「ウェルビーイングな学校をつくるーー子どもが毎日行きたい、先生が働きたいと思える学校へ」
令和5年度からの教育振興基本計画で、柱の1つとなっている「ウェルビーイング」。その実現に向けた方法はさまざまです。本書は、著者の中島晴美先生が「ウェルビーイング」の考えを取り入れ、勤務校の全ての教職員の理解のもと、一丸となって実践されてきた学校づくりの記録です。
本書「はじめに」より、ウェルビーイングな学校づくりに込められた思い、そしてその実践による子どもたち・先生たちの変化の一端をご紹介します。
なぜ、「ウェルビーイングの考え方」を取り入れたのか?
私がウェルビーイングの考え方を学校経営に取り入れたいと考えたのは、次のような思いからです。
先生方に幸せでいてほしい(幸せに働いてほしい。幸せな人生を築いていってほしい)。
子どもたちに幸せでいてほしい。幸せに生きる力を身につけて育ってほしい。
学校が、幸せで笑顔いっぱいで、誰もが安心して学び、自分の力を伸び伸びと発揮することができる場所であってほしい(教職員も子どもたちも)。
学校のウェルビーイングを実現することで、学校現場が抱えるさまざまな課題を少しでも改善の方向へ導きたい。教職の本当の魅力を再現したい。
保護者、地域へもウェルビーイングの考えが広がり、多くの人が人として幸せな人生を歩んでほしい。
待っているだけでなく、現場だからこそできることをまず実行する
今、教育現場は、多様な課題を抱えています。教職員の離職・病気休職者の増加、人員不足の深刻化、そして貧困、虐待、ヤングケアラーの問題等、子どもたちを取り巻く環境も厳しくなっています。このような大変な状況の中で、学校では、教職員も子どもたちも頑張っています。今までと同じようにずっと頑張っているのです。
このまま頑張り続けることは可能でしょうか? このままでは、何も変わらず、抱えている課題が大きく膨らみ、明るい未来は見えないのではないかと危機感を覚えます。「変えなければ!」と強く思うのです。
教職員の定数を増やすことや教員の仕事内容の見直し、学校運営に必要な予算の確保等、行政の動きや物理的な改善はもちろん必須です。それらについて心から早期の改善を望みます。しかし、他者の動きだけにすべてを委ね待っているのではなく、この危機を乗り越えるために、現場にいる私たちだからこそできることを実行していく必要があります。ウェルビーイングに向かいポジティブな発想と行動をしていくこと、その小さな一歩が積み重なり大きな一歩となるはずです。
「ウェルビーイングに関する学術的な知見」を共有することから
私は、かねてより自身で学んできた「ウェルビーイングに関する学術的な知見」を学校現場で共有し、実践していくことが、その第一歩であることを確信し踏み出しました。
「ウェルビーイング」とは「よいあり方」、そこから「持続的な幸せ」を意味します。「よりよいあり方をとおして幸せな状態である」ということです。「ウェルビーイングに関する学術的な知見」とは、さまざまな学問や科学的研究によるエビデンスが証明した「こうすればよりウェルビーイング(幸せ)になる」という知見です。
「幸せ」には、瞬間的に感じられる幸福感もあります。また、今苦しいとしても「自分は正しく生きている」という確信に支えられている幸福感もあれば、長い人生を振り返って、「私の人生は総じて見れば幸せだった」と感じる幸福感もあります。この多様な幸福感につながる「Being=ありかた」の学びが、ウェルビーイングの学びです。
この知見を、個人のウェルビーイングから組織(学校)さらには、保護者や地域のウェルビーイングへと広げることで、前述した5つの願いが実現されると考え、全教職員・学校運営協議会委員(保護者・地域・学識経験者からなるコミュニティ・スクールの核となる組織)との共通理解を図り、「ウェルビーイングな学校づくり」にチャレンジしています。
幸せな大人の姿を見て、幸せになる力をもった子どもが育つ
私は管理職として、ウェルビーイングを体現し、学校全体と教職員一人一人のウェルビーイングを高める方法を思案・実行し、教職員は自身のウェルビーイングを高めるとともに、担当するクラスと子どもたち一人一人のウェルビーイングを高めることをめざしています。
幸せな大人の姿(Being)を見て、幸せになる力をもった子どもが育ちます。まずは、教職員や保護者が幸せであることが、とても大切なのです。
取り組み開始から2年半での変化
令和2年度からのチャレンジにより、勤務校ではさまざまなエビデンスが確認できてきました。
詳細は本書終章で述べていますが、取り組み開始から約2年半で次のような効果が出ています。
次期教育振興基本計画の策定に向けた議論のなかで、「ウェルビーイング」が柱のひとつとなりました。これからは、教育もウェルビーイングの実現をめざそうとしています。このことは、VUCAの時代を乗り越え、幸せな日本、世界を築き上げるために、人々の向かうべき道であることを示しています。
そのような中で、今後、「日本型ウェルビーイング」の研究が広がっていくことと思います。本校の取り組みがその先駆けとなり、その考え方と実践を丁寧にお伝えすることで、未来をつくる子どもたち、学校に関わるすべての方々の真の「ウェルビーイング」へとつながることを願っています。
本書を手にとってくださった皆様ご自身、そして所属されている組織(学校や職場、地域のコミュニティ、家庭等)のウェルビーイングが高まり、皆様が今まで以上に幸せな日々を過ごされることを願い、本校の実践の一部をお伝えしていきます。
【本書の目次】
本書の刊行記念イベント「子どもたち・先生たちのウェルビーイングのために、今、できること」を教育開発研究所 公式You Tubeチャンネルからご覧いただけます。著者の中島晴美先生と、ゲストに妹尾昌俊さんをお迎えし、「ウェルビーイング」な学校をどう実現させていくか、語り合っていただきました。本書とあわせてぜひご覧ください↓
本書の詳細は小社オンラインショップから↓
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