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タレントブログ有料化のゆくえ

2008年から2009年にかけて、私は今と同じようなタレントのキャスティングに関するブログを書いていました。事情あって一旦閉鎖したのですが、原稿は残していて、今読んでみると、なかなかに味わい深いものがあります。「あの頃はこうだった」と、懐かしさとともに時代の流れを感じたり、あるいは当時想像した未来を今「答え合わせ」できる楽しさもある。そんなわけで当時のブログを再録し、あらためて考察してみようと思い付きました。
以下は、2009年に投稿した記事で、ガッキーこと新垣結衣さんのブログが有料化されたというニュースを取り上げたものです。

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新垣結衣のブログ有料化(2009年7月2日)

これはもしかしたら、今後大きな波になるかも知れない。新垣結衣の所属事務所レプロエンタテインメントが、新垣のブログ閲覧の有料化を発表した。料金は月額840円。これはなかなか強気な価格設定と言えるだろう。1万人集まれば1ヶ月で840万円、年間で1億80万円。なんとなく年1億を目標にして設定されたようなプライスではある。しかし払うほうは年間1万80円の出費、これは少々キツイかもしれない。

レプロのHPをのぞくと、ブログ有料化を前にして「新垣結衣と行くはとバスツアー」なる企画まで用意されている。参加者は抽選で、会員登録者のみ応募可能とあるから、有料会員を獲得するためのキャンペーンだろう。ということは、ブログ有料化は事務所としてもそれなりに腰を据えた本気の新規事業であることがうかがえる。

冒頭で「今後大きな波になるかも」と書いたのは、単純にブログ有料化が進むということだけではない。タレントによるネットの使い方が、これまではファンの間口を広げるための広告的なものであったのが、サービスそのものを提供する手段になっていくのではないか、と思ったのである。「他人の日記をカネ払って見る奴の気が知れない」などと言う人もいるが、もはや「ブログ=日記」と思っている人は少数派だろう。ネットを双方向性コミュニケーションツールと考えれば、新たなサービスを生み出す可能性は十分ある。それは「オープン」から「クローズ」へのシフトでもあるだろう。

さらに思うのだが、タレントがブログを「広告手段」から「サービス提供手段」に変えていくとしたら、アメブロなどポータルサイトが抱えるタレントブログは衰退するかも知れない。なぜなら、ブログを有料化してファンがついてくるならば、事務所がブログを作ってタレントはそちらで稼ぐと思うからだ。ブログをポータルに置いている限りタレントにも事務所にも自由はない。課金してポータルに「抜かれ」たり不自由なルールに縛られるならば、さっさと自前のブログを作るまでだ。

ブログ有料化に対して書かれた一般人の意見を読むと、「ガッキーは本当に料金分の価値があるブログを書けるのか?」「ゴーストライターが書くのでは?」「ガッキーがはとバスツアーなんか行く時間ある?」「有料化しても炎上するときはする」といった、コンテンツ面の心配が多いようだ。いずれももっともな意見である。

しかしとにかく、やってみなければ分からないことも多い。新垣がちゃんとブログを書けるのか、追随して有料化するブログが出てくるのか、そしてアメブロが何か対策を打ってくるのか、じっくり注目したいと思う。

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過去ブログはここまで。では答え合わせといきましょう。

まず、ガッキーの有料ブログは2011年11月で終了しています。開始から約2年。それほど長続きしなかったということは、課金ユーザーが思ったより増えなかったのか、あるいは更新が大変だったのか。…両方でしょうね。追随して有料化したタレントブログもとくにありませんでした。

一方で、有料の「サロン」が数々立ち上がります。タレントが「ネットをサービス提供手段とする」動きが出てきたわけで、この予想は当たり。しかもまさに「オープンからクローズ」でした。また、これは予想外ですが、noteの出現で一般人までも有料コンテンツ提供が簡単に行えるようになりました。こうした流れもあり、今は当時に比べて「コンテンツ有料」の心理的ハードルが相当に低くなっているので、ガッキーブログの有料化はちょっと早かったのかもしれません。

タレントの「ポータル(というかアメブロ)離れ」は、まだその段階には至っていません。ただ、これは近々起こるだろうと思っています。ただし私の予想は「ブログ有料化が引き金になる」だったので、その点はハズレ。そうではなく、タレントのアメブロ離れを促進しそうなのは他のSNSの登場です。2010年代以降、ブログはインスタやツイッターの登場で明らかに存在価値が薄くなりました。最近はタレントのブログ投稿もインスタみたく「写真にコメント2~3行」が多く、ブログである意味がなくなっています。このままではファンに飽きられるか、あるいはタレントがインスタ、ツイッターを優先してブログから離脱するのではないかと。また、ブログの運営保守には結構なコストがかかるので、ポータル側が「維持がしんどくなる」可能性もあります。W杯で大赤字のCAさん、一気にアメブロを切ったりして(ありえないことでもないと思います)。

さて、本題ではありませんが、気が付かれたでしょうか?上のブログでは「SNS」という言葉が出てきません。2000年代後半、mixiやGREEはすでに「SNS」と呼ばれていたと記憶していますが、まだ一般的に通じるレベルではなかったと思います。また、「ツイッター」も出てきません。こちらも当時存在はしていましたが、まだ日本では「前夜」であったイメージです。

追記(2023年2月1日)
1月30日にLINEブログのサービス終了のニュースがありました。ヤフーブログに続きまた一つ無料ブログが消えるわけですが、ユーザーに「引越し先」としてアメブロが推薦されており、ということは、アメブロはまだ当面続きそう。それでも、無料ブログ終了の流れははっきりしてきたと思います。


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