいただきます。

その場でうまく答えられなかったときは、職員会議までの1週間、必死に修正します。
そして、職員会議の前に、ご意見をいただた先輩方に修正案の「お伺い」をたて、ご理解いただいたうえで当日を迎えます。

つまり、職員会議当日は、職員の6~7割が提案内容をすでに知っているのです。その場で細部まで説明し、とくに意見や質問も出ずに承認されます。
若手の私は、提案をするとき以外は職員会議で意見をする勇気もなく、ただ聞いているだけ。
「もう事前会議だけでいいじゃん……」なんて思っていました。

ちょうど先週、同じ横浜市で働く仲間と話したとき、その学校ではこのような事前会議がまだ行われていると聞きました。
まだ多くの学校でこのような事前会議が残っているようです。

2校目の学校には、事前会議はありませんでしたが、職員会議では多くの場合、提案者の意見が尊重され、スムーズに会議が進みます。
でも、ときどき提案内容に反対意見が出ます。

たとえば、異学年で全校遠足を行うという提案がなされました。
その提案に対して、「移動時間が長い遠足となるので、実施しない方がよいのでは」という反対意見が出されます。
それに対して提案者から、「異学年交流には価値があるので、移動時間が長くても行うべきです」といった感じです。

それぞれの意見に賛成・反対は出るけど、みんなが納得する新しい折衷案は生まれません。
結果、「提案チームで練り直してください」などとうやむやに終わってしまいました。

2.提案者へのリスペクトを


この2つの学校の職員会議を経験して、私は、「どうすれば、自分がより参加した充実感を得られる職員会議になるのだろうか」とずっと考えてきました。

そしてそのなかで、「新しいことをやりたいと思っても、実践する前に周りの人たちから『それはむずかしいんじゃ』と言われ、チャレンジできなくなってしまう」という経験に「モヤモヤしているんだ」という思いが生まれてきました。

つまり、職員会議の問題は、
・会議の進行がスムーズかどうか
・意見が対立したときに折衷案を上手に出せたかどうか
などではなく、「提案者(チーム)の提案に至るまでのプロセスにリスペクトが足りないこと」が問題なのでは、と考えたのです。

提案者が「なぜ、そのような提案をしようとしたのか」や、「提案を作成するまでどんな葛藤があったのか」といったことを確認することもなく、参加者が自分の経験や考えと照らし合わせて違和感があれば反対意見を出しています。

もちろん、反対意見を出すことが悪いと言っているのではありません。
職員会議という場においては、「提案が作成されるまでのストーリー」を知ろうとせずに、それぞれが感じたことを伝え合っていても、考えをまとめたり決めたりすることはできないと思うのです。

このことを踏まえて、「提案者の思いを尊重し、みんなでやってみて、実践した後に厳しくフィードバックし合う」という職員会議をつくっていこうと決意しました。

ですが、、、
私が3校目とした着任した現任校では、なんと、約10年前に所属した初任校と同じような事前会議が行われていたのです(笑)。先ほど「まだ多くの学校でこのような事前会議が残っているようです」と言いましたが、まさに本校もそうでした。
私は立場も変わり、主幹教諭として事前会議に毎月参加することになりました。

すると、やはり提案担当者の若手が、
「事前会議、緊張するんですよね……」
「ダメって言われたところ、どうしたらいいんでしょう……」
などと話しています。
提案内容に先輩方がいろいろとつっこみを入れるという状況も、学校が違えど10年前と変わっていませんでした。

私はこのような状況をふまえて、「提案者の思いを尊重しながら、実践後に厳しくフィードバックを行う」職員会議の場をどう実現していくか、試行錯誤を重ねています。

そしてその結果、私の着任4年目にして、本校の職員会議は「提案内容を検討する場」ではなくなりました。
提案内容は事前に承認され、職員会議当日は、「学校教育目標の理解を深めるために、教職員が対話を重ねる場」と変わったのです。

3.職員会議、変えつつあります。


本校の職員会議をこのような場に変えるために、約2年かかりました。
そのプロセスで取り組んだ3つのことを紹介します。

①校務分掌を3つのチームに

1つめは、校務分掌を変えました。

これまでは、教科担当や事務分掌、さらに運動会や卒業式などの特別委員会と細かくチームが組まれていました。
ですが、これだと日替わりメンバーで会議をすることになるため、毎日の放課後が何かしらの会議で埋まってしまったり、検討メンバーが少なく、新しいアイディアが生まれにくかったりするという課題がありました。

そこで、益子照正校長に多くの助言をいただきながら、教職員を3つのチームに分けました。
ざっくり言うと、①人権関係、②行事関係、③安全管理関係のようなチームです。そして、この3つのチームにすべての提案内容を割り振り、提案作成をするようにしました。

なぜ、3つかというと、本校にいる4人の主幹教諭がそれぞれのチームに入るようにするためです。4名のうちの一人は教務主任で、教務主任はチームを超えて全体を司る立場に配置することを目指しました。

本校は、各学年3~4学級あります。
組織を変えた1年目は、「この仕事は〇〇さんにやってほしい」という思いをもとに役割分担をしたところ、1つのチームに同じ学年のメンバーが3名いたり、あるチームには4年生が一人もいなかったりということがありました。
今年度は、「学年の職員は各チームにそれぞれ分かれて配置するようにしています」という教職員の声を受けて、1つの学年のメンバーがそれぞれのチームに配置するといった改善を重ねています。

②事前会議にざっくりした提案

2つめは、職員会議までのプロセスを変えました。

これまでは、
①提案者が提案を作成する
②チームで検討する
③事前会議に提案する
④事前会議の内容を踏まえて修正し、職員会議で提案する
というプロセスを踏んでいました。

これを、まず、「事前会議」を「運営会議」(前回記事参照)と変えました。
①運営会議で提案の方向性を学校長と担当主幹教諭で確認する。
②担当主幹教諭を中心にチームで作成する。
③職員会議で提案する。
④実践した後にフィードバックする。

作成した提案内容を検討するのではなく、作成する前に、「こんなことをやりたい」くらいのざっくりとした提案者の思いを運営会議に提出します。そこでは、その提案者の思いが、学校長の経営方針から大きく逸れていないかを確認します。それが踏まえられていれば、提案者の思いを尊重し、実践終了後にフィードバックを厳しく行うということを実現できるようなプロセスに変更しました。

ですが、このプロセスを変えたとしても、組織のあり方が変わるには経験と時間が必要です。

最もむずかしかったのは、提案者が「こんなことをやりたい」というざっくりした思いを運営会議に提出することです。
当初は「こんなことをやりたい」が思いつきませんでした。
「やりたいこと」の前に「やらなければならない」ことを考えてしまい、前年と同じような提案が運営会議に提案され、運営会議から「もっと〇〇してほしい」と改善への意見だけが提案者に返され、提案者が四苦八苦するという悪循環が生まれていました。

「何も枠組みがないところで、ざっくりとした思いを伝えるというのはむずかしいかも」ということで、今で「そろそろ運動会の提案づくりを始めるみたいですが、留意点はありますか?」と運営会議で先に提案の方向性を示し、あとは任せるという方法をとっています。
この方が、新しいチャレンジを考えたあとに、学校長はじめ多くの先輩方に内容をひっくり返されることはありません。「とりあえずやってみる」でよい、という安心感のなかで提案を考えることができると感じています。

③職員会議を対話の場に

3つめは、職員会議当日のあり方です。

このあり方と行い方が少しずつ浸透してきた昨年度は、職員会議で内容の詳細を確認する質問はあっても、提案内容に真っ向から反対する意見はほとんど出なくなりました。
他方でそうなってくると、今度は「職員会議が『ただ集まって話を聞くだけの場』に形骸化してきているのでは……」という疑問がわきます。
職員会議の場は、限られた放課後に、全教職員が長い時間集まることのできる唯一の場でもあります。せっかくみんなが集まるなら、もっと意味を感じられる場にしたいと強く思いました。

そこで、職員会議を各自の提案を聞く場ではなく、対話の場にしたいと考えたのです。
職員会議は「校長の職務の円滑な執行に資する」(学校教育法施行規則48条)に立ち返り、「学校教育目標の理解を深める対話の場」とすることにしました。

職員会議を「聞く場」ではなく、「対話の場」にするためには、それぞれのチームが提案する内容を当日までに理解しておく必要があります。これを実現するためのプロセスを次のように考えました。

①職員会議2週間前までにチームで作成した提案資料を教職員電子掲示板で共有する。
②職員会議1週間前までに各学年のチームメンバーを中心に提案資料の内容を検討し、質問意見があれば、掲示板上でコメントする。
③提案内容にコメントがある場合は、掲示板上でやり取りを行い、職員会議当日までに承認を目指す。

職員会議当日までに承認されていない提案がある場合は、その論点について全教職員で話し合います。③のやりとりがあったとしても、当日までに全提案について承認された場合はみんなで検討する内容がなくなるので、予定されている職員会議の時間は全教職員で対話する時間となります。
 
この3つめの職員会議は今年度からスタートし、5月と6月の職員会議は、全教職員で対話をする場とすることができました。
ちなみに、5月は、「4月1日に書いた『こんな職員室にしたい!』と書いた『全体性のたまご』を見てどう思う?」というテーマで、6月は「あなたのイメージする職員室(クラス)になっていますか?」というテーマで対話を行いました。

◇    ◇

残念ながら、文字数の関係で今回はここまでとなります。
次回は「実際に、どんな感じで対話が行われてるの?」「やってみてどうなの?」という具体的な様子をお伝えできればと思います。

みなさんの職員会議はどんな感じですか?
ぜひ、みなさんとやりとりができると嬉しいです。コメント欄にお願いします!
今回もお読みいただき、ありがとうございました。
次回以降もよろしくお願いいたします!

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