見出し画像

ロシア語版「オズの魔法使い」シリーズは、本家と全然違う話に?!

Oz behind the Iron Curtain:
Aleksandr Volkov and His Magic Land Series

「鉄のカーテンの向こうのオズ:アレクサンドル・ヴォルコフとマジックランドシリーズ」
by Erika Haber
November 2017 (University Press of Mississippi)

「オズの魔法使い」といえば、ライマン・フランク・ボームが1900年に出版して一躍ベストセラーになり、その後、映画やお芝居にもなったアメリカを代表する児童文学である。

ところが、そのロシア語版は、翻訳というより翻案で、タイトルや登場人物の名前が変わっていたり、ストーリーにも手が加えられているそうなのだ。

ロシア語版は「エメラルドシティの魔法使い」というタイトル。エメラルドシティは、「オズの魔法使い」に出てくる都市で、主人公はカンザスに住む少女だが、名前はドロシーではなく、エリーになっている。だいたいの話はいっしょなのだが、ところどころ勝手に書き加えたり、けずったりしたところがあって、忠実な翻訳とはいえない。

なにしろ、本の表紙でもはっきりと翻訳とはいっていないのだ。初版本こそ「フランク・ボームの童話に基づく」とかなんとか書いてあったらしいが、その後はなんのことわりもなし。

それでも、こちらのロシア語版も旧ソ連でベストセラーになるのだが、それに気をよくした翻訳家のアレクサンドル・ヴォルコフは、本家の続編を翻訳するのではなく、あろうことか独自の続編を執筆して出版してしまう。都合5作、本家「オズの魔法使い」シリーズとはまったく別のお話が、ソ連の子どもたちの間では広く読まれ、多くの子どもはアメリカ版を知らずにヴォルコフのシリーズが本家だと思って育ったということだ。

ボームの「オズ・シリーズ」が全14作というのも知らなかったが、ヴォルコフが勝手に「エメラルドシティ・シリーズ」として5作も書いていた、というのにはおどろいた。そしてこの「エメラルドシティ・シリーズ」は、東欧圏で各国語に翻訳され、かなり人気を博したそうだ。

両方読んだ人の中には、「エメラルドシティ」のほうがおもしろい、という意見もあるそうで、そんなことを言われたら、がぜんそっちを読んでみたくなってしまう。でも残念ながら、その日本語版はないらしい。

ちなみに英語版はある。こちらは、「原作に忠実に英訳」したらしい(笑)
Tales of Magic Land 1: The Wizard of the Emerald City and Urfin Jus and his Wooden Soldiers

本書では、ボームとヴォルコフの両作品が、アメリカと旧ソ連のそれぞれの国で、いかにして優れた児童文学から、文化的なアイコンにまで成長していったかを詳細に考察している。

こういうの、時代がおおらかだったからできたんだろうなぁ。今だったら著作権とかでぜったいひっかかりそう。
というか、昔はひょっとしてこういうの、多かったんじゃ?!
今ほど情報伝達手段が発達してないわけだから、ほかの国のベストセラーとかをしれっとパクってもバレなかったんじゃ。。。?
そういうの、調べてみたらおもしろそう。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?