〔戯曲を稽古して通してみようの会〕全員稽古場日記/通し編(part 2)

「背信」稽古場日記を全員で書いてみようという企画。
今回は最終日の通しの全員稽古場日記です。

そのpart2です。

(part1はこちら

※掲載は原稿到着順です。

【太田旭紀】

はじめましての顔合わせから約1ヶ月、普段の舞台公演に比べたら稽古も圧倒的に少なく(自分のパートは5回くらい)本当にあっという間に終わってしまったけれど、こんなに充実した気分で終われたのはきっと上野さん含めた参加者みんなのおかげだと思う。

個人的にはほぼ初めての海外戯曲、しかも自分が任された役がまぁ難解で、最終通しでは本番さながらに緊張した。
相手役だった都倉さん、ほとけくん、齊藤さんには改めてありがとうと言いたいし、3人のおかげで楽しく戯曲に取り組めた気がする。毎回毎回全然違った演技をしてしまう僕にしっかり合わせてくれて、終わったあとには上野さんが的確にアドバイスをしてくれて、役者同士色々忌憚のない意見を言い合えたのは、あの時には当たり前のように感じたけどきっとすごく恵まれていた環境だったと思う。

全部で6チームに分かれて作った作品は、同じ役を何人もの役者が演じたにも関わらずひとつの作品として成立していてとてもおもしろかった。特に自分と同じ役を演じた文さんと村山さんがどうやって役にアプローチしていってるのかめちゃくちゃ気になって見ていたけど、共感出来るところも「なるほど!」って思うところもあって勉強になった。

とにかく全シーンが、初めてこの「背信」を読んだ時よりも格段に面白くなっていて、そりゃ当たり前なことなんだろうけど、でも当たり前を当たり前に出来る環境は実は当たり前じゃないんだなぁと思った。自分でも何言ってるかわからない。

改めて今回の会に参加できて本当に感謝です。ありがとうございました。

太田旭紀

【綿貫美月】

こんにちは、綿貫美月です。
ついこの間始まったと思ったら、ついに通しまで終えてしまいました。

通し、本当に面白かった…!!

本読みの時に抱いたイメージから考えられないほど豊かで彩りのある作品に仕上がっていて。
こんなに膨らませるものなのかと、改めて演劇の面白さを感じました。
私出るの最後のシーンだったんですが、皆様が繋いでくださった素敵な物語を観てから演じることで、それぞれの役への解釈も深まりより演じやすくなったことも印象的でした。
また1人で全編やってみると、考え方、演じ方も変わってくるんだろうなと思いつつ…いつか挑戦してみたいなぁ、なんて思いました。

今回、私が挑戦させていただいたのは、不倫の始まり、ジェリーからのアプローチを受けるエマだったのですが、すごく苦戦しました…。
ジェリーからの熱烈アプローチを受けるのですが、エマは台詞としては多くなく。
その分(いやそうじゃなくても大事なんだけど)、相手のセリフや状態にどう反応するかの受け手の演技が重要で、基本的なことではあるけど、その難しさを改めて考えさせられました。
日本人の書いた話ではなかったこともあるのか、よりそれを痛感できた気がします。
また、普段、やっている役作り、戯曲の読み方が通用せず悪戦苦闘。
色々アドバイスいただいたり考えたりしてエマ像を再構築して演じるに至りました。
わからなかったら振り出しに戻るのも大事だな。
皆様本当にありがとうございました泣

あとほんと、余裕を持つの大事ですね、見てるようで何も見えなくなっちゃう。

たくさん反省もありましたが、学びも非常に多く充実した時間でした。
素敵な方々と知り合えて、一緒にお芝居できて本当に楽しかった。
企画し演出してくださった上野さんはじめ、共演者の皆様、施設など関係してくださった皆様に心から感謝いたします。
また皆様とご一緒できるよう、精進していきたいと思います!

(稽古期間中、カフェや電車で台本読みながら反応考えてコロコロ表情変わってたため、店員さんや周りの人にやばいやつだと思われてたかもしれない…もし今後そういうところを見かけても、温かい目で見てください…笑)

【松浦志帆】

2/12(日)
■稽古場日記 第2話にして最終話
「好き!がいっぱい」の巻

調子に乗って「○○話」ってつけていたけど、結果2回しか書かなくてちょっと恥ずかしい・・(笑)振り返りも兼ねて、通し後に伝え切れなかった皆様への思いの丈を記します。

1        灘波愛さん(1場/エマ)
大人なエマが持つ色香に魅了されました。元カノ感も頬を赤らめてほろ酔いな感じも、ちゃんと伝わってすごい。あと余談ですが倍速通しの夫婦漫才みたいなエマも好きでした笑

2        松下仁さん(1・2場/ジェリー)
この戯曲で、こんなにも笑いを起こせるのかと・・ジェリーのダメな部分を可笑しみと愛らしさに変えて(しかも自然体で)「人間って面白いな」と思わせてくださいました。

3        市原文太郎さん(2場/ロバート)
文さんのロバートは知的で余裕があってスマートで・・エマが離婚しないのが少し腑に落ちました。そしてこの雰囲気がベースだからこそ狂気な部分も際立って面白かったです!

4        小川結子さん (3場/エマ)
回を追うごとにエネルギーも切なさも増して、すごい・・戯曲の読解の深さもアプローチ方法を考えてチャレンジする姿勢もとてもクレバーで尊敬です!

5        小口準也さん (3・4場/ジェリー)
ストイックで演じることに真摯な方だなと。3場の悩み葛藤する様に揺さぶられました。4場はちょっとつれない感じで、エマ(私)をかき乱していただきありがとうございました笑

6        村山恵美さん (4場/ロバート)
村山さんのロバートはエマへの愛情が端々に溢れていて、おかげでエマ(私)も「あなたの妻♡」と思えたし、最後は包まれたい気持ちにさせてくれました。感謝です!

7        都倉有加さん (5・6場/エマ)
南国の花みたいな快活な雰囲気を纏いつつ、ナイーブで脆い一面も見える都倉さんのエマ・・心の襞がとても細かくて揺れ動くたびに引き込まれました。

8        太田旭紀さん (5・7・9場/ロバート)
太田さんのロバートは、穏やかに話しているけど目は笑っていなくて、じわじわと真綿で首を締めてくる感じが怖い、でも切ない・・まさに私のイメージ通りのロバートでした!

9        佛淵和哉さん (6・7場/ジェリー)
佛淵さんのジェリーは、飄々としていて、ひらっひらっと音が聞こえてきそうなくらい軽やかで自由で。悪気はないけど“クズ”な感じが良い意味で憎らしくて素敵でした!

10     齊藤由佳さん (7場/給仕)
給仕役というコミカルだけど難しい役を、ひた向きに楽しんで演じているところが印象的でした。「交通渋滞!」と叫ぶ様子は、劇研イズムを感じて勝手に親近感・・笑

11     夏アンナさん (8場/エマ)
下手奥の袖で、シチューを作るマイムをめちゃくちゃ細かく丁寧に慎ましやかにやっている・・・と思ったらウォッカを豪快に注いでかっ食らう、思い切りの良さがツボでした笑

12     國崎史人さん (8・9場/ジェリー)
「この熱い愛の告白、どうやるんだろう・・」と思っていたけど、台詞に負けない熱量で、時には床に大の字になって訴える國崎さんジェリーに拍手です!

13     綿貫美月さん (9場/エマ)
まだ不倫を知らない、ピュアで可憐な時代のエマがぴったり。そして綿貫さんの稽古場での気遣い、コミュ力は私も見習いたいと思いました!

14     上野友之さん(企画・演出)
読み合わせの時の席次表、ト書きを読む人への事前アナウンス、ハラスメント対策委員の設立、美味しい差し入れなどなど・・随所に気遣いと細やかさを感じて、こういう方だから競泳水着の繊細な作品はうまれるんだなと思いました。今回は貴重な機会をいただき本当にありがとうございました!

個人的には反省点も多々あるけれど、魅力あふれる「好き!」と思わずにはいられない皆さん達とともに「背信」に向き合えて楽しかったです。またどこかでご一緒できたら嬉しいです。ありがとうございました!!

【村山恵美】

***

2/12(日)

初日の稽古場日記にて、

「理由をつけてしまうことで、“自分がなぜそんな行動をしたのかが分からない”といった余白を失くしてしまうかもしれません。」

などと書きましたが、白状いたしますと、まずもって全ての行動に理由をつけきれなかった私です。

あれを調べて、これを試して、スカッシュテニスの体験に行って、とやってゆくうちに、あっというまに通しの日がきてしまいました。(筋肉痛にもなりました。)

だからといって、間に合わなくて残念…という感じでもなくて、ギリギリまでチャレンジしてやりきったなと思っています。

最終通し稽古での私は、ワインボトルとグラスを持つ手がカタカタと鳴り、
転換の段取りを忘れ、
開口一番謎の愛想笑いが飛び出すなどしていましたが…、
ジェリー役の小口さんと、エマ役の松浦さんのおかげで、シーンとしてはたぶん、今までで一番成立していたんじゃないかと。

そういった手応えはありつつも、【第四場のラストで、ロバートがエマにキスをするのはなぜか?】本当にしっくりくる理由は結局見つからず。

私が、ハロルド・ピンター『背信』の本当のたのしみに辿り着くにはまだまだかかりそうですが、
この『戯曲を稽古して通してみようの会』は本当にたのしくて、
みなさんによって作り上げられた『背信』はちょっと勿体ないくらいに豊かでした。
この場にいられることがありがたいなと拝む気持ちになりました。
そしてなぜだか自分の選択にすこし自信を持ちました。

おわりに、作中の好きな台詞を紹介します。

「ベルの音がどこかに残ってるような気がするもんだ。」

「すまながることはない。」
です。

ではまたお会いできますよう!

***

【齊藤由佳】

給仕役をやらせていただいた齊藤由佳です。発表会が終わりました。終わってしまいました。寂しいです。かなり寂しいです。本番も一日しかなかったので、心の準備(そろそろ終わるのね、おうけいです)ができていませんでした。油断していました。

通しですがとっっっても面白かったです。他の方も似たことをおっしゃっていましたが、『背信』の面白さが、素敵な役者さんたちの素敵なお芝居が繋がっていったことで、自分で読んだときよりも何倍にもなって色鮮やかに目の前で息をしていました。

「クオリティを考えなくていい(お客様に観てもらう企画ではないので)ことによって稽古での余裕や自由が高かった」みたいな話題も出ていましたが、内心思っていました。いやいやいやいや、めちゃめちゃクオリティ高いよ面白いよ!と。本当に観劇料払わなくていいのですか私!と。でも、とても納得もしました。お客様を意識した演出というか調整をしていくことが演劇作品は必ず行われると思うのですが、それをしない段階のお芝居を自由に探り合っていく過程がいかに面白くて大切なのかということに気づきました。

皆さんの表情が印象深く残っています。色々な顔を魅せてくれる戯曲なんですね。マスク生活だから余計に人の表情っていいなと改めて感動してしまいます。

給仕の好きなところをひとつ。仕事中に明るい所です。悩みのひとつやふたつはあると思うんです。給仕だって不倫中かもです。だけど明るいのは、仕事に楽しさや誇りがあるからとか、イタリア人だからとか理由は色々あると思います。そもそも悩みなんてないかもしれない。結局は何もわからないのですが、少なくとも人に対してオープンであれる余裕をもっている人なんだなと終わってみて感心しています。

短い間でしたが幸せな期間でした。とても安心して楽しく稽古ができる現場でした。上野さん(美味しいパンを配ってくださる優しい方です)や一緒の場だった都倉さんきのさん佛さん始め、他の皆さんとどこかでまたご一緒したくてしたくて、どうしましょう。夢が膨らみます。精進します。ありがとうございました!!!

【夏アンナ】

まずは貴重なご縁に感謝です...。無料で「背信」という作品を素敵キャストで観劇してしまい、なんだかすみません笑!参加している俳優さんの培われている演技体も、十人十色で見ていて楽しすぎました...。
普段の私だったら絶対お会いできない方ばかりでしたので、一歩勇気踏み出してこの場に参加出来ましたこと、改めて大変嬉しく思いました。
自分の芝居に関しては、最大限努力はしたはずでも、結局ここもう少しなんとかならんかったかなあとか考えたり...。
8場稽古場メンバーの上野さんと國崎さんには大変お世話になりました。良い稽古場でした。
上野さんのフラットな居方がとても好印象でした。ストレス無く、率直にわかりやすく課題点を伝えてくださったり、未熟な私の言葉も受け入れて、話し合いをして下さりました。演出家という上に立つ立場であるのに、ここまで驕らず、フラットな目線で居続けられるなんて特殊能力だと思います....。
共演者の國崎さん、仲良くしてくれてありがとうございます...!帰り道楽しかったな...。稽古場でも困った時や言葉に詰まった時に助け舟を出してくれたり、「受け売りなんですけど...」「僕も出来ないんですけど...」という謙虚な前置き付きで色々なこと教えてもらってめちゃくちゃ救われました...!
ここだけの話なのですが、國崎さんと同い年なのに、最後までお互い、苗字+さん付けで敬語を貫いたのは、自分の中で結構な実験行為です...笑!
わーー!お陰様で充実した稽古を過ごすことが出来ました。過去イチぶつぶつ台詞唱えた。
またどこかで皆様とご縁がありますように...!頼ってばっかじゃなくて、頼られるような自立した役者になれるように頑張るぞー!

【國崎史人】

二月十二日

晴れ。

本日、「背信」最終日でした。

約一ヶ月弱、ピンターの言葉と格闘したわけですが、わかったこととわからなかったこと、あるいは再確認したことがたくさんありました。

実は僕ら(特に若い)俳優は意外と劇的な、ある種、角張った言葉に普段触れることは多くありません。

普段、日常生活では、決していえないような激しい愛の言葉や相手を傷つける言葉、詩的で壮大な言葉を久々に喋ったようなきがします。

お客さんを入れての上演ではありませんでしたが、やはり他の俳優さん達が観ている前だと力が入ります。良いこともあるのですが、僕の場合は変な自意識がニョキニョキと芽生えてしまい反省です。いつになったらこの自意識から解き放たれるのでしょうか、、、そんな日は来るのか。

でもそれは皆さんが素敵だったから、悔しい。俺だって上手くなりたい。そんなことを考える通しでした。

最後にペアだった夏さん、綿貫さんにはとても助けていただきました。お二方とも知的で、上品で、積極的。

演技と人柄は関係ないという方もいるとは思いますが、僕はそうは思いません。やはりお芝居は人と作るものです。お二方がペアでとてもよかった。この場を借りてありがとうございましたと言いたいです。

最後に、この背信という作品、是非、上野さんが演出でやってほしいと思いました。ご時世的に不倫という題材がいいのかどうかわからないですが、この作品に出てくる人たちはそういう善悪、是か非かを抜きにして、とても平等だし、滑稽だし、愛おしい。いつか、上野さんの手で完成した背信を観たいなぁ〜なんて思っております!

楽しい一ヶ月弱でした!終わり!

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