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スタイルのある男

眼鏡のCMでトータス松本を見ました。「ガッツだぜ!!」でブレイクした四半世紀前に比べれば全体にやや肉が厚くなったものの、声も顔もスマートな体格も(どこかの歌詞みたい)昔のまま。50歳を過ぎて、いえ四捨五入すれば60歳で、このカッコよさは尋常ではありません。

本業がミュージシャンということもあってかそれほど多くの広告には出ていませんが、最近ではエドウィンのジーンズのCMがありました。眼鏡もジーンズも「似合う」がキャスティングの第一条件でしょうが、それにプラスしてトータスが選ばれた理由は「スタイルがある」ではないかと思います。

失礼ながら「イケメン」と言われるルックスではないものの、トータスを「カッコイイ」という人は男女を問わず多くいます。何がカッコイイのかというと、生き様がカッコイイ。ブレがない。おそらく彼自身、好きなものは子供の頃からずっと好きだろうし、10年後も20年後も好きに違いない。自分を自分以上に見せようとしない、卑下することもない、いつもありのままの姿で生きている。だから、彼の歌声は最短距離で私たちの胸に届く。それが私の考える「スタイルがある」ということです。

2000年代はCMの中で「父親役」を演じることが多かったトータス。娘の写真を撮ろうとする浴衣姿の父(カルピス)とか、車に乗って普段見せないワイルドな一面を見せる父(VOXY)とか、北海道の農場で子供の成長に目を細める父(ハウスシチュー)とか。VOXY以外はもうYouTubeから消えてしまったので見られないのが残念ですが、自分が子供だったら「あんなオヤジがいたらサイコー」と思うような姿でした。プロの俳優ではない、演じている感が薄いのもCM制作者に好かれる理由かもしれません。

そういう目で見ると、3年ほど前にあった明治ヨーグルトのCMは「ちょっと違う」と思うわけです。このCM、スーツ姿のトータスがオフィスで宮崎あおいの上司を演じるもので、セリフを「森の熊さん」のメロディで歌うミュージカル仕立てになっています。もちろん「お茶目」もトータスの魅力ではあるのですが、別にこの役は彼でなくてもいいでしょう。

で、思ったのですが、もしかしたら最初の企画段階でこのCMは、トータスのキャラ前提のロックふうの演出だったんじゃないかと。けれどもスポンサーから「ファミリーにアピールするんだからもっと可愛く」と要望が入り、「森の熊さん」への路線転換を余儀なくされたのでは?その時すでにトータスのキャスティングは決まっていて、スケジュールも押さえているし、そのままCM撮影に入った、みたいな。

以上は、納得できないキャスティングを納得するための私の勝手な妄想ですが、もし本当に「スポンサーの意向」で演出が変わったとしても、トータスなら「いいすよ、面白そうだし」と笑って受けてくれそうな気がします。ロックシンガーといえば気難しくて気分を壊したら「やってらんねえよ」と帰ってしまいそうなイメージがありますが、トータスがそんなことをする姿は想像できません。ヨーグルトCMのメイキングを見ても腰は低いし敬語だし。それもまた、彼にスタイルがあるからだろうと思うわけです。これだけは譲れない、というソウルの部分は頑なに守るけれども、それ以外のことはまあまあどうでもいいという。違っていたらすみません。

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