今日も気づけば漁港釣り 7振り目
アジやイカ、キス、カサゴ、メバルー。魚種が豊富な丹後半島の日本海は、堤防からの釣りでもさまざまな獲物が狙えて面白い。一方、お目当ての魚が釣れず、やきもきすることも多々あります。2021年秋に宮津市へ赴任した直後に海釣りを始め、現在はルアーでアジを狙う「アジング」を極めるべく足しげく漁港に通う記者が、釣果や景色、釣った魚で作る料理を紹介します。さて、今日は何が釣れるのやら…。
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●どうやらアジが釣りたいらしい
アジングを初めて以来、いまだかつてないメバルの入れ食いに心が躍った3月下旬の夜。トマトやマッシュルーム、ブロッコリーを買い、洋食にも挑戦し「釣果が上がると、料理のバリエーションも増えて一挙両得だなぁ」と、意気揚々とした。
一方、アジを釣りまくり南蛮漬けにしようと、不退転の決意のつもりで先んじて購入していたニンジンやピーマンは冷蔵庫の中で刻一刻としなびつつある。
「アジングを始めた本懐を、忘れていないかい」
どこからだろう。釣りの神様にでも語りかけられている気がした。メバルに満足している場合ではない。かれこれ、アジングを始めて1年半が過ぎようとしているのに、アジ以外の魚の方が釣れてしまっているというのは、一体どうなのか。
メバル、カサゴ、キス、マゴチ。どんな魚だって、釣れたらうれしい。だが、このうれしさがアジの釣れぬ現状に目を背けさせ「アジングを入口にしたライトゲームですよ」「事実上の、五目釣りですよ」と、言い訳の口実をつくってきたのではないか。
本心は、アジ釣って、南蛮漬け食べて、アジフライ食べて、みそや薬味とあえる「なめろう」を食べたい。この気持ちに、うそは付けない。今度こそ、アジを釣り上げる。でなければ、使っているロッド「鯵道(あじどう)」の名に申し訳が立たない。
●いざ、なじみの漁港へ
日が落ちても気温が下がりすぎず、風も穏やかな夕まづめ。小学生くらいの子どもと父親が既に釣りをしていた。2人ともワームを使っているようで、アジングか。親子釣りだとオキアミをかごに詰めるサビキ釣りが多いが、本格派か。
ともあれ、今日の釣れ具合や海の状態など聞いて、自身の釣りに生かしていきたい。父親に、調子どうですかと尋ねたところ
「いや~、全然です」
と苦笑い。そそくさと車に戻っていった。小休止入れて、夕まづめに備える作戦だろうか。そう思いつつ、仕掛けを作っていた矢先にエンジン音が鳴り、この場を後にしてしまったようだ。からっきしだったのかな。転戦して再挑戦したのかな。もう少し、情報聞いておけば良かった。
今回は、養老漁港での成功体験を踏まえ、冒頭からかなり軽めのジグヘッドでいこうと決めていた。
●逆張りするから釣れないのでは…
ジグヘッドの重さの長所短所について簡単に触れておきたい。重いとワームを投げる飛距離が伸び、アジを探すエリアが広がる。また、底の深い場所のアジを狙いやすくなる。一方、沈下速度が速いため、アジが追いつけなかったり気づいてもらえなかったりする恐れがある。
軽いとゆっくり沈下するため、アジがルアーの動きに合わせやすく、引っかけさせる可能性が高まる。一方、飛距離は出ず、風の影響も受けやすい。
通常、1グラムからスタートして、反応の有無で重くしたり軽くしたりする。この調節を繰り返し、アジに最適な重さを見つけ出し、パターンを確立させるのがポイントだ。
反応がないと、軽くしていくのが手筋のようだ。だが、インターネットの情報や高名なアングラーの本を読むに「軽くすれば良いわけでもない」「むしろ重たくする」といった意見、助言に多く触れてきた。ゆえに、逆張りとも言える作戦を繰り返してきた。そして、成果を上げられずにいた。
原点回帰と言うべきか。軽く、ふわ~っと、表層に漂っているアジを狙うイメージで竿を振る。さすがに0.2グラムは相当軽く、風が吹かずともライン(糸)が張らずにたわむ。当たりを感知できるだろうか。
と、1投目からゴンッとヒット。リールを巻くと水面に光る銀色のボディーが横に流れる様が見て取れる。13センチほどだが、幸先良くアジをゲットした。
●小アジは外野フライ
以前からも触れているが、面白いもので釣り上げる魚で当たりに違いがある。小アジは、野球でいう外野フライを捕球した時のような感触だ。手前にキューッと引っ張られるような心地で、ただ、これもサイズによって変化していくのだろうか。
連発とはいかないが、5、6投に1度はヒットする頻度を保った。7匹を釣り終え、末広がりの8を目指したが、ここにきてメバル。小さいのでリリースしたが、十分に楽しめた。なにより、冷蔵庫の野菜をひからびさせるまでに使い切れそうでほっとした。
●ジャジャーン!待望の南蛮漬け!
お待たせしました。改めてアジの南蛮漬けでいかせていただきました。この南蛮漬け、お酢は芳醇な香りの「富士酢」(宮津市、飯尾醸造)と、同市にUターンして養蜂を営む今中美有さんがつくる濃厚な甘さのハチミツを使っている。ひと味違う仕上がりになっているのだ。
今中さんの蜂蜜づくりを紹介した記事はこちら
宮津の味覚の結晶で作った南蛮漬けを、与謝野町のクラフトビール「ASOBI」でいただいた。身の詰まったアジはかめばかむほど味わい深く、コクの強いビールと良くなじむ。
味をしめ、数日後にも釣行し、6匹を釣りあげ小麦粉で揚げて塩でいただいた。
「宮津のアジは、塩を振っただけで美味い」
地元ベテラン漁師の言葉だ。いつの日か、この方に釣りの弟子入りをしようと思っています。乞うご期待。
ただ、ここ最近、釣果を求めすぎてもっと大切なことを見落としているような気もする。
「この連載を始めた本懐を、忘れていないかい」
半年前の自分自身が問いかけてきた。そもそも、本来は釣りを通じて、魚の釣れ具合のほか、海やその周辺のまちの雰囲気を文章と写真で伝えて「ええとこやなぁ」「久々、家族で釣りにでも出かけようかな」と、丹後の魅力を発信したり、お出かけ気分をくすぐったりするのが目的だったはずだ。
しかしながら、最近は写真のバリエーションが乏しく、釣果にとらわれて内容の幅も狭まっていた。次回からは、初心に戻ってバラエティーに富んだ発信ができるよう努めます。
能美 孝啓