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折々の絵はがき(59)
◆絵はがき〈東海道五十三次・庄野〉歌川広重◆
江戸時代 東京国立博物館蔵
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急な坂道。突如降り出した雨はぐんぐん激しさを増し、風も強く吹いています。青い脚絆をつけた旅人と思しき人は向かい風にあおられ、番傘を半開きにしかさせません。鍬を担いだところを見ると、となりを走るのは農夫でしょうか。彼は飛ばされそうな頭の笠をぐっと押さえて前傾姿勢。「まいったなあ」とばかり、夕立から逃げるように駆けています。お客さんを乗せた駕籠には準備万端、合羽がかけられ、二人のかけ合う「急げ急げ」の心の声が漏れ聞こえてくるよう。激しい揺れに驚いたのか、ちらりと見えるお客さんの手にもぐっと力が入っています。
絵はがきの画面いっぱいに斜線で描かれた雨。強い直線には、地面を叩きつけるように降る夕立の激しさが表現されています。大慌ての人々とは対照的に、眼下に広がる茅葺の家々は静まり返り、一方で辺りに植えられた木々は大きく風に揺れています。空は真っ黒な雲に覆われ、雨はまだまだやみそうにありません。こんな一見なんでもないような場所さえも、広重の眼を通すとたちまち映画の一場面のように見えてくるから不思議です。
歌川広重の『東海道五十三次之内』シリーズは発売とともに爆発的な人気を博しました。本作には「白雨」という副題がついています。白雨とは昼間の激しい夕立のこと。広重の手にかかると夕立はこんなにも美しく描かれました。こんな雨になら降られてもいいな。つい、そんなことを思いました。
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