津軽線は廃止して道路整備を

2022年8月の大雨により運休中のJR東日本、津軽線末端区間が、地元自治体、JR東日本などとの間で廃止も視野に入れた協議を始めた。

既に地元自治体のコミュニティバス、タクシーで代替輸送を行っていて、一日3往復の代替バスとワンタクと言うデマンド乗合タクシー。これがうまくいっている。特にワンタクは、全国の赤字ローカル線廃線後の代替交通のモデルとなりうる先進的な取り組みだ。傍目には廃止してもなんら問題ないように見えるが、今別町長が自治体の全額負担で復旧すべきと発現したことが、ローカル線問題に関心のある人たちの間で物議を醸している。

津軽線の利用状況はどんなものか?
青森~三厩間(55.8km)の津軽線のうち、現在運休中で、存廃議論が出ているのは、蟹田~三厩間(28.8km)である。
蟹田~三厩間は、災害前は1日5往復の列車が走っていた。輸送密度は、JR発足時の1987年度が415、最新データの2019年は107。沿線の外ヶ浜町、今別町は、人口が70%減ったと言うが、津軽線の利用者はそれ以上に減っている。
これは、沿線自治体が青森県内で最も高齢化が進み、50%以上が高齢者というのも大きい。全国の赤字ローカル線の利用者のほとんどを占める高校生が、両手で数えられるほどしかいない(代替バス運転手の話)ことから、今後も利用者が増えるとは思えない。列車や代行バスも、おそらく1便20人ほどしか乗らないだろう。60~80人乗れる路線バスすら、この地域には過剰と言える。

津軽線末端区間の中学高校事情
ローカル線の利用者、将来性を見る上で、私は沿線にある中学校の生徒数を見ている。観光統計などは自治体により算出方法がバラバラで、数値が正確とは言えない。中学校の生徒数は、どこの自治体でも出していて算出方法は同じで比較しやすい。中学校の生徒数は、3年後は高校の生徒数になるから、そのままローカル線の利用者になる。また、自治体に1つしか中学校がない場合、中学生もローカル線を利用して通学している可能性が高い。こちらは最寄り駅近くの小学校の生徒数から中学校まで鉄道で通う生徒数を推計できる。
津軽線末端区間の沿線には高校は無い。津軽線全然でも、油川駅の青森北高校が唯一の高校である。こちらは油川駅と新青森駅の中間辺りにあり、どちらの駅からも徒歩15分はかかるだろう。中学校は、今別町の今別中学校、外ヶ浜町の三厩中学校がある。蟹田中学校もあるが、こちらは蟹田以北の津軽線を使うとは考えられないので除外する。2023年4月10日時点で、今別中学校の生徒数は16人、三厩中学校の生徒数は17人である。2校合わせても33人、全校生徒をバス1台で運べる程度しかいない。
2校に生徒が全員青森北高校に通うとして、往復津軽線を使うと、輸送密度は66。実際には両手で数えるほどと言うから10人程度。輸送密度は20程度になる。残りは奥津軽いまべつまで家族の車で送ってもらい、新幹線で新青森経由で通学している度見られる。奥津軽いまべつ駅の乗車人員26人に高校生がかなり含まれるだろう。
津軽半島には高校がほとんど存在せず、青森市、弘前市などに通学しているので、高校入学と同時に高校の近くに下宿することも考えられる。津軽線で通うと、列車本数の少なさから部活に入れないので、部活をやるために寮や下宿で暮らす生徒もいるだろう。高校生の下宿は、地方では珍しいことではない。

津軽線末端区間の並行道路
津軽線は、ほぼ国道280号と並行している。青森市内から、蟹田までは、海沿いの旧道と山沿いのバイパスの2本が並行している。非常に走りやすく冬季除雪もされている。蟹田から国道280号は海沿いを走るのに対して、津軽線は山の中に入る。ここから青森県道12号が並行する。青森県道12号もよく整備された良い道路だ。大平駅付近で津軽線は大きく北に曲がるが、並行道路も青森県道14号になる。今別駅付近で国道280号と合流。青森県道12号は、山の中を走るため急勾配、急カーブが多い。冬のスリップ事故が頻発するが、青森方面から今別、竜飛岬へは、海沿いの国道280号を使うより、津軽線沿いの県道を使う方が距離も時間も短くなる。
今別駅付近から三厩駅までは国道280号が並行している。赤字ローカル線の並行道路としては、非常に走りやすい。赤字でも並行する道路が未整備だから残すとは言えない。

対抗交通機関
かつては青森駅と竜飛岬を結ぶ青森市営バスの路線バスが走っていたが、現在は廃止されている。廃止代替バスとして各自治体のコミュニティバスがある。しかし60人から80人が乗る一般的な路線バスが走る区間は、津軽半島全体でも青森市内、五所川原市周辺に限られる。今別町、外ヶ浜町など町村部はコミュニティバスしか走っていない。津軽半島には、路線バスを走らせるだけの移動需要がないので青森市営バスも撤退したと考えて良いだろう。

津軽線の今後についての私案
以上挙げた現状から、津軽線は大量輸送機関としての鉄道は必要ないと言える。第三セクター鉄道で残せるほど利用者がいないし、あ廃止するならバス転換と言ってもバス路線を維持できる需要もない。利用者の予約に応じて運行するデマンド交通、タクシーで十分である。実際存廃協議でもタクシー転換という言葉も出てくるのでJRや自治体も同じ考えだろう。
蟹田、奥津軽いまべつ、今別、三厩にタクシー乗り場を設けてお客さんが来たら運行で十分だ。これなら地元の商店主など出2種免許を持った個人事業者に運行委託すれば良い。地方ではタクシー専業では成り立たないので農家や商店主などが副業でタクシー運転手をすることは普通である。津軽線沿線でもタクシー専業の仕事は成り立たないだろう。普通のタクシーなら、地方では全くお客さんが乗らないので待機しても収入ゼロと言うのはざらにある。駅で代替交通として待機するなら自治体が拘束時間は時給を出すのも運転手確保に必要となる。それでも鉄道を残すために必要とされる、年間6億円とも言われる赤字負担額よりは大幅に安上がりだ。
津軽線の利用者数なら特定個人の移動需要によるところが大きい。例えば朝だけ10人くらいまとまった需要があるなら、バスと運転手を用意しなくても、その時間だけ地元の送迎バスに委託しても良い。自治体、教習所など送迎バスを持っている事業所はどこにでもある。

バスやタクシーになると、鉄道より時間がかかるようになるのが鉄道廃止が嫌がられる理由の一つである。鉄道廃止で維持に必要な年間6億円が浮くから、それを活用して道路整備をすれば良い。
具体的には、小国峠付近を時速80キロで走れるバイパストンネルでショートカット、蟹田付近の国道280号から青森県道12号への分岐をインターチェンジにして、一時停止しなくても全方向進行可能にする。同様に大平駅付近の県道12号、14号交点、今別駅付近の県道14号、国道280号交点も整備。より高速で走れるように、交差点のアンダーパス化、追い越しガ出来るように部分的な四車線化をすれば良い。
鉄道を毎年6億円かけて維持しても数少ない通学利用の高校生や、通院利用のお年寄りしか利益にならないが、同じ額で毎年道路整備をして、蟹田から三厩まで四車線化、立体化したら、地元住民、観光客、物流業者など津軽半島を通る全ての人に利益になる。
だからローカル線は廃止してその分道路整備に金を使うべきである。

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