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Spotify交換日記 その6

アンテナ編集部の中でも典型的洋楽リスナーの阿部とJ-POPをよく聴く丹。一見すると全く趣味が合わないようにも見えるが、そこにはタッチポイントがあるはず。かつて相手の趣味を探りながら「これめっちゃいいよ!」「おお、いいじゃんこれ!」なんてCDの貸し借りをしたようなあれをやりたい。興味さえあればクラスタの枠なんて関係ないはず、そんな気持ちで自分にとって新しい音楽にワクワクしていきたいじゃないですか。段々とプレイリストも溜まってきた6月編、洋楽邦楽POPにROCKが入り混じって混沌の様相を呈してきましたね。とても良い感じです。これまで知らなかった音楽こそ、この日記を機に触れてみてはいかがでしょうか。

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阿部 仁知(あべ ひとし)
アンテナの他にfujirockers.orgでも活動中。フェスとクラブカルチャーとウイスキーで日々をやり過ごしてます。興味本位でふらふらしてるんでどっかで乾杯しましょ。
好きなアーティスト:Elliott Smith、Radiohead、My Bloody Valentine、中村一義、The 1975、Cornelius、Four Tet、曽我部恵一、Big Thief、ROTH BART BARON、etc...
Twitter:https://twitter.com/Nature42
丹 七海(たん ななみ)
97年生、大阪の田舎ですくすく育った行動力の化身。座右の銘は思い立ったが吉日。愛猫を愛でながら、文字と音楽に生かされる人生です。着物にハマりました。
好きなアーティスト:サカナクション、King Gnu、back number、椎名林檎、ポルノグラフィティ、[Alexandros]、Creepy Nuts、エレファントカシマシ、etc…
Twitter:https://twitter.com/antenna_nanami

こんにちは、雨降りの音が作業BGMになりつつあるライターの丹です。蒸し暑くなってきましたね。去年までは鬱陶しかっただけの梅雨も、胸に渦巻く陰鬱とした感情を流し落としてくれる気がして、天気を気にする自分がいます。雨の音も良いですよね、音楽と交じり合うと自分だけの世界に篭れる気がして、とても落ち着く気分になります。さて、今月のテーマは「私が考えた最強のフェスセトリ」です。あくまでも妄想ですからね、絶対にありえないアーティストがいたっていいんです。妄想なので。候補が多すぎてこれまでで一番悩みましたが、だからこそとっておきのセトリが完成しました。それでは張り切っていきましょう!

去な 宇宙 / ENDRECHERI

ついにサブスクが解禁されましたね!! やった!! ということでKinKi Kidsの堂本剛ソロプロジェクト、シンガー・ソングライターENDRECHERIの登場です。いや、ジャニーズをサブスクで聴ける日がやって来ようとは……。代名詞とも言えるファンクミュージックを紹介しようか迷ったのですが、ライブで聴いた時に感じた美しさが忘れられないのでこちらをセレクト。彼が作る音楽には、出身地・奈良で育まれた神様への畏敬の念を端々に感じていまして、心の底からの祈りを込めて歌うから、平安神宮や東大寺でのライブがあれほど美しく見えるんだろうな。良くも悪くも特殊な環境で磨かれてきた感性然り、J-POPが大半を占めるジャニーズの中で生み出したファンク然り、それらを積み重ねてきた彼にしか表現できない世界をこれからも見させていただきたいものです。体調に気をつけて、これからも健やかに音楽を作り続けて欲しい。それがファンからの祈りです。(丹)

ENDRECHERIじゃないですか!海外の音楽好き界隈の中でも「これはとんでもないぞ…」と話題になり、去年のSUMMER SONICでやっと観られたんですよ。文字通り「プロフェッショナル」とでもいうべき圧巻のバンドの中心でコンダクターのように場を支配する姿に圧倒されたことを覚えています。そしてそれはKinKi Kidsでも培われた「個の厚み」から来るもので、全ては繋がってるんだなと思いますね。この曲には「静のファンクネス」みたいなものをすごく感じて、身体の中からふつふつとビートが浮かび上がるような感覚に陥ります。それが丹さんの言うような奈良の神様への畏敬からくるものならとても納得。三浦大知や星野源もそうなんですが、チャートのトップを賑わすポップスターの表現が世界と繋がっている感じがして、この国の音楽シーンも捨てたもんじゃないなって思えてくるんですよ。彼に関しては語り足りないのでまた奈良のライブ連れてってください!(阿部仁)

生業 / Creepy Nuts

アンテナ加入当初は公募のレビューを読んでもそれほどピンとこなかったCreepy Nuts、とある出来事がきっかけでファンになりました。その中から、R-指定さんの本領が120%発揮された“生業"をご紹介。飾り気もなく淡々と流れるビートに乗せられる圧倒的な歌唱力に、初めて聴いた時呆然としたのを覚えています。人間が歌うものじゃない、だけど音源は勿論ライブでも歌ってるんですよね……。とんでもない人だ。最後の畳み掛けに至っては、どこで息吸ってんの? でもブレスの音聴こえへんで? と突っ込みたくなるぐらいの勢い。Rさんの歌声に一切水を差さず、しかしとんでもなく存在感を主張してくるメロディもすごい。彼らほど作詞・作曲のバランスが取れたユニットは他にはいないのでは、と思えるぐらいのニコイチ感。あとオールナイトニッポンもめっちゃ面白いのでぜひ。(丹)

Creepy Nutsすごいですよね。僕としてはやたらスクラッチやらのスキルばかり推されているのは気になるんですけど、DJ松永の堅実なビートメイクをドライヴさせるR-指定のリリック、「さいきょうのふたり」みたいな表現が似合います。R-指定のラップも海外のHIP-HOPというよりむしろMOROHAみたいな情感や焦燥感の豊かさが特徴的で、両者とも見た目に派手なトリックだけではなく、確かな地力がうかがえますよね。そして丹さんのレコメンドに一貫している「わび・さび」の情緒もどことなく感じられる。潮流を紐解きオリジナルに昇華する姿勢は僕らも見習うべきで、哲学みたいな部分も知りたくなってきました。オールナイトニッポン聴いてみます。(阿部仁)

I beg you / Aimer

丹の毎ターンお馴染みアニソンのお時間がやってきました。今回は『劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」Ⅱ.lost butterfly』の主題歌をお送りします。唯一無二と表現して遜色無いであろう歌声で彩るは、陰鬱と退廃に包まれたFate世界。一見荘厳そうに見えて、なぜか胸をかきむしられるような不気味さを醸し出し、ただでさえしんどい映画をさらにしんどくしてくれます。劇場で見たときは非常に胸が苦しい思いをしました。プロデュースは交換日記その2でもご紹介した梶浦由記さん、楽曲ごとの世界観の構築がすごく上手な方です。イチオシポイントは女優の浜辺美波さんが主演を務めるMVと映画本編、楽曲との結びつきの強さになります。ぜひMVをご覧になって、言いようのない不安に駆られてください。(丹)

タイトルに目が滑っちゃうくらいアニソンには馴染みがないので、毎度おもしろいです。そしてエメさんって読むんですね。ちょっと気になってたのですがここで覚えました。しっかし歌詞も含めて妖艶で毒々しいサウンドだ。やっぱタイアップ曲ってどれほどマッチしているかが肝要だと思うんですが、「ただでさえしんどい映画をさらにしんどくしてくれます」ってめっちゃいいですね。MVの中盤あたりの浜辺美波さんの笑顔にゾクっとしてしまって、名前だけ知ってる程度だった彼女のことも気になりました。映像にせよ音楽にせよこういった狂気をはらんだ表現ってウソっぽくなることも多いと思うんですが、しっかり真に迫るAimerの表現に飲み込まれてしまいました。これカラオケで歌ったらあぶなそうですね……。(阿部仁)

Zombies out standing out / ポルノグラフィティ

カラオケで本人歌唱映像を見るたび、岡野さんの肺活量にびっくりしてます。あの人の人体構造は一体どうなってるんだ。“Zombies out standing out"はひたすらかっこいいゴリゴリのJ-ROCK、ライブでもイントロが流れてきた瞬間拍手喝采阿鼻叫喚の嵐でした。作詞:新藤晴一 作曲:岡野昭仁の字面は強すぎますね。“ミュージック・アワー”や“メリッサ”といったJ-POP寄りの音楽から、“Mugen”に始まりこの曲まで、POPからROCKまでの振り幅がえぐすぎて毎回どんな曲になるのか楽しみにしているところです。Spotifyに昨年行われた20周年ライブのセトリプレイリストもあるので、そちらもよろしければ。“愛が呼ぶ方へ”からの“ラック”へのシフトチェンジがすごすぎて、落差に風邪引きそうになります。(丹)

ポルノグラフィティって僕にとっては結構不思議な存在で、もっと売れてる人はいくらでもいるのに、特にカラオケでのポピュラリティはなんなんだろうなとずっと気になっていました。岡野さんの純粋な歌のうまさ、とりわけ声色なんでしょうか。ややもすれば「イタい」とスレスレな部分もある晴一さんの歌詞と、この上なくマッチしてるんですよね。ハードロック寄りのこの曲もいい意味で重苦しくなくて、ポップソングの感触をしっかりと残している。これは簡単なようですごく難しいことで、ここら辺がリアルタイムの僕世代から丹さんの世代まで「みんなのうた」として共有される所以なのかなーって思ったりしました。(阿部仁)

Forevermore / 宇多田ヒカル

生の躍動感と愛の生々しさが凝縮された“Forevermore”。この楽曲が収録されているアルバム『初恋』を、私は勝手に『宇多田ヒカル恋愛アンソロジー』と命名しております。“誓い”や“Play A Love Song”など愛らしく一途な愛情を綴った楽曲が続く中、4曲目に位置するこの曲。これまでの甘く清らかだった空間から一転、この曲を境に触れ合う肌の質感とか異性間だけではない愛にまで展開していく感じがたまらなく良い。いつもSpotifyシャッフル再生してしまう自分が、初めてアルバムの並び順を意識したアルバムです。恥ずかしながら、宇多田さんを聴き始めたのは『Fantôme』が発売されてから。名曲と名高い"traveling"や"COLORS"も聞いていませんでした。私がここ最近の短いスパンで過去作から一気に聴いているから感じるものかもしれませんが。形を変えて流動的に描かれ続ける「愛の形」は、宇多田ヒカルという一人の女性の半生を覗き見ているような気分になって、なんとも不思議な気持ちになるのです。(丹)

ついにきたか宇多田ヒカル!僕も当時は「流行ってんだなあ」くらいの感じでしたが、『Fantôme』以降の彼女はさらに突き抜けてきた感じがありますよね。僕は世代的にも元からかなりアルバムリスナーなので曲順の話はわりと当たり前なんですが、プレイリストがスタンダードになった丹さんの世代までそれを意識させられるのはすごいことだなと。この曲はストリングスだけ聴いてたら「ザ・荘厳」って感じがするんですが、思いの外大粒で跳ねるドラムやローズっぽい音色の小気味のいいエレピのフレーズが全体を軽やかに流れてていい感じ。しっかしこうも臆面なくサビのド頭から「愛してる」を連呼して、こうも説得力を持つ人ってそういないと思うんですよ。このフレーズにつきまとう悪い意味での凡庸さがいい意味に反転しているようでハッとさせられます。去年のSUMMER SONICで日本人ヘッドライナーがアナウンスされた時は彼女だったらいいのにと密かに願ったことを思い出しました(結果的にB'zめっちゃ良かったですが!)。ライブもどっかで観てみたいです。(阿部仁)

あとがき

今回は今までにも増して丹さんの筆がノってんなあと(笑)。やっぱ好きなことを語るのって楽しいですよね。「90年代から続いてきた今」みたいな感じもとっても伝わってきました。ENDRECHERIを筆頭に丹さんと共有するところもわかってきた感じがあるので、次のセレクトも気合が入ります。ではまた!まだまだ気は抜けないし、マスクもジメジメして気が滅入る夏ですが、音楽とともに乗り切っていきましょう!

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